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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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連続する自傷するレア種



 何だか最後は呆気なかった気もするが、地の利を得た結果だと無理やり自分を納得させる。それより、ワイバーンのドロップが凄いというか酷い。

 まぁ、レア種の中でも格段に強敵だったから、当然とも言えるかもだが。まず最初に、スキル6Pの贈与は単体の敵では過去最高かも。


 何とレベルアップ3回分のポイントを、この亜竜は吐き出してくれた計算になる。それも当然か、一歩間違えば何も出来ずに殺されていた相手だもんね。

 それから貴重な、HPの増えてくれるアイテム『命のロウソク』が1つ。續いて宝玉:風魔法《双翼撃(そうよくげき)》って、派手そうなのがドロップしていた。


 ワイバーンが風系の魔法を使っていた記憶はないが、恐らくは風属性ではあったのだろう。久し振りに宝玉が貰えた、やっぱり強い奴は報酬も美味しい。

 確かに、強力な攻撃魔法っぽいのが増えたのは嬉しい事実ではある。ただし中級魔法のようなので、使い勝手に関しては微妙かも?


 それでもスキル4P付きの、自動取得の魔法は凄くお得には違いない。命のロウソクで体力も増えるし、アバターの強化がますます(はかど)ってしまうな。

 今回はあまり活躍出来なかったネムにも、魔石(中)とお疲れ様のお肉をあげておこうか。ファーも激戦の後だけに、鞄から果物を取り出してはみはみし始めている。


 時間も微妙になって来たので、これはこの場でログアウトする算段に持って行った方が良さそう。でもそれだと、次にインした時に巨大キメラが頭上に……。

 なんて怖い事態になりそうで、そんな不遇イベントはマジで勘弁して欲しい。やはり洞窟が良いかな、あそこなら最悪でも熊さんか大蛇程度で済みそうだし。



 おっと、ワイバーンのドロップは他にもあったんだっけ。魔石系が出なかった代わりに、何故か『竜玉石』と言うのがドロップした。

 他にも骨素材なのか、『飛龍の骨』と『飛龍の頭蓋骨』と言うアイテムが。恐らくレア系素材なんだろうけど、正直あまり嬉しいとは思わない。


 骨工系のスキルを伸ばす気は無いし、邪魔になりそうなら売るしか無いかな。せいぜい高値で売れてくれれば、あの激闘を制した甲斐はあったと言うモノだ。

 それより最後の2つが、自分的には大当たりかなって思う。


 ――飛竜のベスト 耐久15、防御+15、耐風+25%up


 鱗っぽい感じの見た目の上着で、ベスト風だが防御は高くて良い感じ。これも早速交換だ……見た目も貧乏臭くないし、ベテラン冒険者に見えて恰好良い。

 最後の1つは『飛竜の財宝』と言う、恐らくは換金アイテムなのだろう。売れば幾らになるのか不明だが、大きな宝箱1個分なのは確認済み。

 鞄を(ふさ)がない親切設計だな、これも有り難く頂戴しましょ。





 そんな感じで浮かれていたので、その場の異変に俺はしばらく気付けなかった。それに関しては、本当に大いに迂闊(うかつ)だったと反省すべし。

 以前もそれを体験していて、厄介な事態を招くと学んでいたと言うのに。


 つまりは飛竜の死骸が、全く消えずに残ったままだったのだ。結果的には岩に潰されての圧死だったので、そんなモノなのかなと思い込んでしまってたんだけど。

 実はそれは、見当違いの推測に過ぎなかった模様で悲しい限り。つまりその死骸は、以前のヒドラと同じく新たなレア種を招く餌だったみたい。


 それに気付いた時には、時既に遅しなのも以前と一緒。イン時間ぎりぎりの滞在で、まさかそんな凶悪なトリガーを引くとは夢にも思わず。

 その存在に気付いた時には、既に新たなレア種はこちらに接近を果たしていた。


 そう言えば、ラマウカーンにも新たな(よど)みの調査を依頼されていたっけ。スッポリ忘れていたのは、こちらの不徳の致すところではあった。

 確かに繋げて考えれば、或いは先に気付けていたのかも知れないと言うのに。とにかくそいつは、闇系の死霊でとてつもなくでかかった。


「……でかっ!!」


 ファーの指差した先のそれを見ての、第一の感想がそれだった。接近に気付いたのは皆ほぼ一緒で、森の異変を察知しての事なのも同じ。

 森の木々に止まっていた小鳥たちの逃げ出す羽音、揺れる枝葉のざわめき。木々を揺らして、その骨巨人はのっそりと姿を現そうとしていた。


 それが分かったのは、頭部が森の上から完全にはみ出していたから。そして死霊系なのは、そのおどろしい姿を見ればすぐに分かった。

 出現する時間を間違えたのか、陽光でダメージを派手に負っている事も判明。今日はこんなのばっかだな、現状7割のHPで今も自傷で減り続けている。


 それを見て、気分的には多少の余裕が出来たのも事実。そして森から出て来てこちらと接近するまでに、まだ少しばかり時間も掛かりそう。

 奴が狙っている目的が、ワイバーンの死骸と仮定しての話だが間違いは無さそう。つまりあの死霊モンスターも、死肉喰らい系のレア種なのかも。


 奴が接近するまでに弓矢で削れるし、後は魔法の取得も可能そうではある。風の宝玉は既に使ったし、貯まったスキルPで光魔法の攻撃系が是非とも欲しいな。

 初級でいいから、詠唱が短くて飛距離の長い奴が欲しい。



 そんな訳で、ファーに祈って貰いつつのスキル振りを急いでこなす。スキルPを光魔法に注ぎ込んで、さぁ良い感じの攻撃魔法よ来いと願った所。

 何と2つ目に、念願の攻撃魔法の《ライトアロー》が出て来てくれて思わずガッツポーズ。ちなみに1個目は、《ライト》と言う明かりを灯す便利魔法だった。


 ファーの祈りは効果ありとしておこう、それ程に《ライトアロー》は思った通りの使い心地だった。MPコストも低いし、対闇種族には持って来いの威力である。

 しかしまぁ、4時間縛りが間近なのに、休む暇もないとはこの事だ。鞄から(スタミナ)ポーションとマナポを取り出して、続けて飲み干しつつそう思う。


 ログアウト時間が非常に気になるが、逃げる手は正直無い。何しろ目の前に、傷付いたレア種がいるのだ……いや、コイツは実はユニーク種らしい。

 コイツが何故に、昼間に沸いたかって理由は良く分からないけど。いかにも闇系なユニーク種、トリガーは恐らく飛竜の死骸だろうか。


 う~ん、ひょっとしてラマウカーンが言ってた(よど)みとも関連があるのかも。取り敢えずは、こちらに有利なユニーク種戦をスパッと片付けてしまおう。

 時間も無いし、新取得の光魔法で勝ち切って早々に落ちようか。


 時間制限付きの戦いだと思うと、やはり(あせ)りも感じてしまう。そうなると、必ずしもこちらが有利とは思えないから不思議。

 試しに弓矢攻撃を当ててみた所、防御は柔らかいけどHPは豊富なイメージだ。ただし取得したばかりの《ライトアロー》だと、もっとゴッソリHPを削れた。


 これで一気にとは行かないが、近付くまでに相当良い線まで弱らせてしまえそう。手古摺(てこず)りそうなら、お酒系でのドーピングも念頭に入れておこう。

 とにかくある意味時間との戦いだ、狙いも荒くとにかく射ちまくる。


 まだまだ遠目なので、敵が巨体な割に半分も当たらないのはアレだけど。森の木々が巨体の大部分を隠しているので、それも仕方が無いとも思う。

 しかし、こちらの(あずか)り知らぬ所で何かのイベントが進行中なのか? どうしたモノかな、まぁ考えても仕方が無い事だけど。


 こちらとしては、ただ目の前の敵を倒すしかない訳で。冒険者の本能とでも言おうか、弱ってるレア種を前に逃げる選択肢など無い。

 再詠唱オッケーになる度に、《ライトアロー》を撃ち込んでやった結果。そいつが森を出る頃には、敵のHPは半減にまで落ち込んでいた。



 今更だが、このユニーク種の名前は“ボーンキメラ”と言うらしい。見た目と名前から、コイツが闇系の合成生物なのは間違いないようだ。

 う~ん、コイツが精霊の言ってた(よど)みに思えて来た、だとしたら排除にも力が入るな。しかし全容を現した骨キメラの、まぁ大きい事!


 てっきり肉は無いモノだと思っていたが、流動する腐ったような液体が全身に流れていた。骨のくっつき方はあちこち異様で、大きさも部位もまちまちである。

 本当に、素人が好き勝手に色んな骨をくっ付けて作ったような敵だ。(あなど)れないのはその巨体と、巨体から繰り出すパワーとスタミナだろうか。


 つまり接近戦は、リスクが高そうだしあんまりやりたくはないかな。幸いネムは、あの巨体にも全く(おく)している様子は窺えない。

 とは言え、あの気味の悪い奴に接近戦を挑んだり、ましてや噛み付いたりは止めて欲しいのが本音。代わりに光のブレス系なら、接近せずに効果も高いだろう。


 ファーにその(むね)の指示を出すと、早速光の水晶の欠片を食べさせ始めた。光系はそんなに集めた記憶は無いから、まぁ慰め程度だろうか。

 その分こちらが頑張ろう、既にこっちも覚悟は出来ている。


 他にも見えなかった部分が(さら)け出されていて、コイツの武器は両手棍のようだった。それも骨で出来ていて、体躯に似合った大柄な得物である。

 あれで殴られたら怪我どころでは済みそうもない、巨体によくある(にぶ)い動きであって欲しい。それにしても腐敗臭が凄いな、こっちまで漂って来ているよ。


 バーチャル世界とは言うモノの、このゲームって変な所が妙にリアルである。ファーもちょっと嫌そう、それどころか森の周囲の枝葉も枯れ始めている気が。

 その腐敗骨キメラは、本当に真っ直ぐ飛竜の死骸へと向かって来ていた。どんな用事かは知らないが、とにかく最接近までは弓矢と光魔法で削りまくる。


 痛覚は全く無いようで、痛がる素振りも(うめ)き声すら発しない合成生物。陽光でその動きは確実に鈍っており、接近まで更に1割以上削れてしまった。

 後は殴りと光魔法で、残りHPを食い尽くすのみ。


 考えた末に、武器はこちらも両手棍を選択する事に。何しろ短槍じゃ、肉身の少ない巨大な骨のモンスターには太刀打ち出来そうもない。

 初めて実戦で使う野蛮な大槌だが、振るってみたらなかなかに威力は凄まじい。初撃から、相手の左膝の下あたりを思い切り打ち砕く勢い。





 ――これは意外と、リミット内で片が付きそうな雰囲気?








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