ログイン10日目
ログインしてみると、こっちのバーチャル世界も雨だった。リンクしている訳では無いだろうが、ちょっと面白い現象だと思う。
それよりこんな寂しい場所でのログインは、少し落ち着かない。つまりは薄暗い洞窟内で、いつもの安全地帯や師匠の家とは大違いな雰囲気。
昨日ログアウトした場所がここなので、まぁ当然ではあるのだけれど。一応洞窟内なので、いきなり雨に濡れる事態は避けれてるって感じ。
そして恒例のファーとネムの熱烈歓迎、それには別の理由があるっポイ。まぁ、今日が特別と記すのは違和感がある、いつもの相棒達の愛情表現ではある。
それでもいつもと違うのは、魔除けの香炉の範囲外に居据わる超強力モンスターの気配だろうか。やっぱりまだいたのね、昨日のログアウトはとにかく大変だったのだ。
その正体だが、実は最後に絡んで来たあのボーンキメラの所有者である。どうやらそれが、精霊ラマウカーンの言っていた澱みの正体だったらしい。
顛末を話すと、俺たちは昨日のログアウト寸前に、その澱みに捕まってしまったのだ。そしてソイツが、俺に骨キメラの賠償責任を突き付けて来た次第。
果たしてその正体は、どうやら人間の女性型の妖魔の類いらしかった。しかもラマウカーンとは正反対の、魔族側の高位的な存在っぽい。
それは彼女の名前の色を見てもわかる、何とネーム表示が真っ赤である。つまりはユニオンボス、恐らく今の俺が10人いても倒せない相手だ。
容姿だけ見れば、割と幼い感じの女の子なんだけどね。
衣装が派手なゴスロリ魔女風なのと、醸し出す闇色の圧との落差がとにかく凄い。こんなのに側をうろつかれていたら、さすがに香炉の安全圏内にいても、相棒たちも落ち着いてなどいられないだろう。
いやまぁ、ワンチャンこっちのログアウトと共に消えてくれないかと期待してたんだけど。望みは儚く消え去って、こうして現実を突きつけられた訳だ。
ファーとネムには悪い事をしたな、とにかく昨日はこっちも焦っていたので。バイショーだ何だと喚く相手に、分かったからインし直すまで待ってくれとダメ元で懇願したのだ。
その提案に、相手は案外と素直に応じてくれて今のこの状況に至る。
「待ちクタビレたぞっ、私のキメラを壊した冒険者……さあっ、悪いコトしたんだから、さっさとアイテム差し出してベンショーしろっ!」
「えっと、ちょっと待ってくれ……こっちはインしたばかりなんだ。状況と荷物の整理、それから色々とチェックの時間をくれないかな?」
「はやクしろ、こっちはズっと待ってるってのにっ……荷物にロクなモノが無かったら、代わりにそこの仔ドラゴンを貰うかラなっ!?」
それはこちらも嫌なので、相手の機嫌を損ねないようにしないとね。取り敢えず魔法の香炉の結界を解き、荷物からお煎餅を取り出して相手に振る舞う。
ものすごく警戒していたファーと仔竜も、自分たちにも何かくれアピールを始めた。同じくお煎餅を手渡して、同時にこちらは荷物のチェックなど。
何しろ昨日は、慌てていたのでレア種2連戦のドロップも曖昧だったのだ。確認すると、昨日のボーンキメラのドロップ報酬に、『魔力の大骨』とか『魔力の核』とか確かに聞き慣れない素材が並んでいた。
これらは確か、飛竜レア種じゃなくてボーンキメラのドロップだった筈。これを彼女に返せば、ひょっとして納得してくれるかも知れない。
その恐らくは“澱み”の大元であるユニオンボスの少女、名前を“ミフェル”と言うらしい。子供っぽい容姿なのは話したけど、しかしどんだけ強力なレア種の湧くエリアなんだ、この西の断崖って!?
運営側は、よっぽどこの西ルートでのクリアはさせたくないらしい。
それでもこうして話の通じる相手だし、断固とした意地悪さは感じない。ファーよりよほど行儀良く、お菓子を食べている妖魔に俺はそれとなく話を向けてみる。
するとやはり闇キメラの創造主らしく、この辺境には骨系の材料を求めてやって来たらしい。種族は妖魔でもかなり上級らしいが、詳しくは話してくれなかった。
だけど、強力な召喚系のスキルを持っている事だけは判明した。ふむふむ、その媒体に骨だとか魔物の血だとかのアイテムが必要らしい。
それなら鞄の中に豊富に入っているし、取り引きには何ら問題は無い筈だ。あるとすれば、向こうがちゃんとその商談に応じてくれるかどうかだけ。
話す限りは素直な性格だし、その強大な力がこちらに向く可能性は少ないかも。ラマウカーンのクエ依頼は、この娘をこの森から遠ざけるって内容だったっけ?
何とかなるのかな、とにかく丸め込むしかないかな……戦うのは論外だ、相手が後衛仕様とは言え勝てるイメージがまるで湧かない。
恐らくこの娘も、後衛仕様とは言え戦闘中に配下を増やす術を持ってる筈だ。そもそもユニオン種だし、つまりどうやっても勝つのは無理!
昨日のボーンキメラ級を、再召喚されるだけでもかなり辛い。見た目は割と可愛いのだが、恐らく想像もつかない凶悪なスキルを幾つも持っている筈。
とにかく、ログイン恒例のチェックを続けよう……今日もボーナス系のアイテム配布は無し、メールは京悟と美樹也と誠也から1通ずつ来ていた。
他愛のない内容なので、返信は後回しでいいや。それより俺って、いつの間にやらレベルが20に達していたみたいでビックリ。
強くなったのかなぁ、実感は湧かないけど。
名前:ヤスケ 初心者Lv20 種族:ミックスB
筋力 47(+9) 体力 48 HP 230(+23)
器用 43(+4) 敏捷 49(+4) MP 173
知力 32 精神 30(+2) SP 140
幸運 21(+10) 魅力 7 スタミナ**
職業(2):『新米冒険者』Lv20
武器(6):《乱撃》《撃ち上げ花火》《四段突き》《Pハンマー》《貫き矢》
《白垂飛泉槍》
補正(5):《投擲威力20%up》《防御力10%up》《集中》《》《》
冒険(5):『野生』『水中適正』『』『』『』
武器:弓矢4P《貫き矢》
:短槍20P《落とし突き》《捻り突き》《二段突き》《四段突き》
《白垂飛泉槍》
:両手棍16P《ブン回し》《撃ち上げ花火》《Pハンマー》《乱撃》
:盾5P《防御力10%up》
:投擲6P《投擲威力20%up》
魔法:『闇』17P《Dタッチ》《バグB》《Bタッチ》《影纏い》
:『風』17P《風の茨》《風属性付与》《風疾り》《双翼撃》
:『光』12P《フラッシュ》《ライト》《ライトアロー》
:『水』21P《清き水》《水中呼吸》《Pヒール》《マナプール》
《ヒール》
:『炎』4P《キャノンB》
:『雷』4P《スパーク》
:『土』5P《ストーンウォール》
:『氷』4P《魔女の略奪》
合成:『木工』3、1P
種族:『ミックスB+』(職業+1、幸運+4、器用+2、魅力-2、全耐性+20%up)
称号:『蝶舞』『猪突』『竜宮の遣い』
モネー:309、500
スキルP:19
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :竜宮の短槍(12) 攻+15、精神+3
武器2:野蛮な大鎚(7) 攻+17、筋力+3
予備 :狩人の弓(10) 攻+12、命中率+35%up
盾 :野蛮な手甲(7) 防+8、筋力+3
頭 :竜宮の兜(10) 防+10、精神+3
上着 :飛竜のベスト(15) 防+15、耐風+25%up
鎧 :護衛の胸当て(6) 防+6、器用+2
下着 :クールな下着(5) 防+1、耐寒+20%up
アクセ:野生の御守り(4) 防+2、筋力+6、敏捷+2
指輪1:清水の指輪(4) 耐毒30%up、ヒール効果20%up
指輪2:契約の指輪(-) 従者+3
腕 :霊亀の腕輪《硬化》(10) 防+10、時々攻撃反射
ベルト:狩人のベルト(8) 防+6、ポーチ×5
下肢 :疾風のズボン(8) 防+7、敏捷+2
靴 :蛙のブーツ(8) 防+6、水耐性+30%up
背中 :海賊のマント(8) 防+7、敵対+2、魅力-2
従者:妖精Lv1 幸運+6、魅力+4、精神-4
:仔竜Lv13《飛行》《尻尾撃》《ブレス》
鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄
アイテム:ポーション(大)×5、ポーション(中)×5、ポーション(小)×14
:マナポ(中)×8、マナポ×14、毒消し×9、マナP×7、Sポ×7
:ポーションP×11、ハイポP×5、万能薬×4、炎の神酒×2
:闇の秘酒×4、聖水×5、目薬×3、鯨の骨、玉手箱《天翔雷鳴》
:虹色の果実×7、魔石(小)×9、魔石(中)×4、経験の飴玉
:料理キット、冒険者セット『遠見透声』投擲セット、豹柄のマスク
:闇の眼帯、魔除けの香炉、憩いの香木×2、時の狭間の香木×4
:金のメダル×11、大猪の毛皮、還元の札×2、逆巻きの風呂敷(10)
:幽霊の呼び水、水妖の呼び水、南瓜の呼び鈴、骨工ギルドの推薦状
:闇の契約書、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜、探索のコンパス
:旅人のマント《秋波斬り》魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木、白い甲羅
:『隠密』『交友』『地図形成』霧の呼び笛、硬質な木板、頑丈な木の蔦
:壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、野蛮な大腿骨、調味料
:森狼の毛皮、風の牙、奇妙な頭蓋骨、転換の札×2、鯨の髭×2
:『妖精使い』月の滴×2、闇の羽根飾り、木工ギルドの推薦状
:海豹の呼び水、水と氷の香木、水中珊瑚、三色珊瑚『野外活動』
:ヒドラの鱗、ヒドラの牙、宝飾の片手剣、戦闘メイド服×2、竜玉石
:死肉喰らいの生肉、ヒドラの生肉、冒険者の心得:初級×3
:木人形の呼び鈴、丈夫なベスト、飛竜の骨、飛竜の頭蓋骨
:飛竜の財宝『初級八属性魔術師』『竜宮の遣い』『竜使い』
:魔力の大骨、魔力の核、理力の杖、暗塊の杖
スタミナは隠されているから数値は不明だが、体力や魔力は順調に増えている。スロットに関しては、補正系は全部埋まっていないのに、武器スロットは相変わらず不足気味。
もっとも琴音の話では、今のレベルで6つも枠があるのは多い方だと言われた。普通は地道に、クエやミッション報酬なんかで少しずつ増やして行くらしい。
俺のは所有武器が多過ぎるからであって、自業自得との事。その辺は心得ているので、反論はせずに大人しく聞き流した次第である。
それよりボーンキメラとの戦闘で、新しい両手棍を使用してみたけど使い心地に不自由は無かった。このままでも良かったのだが、短槍とのスキル差が酷いので増えたスキルPを割り振ってみた。
そしたら『星の涙』と言うアイテムが発動して、どうやらさっきの戦闘で受けた《乱撃》を覚えられるらしい。なるほど、こういう効果のアイテムだったのかと1人納得する俺である。
使ってみたら、スキルを覚えられた代わりにアイテムは消滅してしまった。
惜しかったな、強敵の使うスキルには欲しいと思わせる奴が多いのに。とにかく有効な範囲攻撃がまた1つ増えた、これは早速スキルスロットにセットしておこう。
それでもまだスキルPが余り気味だ、魔法でも覚えるかなぁ。あまり一気に増やしてしまうと、存在をうっかり忘れそうなので自重しているのだが。
また今度、ポイント振りの少ない雷か氷でも伸ばしてみようかな。どっちの属性も、強い攻撃魔法が出る確率が高いそうで魅力的ではある。
それから師匠に貰った弓矢の性能も申し分なし、命中率アップが良い感じに効いている。ただし矢の消耗は割ときつい、昨日は大物相手に奮発したから尚更だ。
結果、風の水晶の欠片から作った矢束は、ボーンキメラ戦で綺麗に無くなってしまった。こんな戦い方をしていたら、破産まっしぐらである。
自作したり買い足したりしてしても、簡単に矢弾が尽きてしまうのは考え物。その辺は少し考えないと、まぁ安全には代えられないんだけど。
最後に着ぐるみNPCから分捕った手甲は、まだ良く使えてないので使い心地は保留で。手甲と言うか盾系は、合成でも作りやすそうではある。
その内に自作したいとは考えているけど、自分の木工スキルはようやく3である。木工スキルも伸ばさないとだし、取り敢えずまだ先の話だな。
しかも良い素材に巡り会えなければ、夢と潰えてしまう訳で色々と考える事は多い。良い素材に出逢う為には、様々な場所で色んな敵を倒す必要がある。
その点では、俺の幸運値は良い働きをしてるなって理屈は果たして合ってる?
そのせいで、昨日のログアウト間近のレア種2連戦を引き当てたのなら自業自得かもな。しかも現在は、厄介なユニオンボスにすぐ傍に居座られている状態。
その妖魔のミフェルは、1枚では足りなかったのかお煎餅のお替わりを所望している。それに釣られて食いしん坊のネムも、追加頂戴のアピールを始める始末。
仕方ないので、俺は鞄から調理コンロを取り出してお肉を焼き始める。それから師匠に貰った野菜類で、簡易なバーベキューを作る事に。
それに興味津々な食いしん坊たち、一見すればほのぼのとした風景である。
――ただし目の前の少女は、真っ赤なネームのユニオン種と言うね。




