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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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学校での一コマ



 ゲーム的にはこの『始まりの森』は、ソロでのお試し期間と言うか振るい落としエリアだったのだろう。確かにきつい仕掛けも多かったが、クリアすれば報酬は美味しかった。

 他の冒険者と較べるのは無意味だが、このエリアでたんまり儲けた実感はある。この1週間ちょっとで確実に強くなったし、スキル技や魔法も充実して来た。


 まぁ、琴音に言わせれば、俺は何でも見境なく取り過ぎなのだろう。その辺は勘弁して欲しい、こちらは何事も“触って”みないと実感出来ない性分なのだ。

 そんな俺の成功体験で、同級生にレア種ドロップ装備を狙えば良いのではと提案してみた所。そんなの4時間フルにうろついても、滅多に遭遇するモノでは無いと却下された。


 そうだったのか、始まりの森では毎日平均して2~3匹出遭うので、そんなモノかと思っていた。皆が集う街のフィールドでは、そんな遭遇率は不可能らしい。

 それは残念だな、今後も奴らには期待していたのに。


 そろそろ街へと到着してからの行動も、考えておいた方が良いのかな? でも特に必要ない気もするな、情報は大事だけどベテラン冒険者の琴音もいるし。

 更に進めば、恐らくは京悟(きょうご)美樹也(みきや)たちとも合流出来る予定だ。向こうは凄く楽しみにしているっぽいが、俺はそうでも無かったりする。


 昔からのイメージだけど、あいつら基本的に戦闘ジャンキーだからなぁ。合流しても、こちらが振り回される未来しか見えないのが何とも。

 2人とも深く考えずに行動する事も多いし、何だか余計な苦労を背負い込む気がしてならない。琴音に言わせると、2人は信頼のおける前衛陣との評価らしい。


 何とバーチャル世界内では、妹たちの面倒をよく見る優秀な前衛戦士ズらしい。とは言え、人間の中身なんてそうそう変わらないってのが俺の持論である。

 小学校からの付き合いのこの2人の狂戦士が、立派な騎士道に目覚めるなんて眉唾(まゆつば)モノだ。まぁ確かに、2人とも妹想いな面も確かにあるけど。



 などと脱線した思考を持て余していたら、授業がもうすぐ始まるらしい。俺に話し掛けていた学生冒険者たちも、それじゃあと言って隣の教室へと去って行く。

 彼らも移動教室だったらしい、思うに半分は愚痴を聞かされただけだった気も。まぁ、向こうも楽しんでいるのは確かっぽい、こちらも毎日楽しませて貰ってる。


 うん、ゲームを始めてから毎日にメリハリが出て来たような気がする。バーチャル世界って、本当にもう1つの人生が詰まっているんだよね。

 確かに悪い事では無いよな、趣味を同じくする友達も出来てるし。始まりの街に出れば、バーチャル世界の中でも友達かそれに類する同志が作れる可能性も大いにある訳だ。


 そう考えれば、そろそろ孤独な森での単独行動も飽きて来た。琴音の言う所の、喧騒にまみれた街中へと飛び込むのも良い頃合いだろう。

 聞く所によると、街の中には美味しい屋台やお店も多いらしい。ファーやネムも、きっと美味しい食べ物には喜んでくれるに違いない。


 幸い軍資金は、何故かたんまりあるからなぁ……琴音が『始まりの森』をクリアした際は、クリア報酬で3万モネーが貰えたそうなんだけど。

 たったそれっぽっちと言う感覚らしく、冒険者の荒い金使いでは軍資金として心許(こころもと)ないそうな。そんな訳で、彼女は現在お金とか装備をクエ依頼で集めている最中との事。


 それもソロだときついらしく、はやく合流してと言われているのだが。それも遠くない時期に叶いそう、これ以上せっつかれずに済むのは何よりだ。

 俺の冒険の密度的には、そこいらの冒険者より濃密だと誇れると思っている。


 そう言う意味でも、街での幼馴染みとの合流は楽しみなイベントではある。俺に関して言えば、強さと汎用(はんよう)性では負けてないとの自負もある。

 逆に悪目立ちしないようにしないとな、魔法の属性も幾つか隠した方が良いかも。琴音に怒られるの嫌だしね、武器の方も投擲や楯スキルは隠すべき?


 さすがに心配を掛けるので、昨日の妖魔NPCとの遭遇の顛末は、幼馴染にはさわり程度しか語ってない。琴音に言っても、これは仕方のないイベントだし。

 それとなく誠也に聞いてみたけど、『始まりの森』でそんなNPCに出遭った報告はあがってないみたい。スレ版の書き込みとか、誠也は割とマメにチェックしてるそうなんだけどね。


 ついでに言うと、精霊とか狩人とか、ましてや妖魔の目撃報告は皆無らしい。その代わり、遭難した商人の目撃情報は実は少数ならあるらしい。

 そこで妖精を素直に引き取った『愚か者!』など、まずいないだろうとの友人の発言に。そうかもねぇと、乾いた笑いで応じる俺であった。



 その(うま)い話の持ちかけ系は、どうやら『ミクブラ』内の仕掛けとしてよくあるそうな。つまりは、余りに有名過ぎる引っ掛けトラップらしい。

 ベテラン冒険者であるほど、そんな話は警戒して乗ってこない筈との推測に。みんな本当に素直じゃないなと、(ひね)くれた思考で思う俺であった。


 同じように、南の騎士団との交渉で、果実の収集以上の成果を挙げた者も存在しないそう。何とかしてあの戦闘部隊を、動かすようなイベントを見れ者は皆無らしい。

 それは残念だ、あのキャンプ地にはまだ回収していない虹色の果実があると言うのに。連中があの場に居据わっている限り、俺があの場所の果実をゲットする事は叶わないだろう。


 まぁ、果実に関してはもう別にいいかな……何しろ既に、こっちは予定数を超えて集めているのだ。そこの収集が出来なくても、全然構わない。

 俺のメインの情報源である琴音や誠也は、こうした情報を専門のスレ板で得ているようだ。もっとも俺がネタバレ禁止令を発しているので、突っ込んでのネタ披露はして来ない。


 何しろ、賞金付き限定サーバは1日1時間である。そんな訳で専用のスレ版や他のネタ(まが)いのネット情報を、掻き集める時間は幾らでもあるそうで。

 俺みたいな情報弱者とは、大違いの幼馴染たちではある。


 その情報量が、最近は凄いとも耳にしたっけ。どうも限定イベントのサーバが一気に増えて、プレイする人数がそれに比例して増加したのが主な要因らしい。

 先行冒険者の書き込みを頼って、後発のプレーヤー達も細かな情報を提供して。そんな感じで、どこか提供元の怪しい情報も最近は増えているのだとか。


 例えば賞金付き限定イベントサーバの、進行予想スレなどが良い例らしい。ここでは毎回、進むが吉か留まるが優位かと、侃々諤々(けんけんがくがく)の議論が為されているそうな。

 とにかく進めば、何かしらのイベントが起きる筈と先を急ぐ冒険者と。じっくり腰を据えて、最低1か月は成り行きを見守るべしとの意見の冒険者が二分して。


 意見をぶつけ合って、白熱の議論と言うより(ののし)り合っているスレ板もあるらしい。面白いな、どちらも一理ある気はするけど……こっちは素人で、そんな意見の出しようもない。

 予想スレに関しては、ちょっと興味本位で覗いてみたい気もする。誠也なんかも俺と同じく、どちらも一理あるんじゃないかとの推測である。


 更に怪しい意見の中には、風変わりな物も散見されてカオス度は高まっているそう。例えばPK連中が、獲物を留めるために偽情報を流しているとかの憶測も出ているらしい。

 だとしたら思いっ切り振り回されてるな、疑心暗鬼を生ずって奴だ。俺にはあまり関係ない話だけど、レベルの低い奴が狙われやすいって情報もある。


 その辺は注意はしておこうかな、情報云々(うんぬん)はともかくとして。特にPK暗躍の情報は、先に街に出た琴音も神経を尖らせていた気がする。

 そんな先駆者の誠也のアバターだが、昨日の時点で初級冒険者Lv15との事である。つまり最初の職種変更をこなして、『初心者』⇒『初級』にクラスチェンジを経て。


 そこから更に、頑張って15程レベルを上げたらしい。これは先発組の大体の平均値らしく、中間の街で見かける大多数の標準値でもあるとの事。

 ただしこの辺も、有利や不利は微妙なのだとか。例えば、スタートの街でじっくりレベルを上げている冒険者の方が、後半巻き上げて来る可能性だってある。


 レベルは高ければ高い方が、何のイベントに臨むにしても良いに決まっている。そんな感じで、姉に主導権を取られている誠也の冷静な分析であった。

 つまりは先に進んで探索する時間を取るか、慣れている街でアバター強化に時間を費やすかの選択である。どちらが賢い遣り方なのかは、次のイベントで判明するだろうと。


 まぁ、所詮(しょせん)は先読みなので、そんなイベントが起きない可能性だって当然ある。どちらの手法を取るにも、一長一短が存在するのも確か。

 これらは留まる方が優位との、情報を分析している連中のスタンダードの主張らしく。せっかちな先行冒険者とは、一線を画す連中もいるみたい。




 授業はとっくに始まっていて、雨は段々と小降りになって来ている様子。先生の語る授業内容と、黒板の表面を等間隔のリズムで流れるチョークの音。

 物憂(ものう)げな雰囲気の中、時間はゆっくりと進んで行く。むしろその流れは、停滞してるんじゃと疑う程に遅々としている気さえして来る。


 こちらもノートを取りつつ、一応は真面目に授業を受けている。とは言え、ともすればフワリと思考があの『始まりの森』へと飛んで行ってしまう。

 モンスターがうろつき回り、剣と魔法が大手を振って存在するあの場所へ。





 ――血沸き肉躍る冒険の待つ、放課後まであともう少しだ……。








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