表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/115

激闘の果てに



 これは2度目の襲撃は不可避だな、何とか接近前に洞窟に辿り着ければと思ってたけど。それが叶ったなら、無理せずそこでログアウト出来るのに。

 一応こちらは、魔法の香炉を持ってるので安全確保は可能なのだ。それならば、野外で落ちても危険性はほぼ皆無だと最近気付いた次第。


 ただし利便性に関しては、師匠の家や安全地帯の方が上と言う話。このピンチを何とか生き延びれば、その手法を確かめる事も出来るんだけどね。

 それもやや苦しいか、2度目のタッチダウンはかなり強引に行なわれた。向こうも恐らく、洞窟の存在は気付いていての措置なのだろう。


 まさに断崖の岩を削り取るような破壊力で、俺たちは再び吹っ飛ばされる。幸い直撃は無かったが、断崖から()がれた石塊が肩や腰に当たって痛い。

 その衝撃を受けて、思わず抱えていたネムを離してしまった。俺より軽いせいか、コロコロと転がって行く仔竜……それを慌てて、ファーが追い掛けている。


 だけどまぁ、それは不幸中の幸いとも言えるかな。相棒たちは安心だ、何故なら亜竜のタゲはしっかり()()()に向いているからね。

 ワイバーンが亜竜と言われているのは、単純に解釈して竜の亜種だからだろう。竜であって竜で無い、なりそこないと言うか(まが)い物と説明すべきか。


 まずワイバーンには前脚が無い、代わりにかなりのスピードが出せる翼が生えている。ブレスも吐かないようだけど、尻尾は毒針になっているようだ。

 今はそれを振り回して、(えもの)を捕獲しようと奮闘している。


 野生の肉食動物は、獲物を捕食する狩りでは決して無茶はしないそうだ。万一それで怪我を負ったら、回復次第では永久に獲物が捕れなくなってしまう。

 ただしコイツに限っては、恐らく有り余る体力と自然治癒力でも備えているのだろう。そのせいなのか、岩の壁など物ともしない無茶な仕掛けは酷過ぎる。


 そして今も悠然と立ち振る舞って、洞窟への道を完全に(ふさ)いでくれている。獲物で遊んでいるのかも、空の王者の風格を存分に漂わせている。

 被害を最小に抑えたい俺は、ネムとファーから離れるべく反対側へと離脱を図る。案の定、それに釣られてこちらをロックオンする空の主。



 俺が走り出すのを見て、奴は再び宙へと舞い上がる素振り。また鬼ごっこか、捕まると酷いペナルティ付きなのでこちらは必死である。

 だんだん腹が立って来たな、こうも一方的な攻勢だと当然の感情とも思うけど。


 何かやり返す方法は無いモノか、こちらは与えられた時間で懸命に策を練ろうと頭をフル回転させる。頭上をもう一度見上げて、敵が再び落下態勢を取る瞬間を見逃さないように。

 そして不意に視界に入ったのは、俺の生み出したイレギュラーの存在だった。それはこちらの移動スピードに対応出来ず、襲撃地点の近くで動かず案山子(かかし)状態のまま。


 これを上手く利用できまいか、脅かし役の案山子でも何でも良いから。いや、やり様によってはもう少し上手く活用出来るかも知れない。

 さりげなく俺は、海月(クラゲ)モドキを宙へと浮き上がらせる。戦闘前に生み出したソイツは、30分の活動限界までまだまだ余裕はある。


 敵の狙いは、食べ応えのありそうな俺しかいない。なので俺とワイバーンの直線状にこの生物モドキを配置すれば、或いは一泡吹かせる事も可能かも。

 幸い敵は舐め切っている、こちらは(ろく)な反撃もしてないのだから当然だ。そんな訳で、ワイバーンは前回と同じくかなりの速度でこちらへと突っ込んで来た。


 何の(ひね)りもないが、これから逃れられる手段を今までの獲物達は持っていなかったのだろう。だから当然、この捕食行動は成功すると奴も思っている筈。

 そこに割って入る、恐らく相手も見た事のない不思議生物。思わず噛み付き行動を取ったのが、相手にとって最悪の結果を招いてしまった。


 俺にとっては僥倖(ぎょうこう)だ、そのスピードの主を捕獲出来たのだから。回避行動を取られていたら、まず絶対に捕まえられなかっただろう。

 結果、空の王者とHPすら持たない最弱の生物モドキの邂逅(かいこう)は果たされた。その瞬間を逃さず、俺は必死に海月モドキを(あやつ)りにかかる。


 ここで下手に攻撃を仕掛けても、無駄なのは分かり切った事。ただし視界を奪うくらいなら、この惰弱な粘体生物モドキでも何とか可能である。

 急に盲目状態にされたワイバーンは、そのままのスピードで地上に激突!!




 これは予想以上の成果だった……魔法の目潰しは何種類か持っているけど、距離だったり詠唱時間だったり、俺まで巻き込まれる可能性ばかり高い作戦だったのだ。

 それがほぼこちらはノーリスクで、作戦成功に至ってしまった。しかも相手のワイバーンの被害は、何とHP半減と言う凄まじいダメージ具合。


 重力って凄いな、相手の速度と自重も当然あったんだろうけど。そして今も海月モドキは、相手の顔に張り付いたまま視界を奪ってくれている。

 向こうは前脚が無いので、それを振りほどくのに相当苦労している。


 無闇やたらと長い首を振り回して、この無礼者の所業(しょぎょう)を己への挑戦と受け取っている様子。そんな事を気にしていられないこちらは、相手に取り付いて翼を破壊に掛かる。

 またもや宙に舞い戻られでもしたら、こっちはまた手が出せなくなってしまう。空を飛び回るワイバーンを、弓で狙うにはこちらもリスクが高過ぎる。


 何しろ、あの重量であのスピードなのだ、扇風機の回転翼を指で止めるのとは訳が違う。ジェット機のエンジンのファンに、首を突っ込むようなモノだ。

 攻撃が当たれば良いと言うモノではない、その後の反撃も考えないと。失うものが指先だけなのか、それとも首から上の大事な個所か。


 そんな博打(バクチ)に出るより、今この瞬間に相手の機動力を削がないと! そんな(あらが)えない使命感に燃え、俺は墜落したワイバーンへと襲い掛かる。

 短槍では攻撃範囲が局地的過ぎるけど、両手棍に持ち替える時間も惜しい。と言うよりも、複合技を手放す勇気が無いと言い換えた方が正しいのかも。


 それでも亜竜の翼の皮膜は、何度かの突きでズタボロになって行った。気を抜くと、後方から凄い勢いで尻尾の毒針が飛んで来るから油断は全く出来ない。

 位置取りに注意しつつ、俺は地上で暴れるワイバーンをひたすら突きまくる。



 しばらくしたら、ファーとネムが応援に駆け付けてくれた。相棒コンビは、衝撃に目を回していただけで大きな傷は無い様子でこちらも一安心。

 それでも相手は大物だ、充分に注意して戦って欲しい。これでこちらに勢いは付いたが、敵の膨大なHPはようやく3割辺りまで減じた程度。


 墜落ダメージの方が依然と高くて、俺の攻撃など些細なモノらしいのが悲しい所。それでも何とか、片方の翼は完全に潰せたっぽい。

 油断していた訳ではないが、それと引き換えに大ダメージを喰らってしまった。尻尾の毒針が突き攻撃で無く、()ぎ払いに使われたのだ。


 これで吹っ飛んだ俺は、すぐそばの崖の岩に激突してしまった。それだけで体力3割減のダメージとか、このレア種って強過ぎじゃない?

 実はエリアボスでしたと言われても、今なら信じるかも知れないな。そんな(ひど)い仕様に、思わず涙目になりながらも戦闘は続く。


 反撃の《(ダーク)タッチ》のお返しは、敢え無くレジストの憂き目に。魔法耐性は強そうだなと思っていたが、この調子だと俺程度の呪文は全く効かないかも。

 何せ、短槍に掛けてある《風属性付与》の効果でさえ、かなり微妙な効きでしかないのだ。他の魔法の効果も、推して知るべしってな感じである。


 もう少し魔法スキルが高かったら、少しは違って来たかもだけど。うわっ、考え事をしてたら、ネムも尻尾の毒針の餌食になってるっ!?

 これはかなり不味いな、毒消し薬は一応ポーチに入ってるけど。ファーが慌ててフォローに入っているので、任せてしまった方が良いかも知れない。


 こちらでタゲを取って、一応は《ヒール》の呪文を飛ばすまではやっておこう。それから貯まったSPで、短槍の必殺技《四段突き》からの《白垂飛泉槍》を喰らわせる。

 これはかなり効いた様子で、HPが2割ほど減ってくれた。


 そして何より、タゲが完全にこっちに向いたのが大きい。尻尾と後脚の連続攻撃は辛いが、ネムの安全は確保出来た事になるし目論見(もくろみ)通り。

 そして残念ながら、無敵の海月モドキは召喚時間切れでマナと化して霧散してしまった。これでとうとう、奴の視界を阻むものは完全に無くなってしまった。


 ただし片翼は潰されて、敵はこちらと同じ土俵内である。つまり空の王者も、哀れ地上に足止めされる破目に……せいぜい、泥臭い戦いに(まみ)れておくれ。

 しかも水の複合スキル技のお陰で、辺り一帯ぬかるんで酷い状態。後は斬りタイプの武器があれば、厄介な細い鞭状のワイバーンの尻尾を斬り落とせたのに。


 まぁこればっかりは仕方が無い、毒を喰らわないよう注意しつつ、残りの体力を削り取ろうか。厄介なのは承知だが、敵は既に届く範囲に墜ちてくれているのだ。

 文句を言ってる場合ではない、やり遂げるか否かの問題だ。



 ところが終焉は思わぬ所から降って来た、ワイバーンも相当に(いら)立っていたのだろう。それは当然だ、翼を破壊された上に恐らく初の水圧攻撃を身に受けたのだ。

 空の王者の貫録丸潰れである、ここまで逆らった獲物は初だったろうに。その憤懣(ふんまん)をぶつけるように、敵は巨体での体当たりを敢行して来た。


 無理な姿勢とぬかるんだ足場のせいか、それはバランスを崩して的外れな方向へ。怒りにまかせて行動すると、(ろく)な事にならない良い見本だ。

 (まと)である筈の俺の小ささも、相手にとっては不利だったのだろう。その上、翼を破壊されての身体バランスの変化に、感覚が追い付けなかったのかも。


 結果、2度目の自爆ダメージを自ずと受ける破目に。相手にとって不幸だったのは、断崖の岩場が予想以上に(もろ)くなっていた事だろうか。

 奴のせいでもあるので、まぁある意味自業自得ではあると思われる。つまりは崖崩れが起きて、それに巻き込まれるレア種であった。


 慌てて退避する俺と相棒たちは、何とか被害を最小でその任務に成功した。いやしかし、こんな終わり方っていいのかなと、ちょっと疑問に思ってしまった。

 棚ぼた式の勝利、ワイバーンは崖崩れに巻き込まれてペチャンコに。





 ――潰された本体は完全にHPゼロ、本当に戦闘は終了したっぽい。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ