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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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空の王者



 喧騒と騒乱の安全地帯を後にして、一路西の断崖絶壁エリアへと向かう。相棒たちも一緒で、考えてみたら初日と違って随分騒がしいパーティになってるな。

 これなら少々強い敵が出ても大丈夫、とは言い切れないのが辛い所ではある。何しろ、西のエリアは超大物が平気で立ち寄る狩場っぽいのだ。


 あの時は夜だったけど、実際にワイバーンや巨大キメラも見た事があるし。相棒が増えた程度で、あの化け物と対等に遣り合えるとは到底思えない。

 それはともかく、このエリアへの恐怖心から、余ったスキルPを割り振りした結果。色々と覚えてしまいました、初の複合技も含めて戦力アップは上々。


 まぁ、これがあっても流石(さすが)に巨大キメラに挑もうとは思わないけど。その試運転は、すでに安全地帯で実施済みなので問題は無い。

 ただし8種類全ての魔法に手を出したのは、本当に不徳の(いた)す所。


 それでもまぁ、良いじゃないと思えるのはまたレベルが上がりそうだから。あの軍艦鳥40匹の群れと着ぐるみとの手合せの経験値、凄かったみたいですな。

 もうすぐレベル20の大台である、しかもまだスキルPは結構余っている不思議。心の貪欲な声に従って、これからも気侭(きまま)にあれこれ伸ばして行こうと思う。


 次の候補は両手棍かな、ちなみに魔法は光とか氷が今の興味ではある。スキル4程度で魔法を使っても、効果は低いみたいだから割り振りは大事。

 このエリアは敵の数も多いし、クマなどの割と大物も跋扈(ばっこ)してる。ネムとのコンビ戦闘の、おさらいをするにも持って来いだろう。


 ファーには周囲の警戒を頼んで、万一の超大物に備えて貰おう ファーの騎乗無しで、さっきの軍艦鳥戦でのコンビプレイが出来たら大したモノだ。

 ネムには是非とも、そのレベルまでに達して欲しいのが本音である。意外と賢い仔だから、不可能ではないと思うんだけどな。


 ちなみにここまでの道のり、マップ埋めに割と遠回りしてしまった。お蔭で北西の隙間をコンプリート出来たけど、残り時間は50分程度しか無くなった。

 安全地帯に戻る時間を考慮すると、30分程度が活動限界かな?


 そう考えると、あまりあれこれと我が(まま)は言えないかも……数カ所の馬車の中身(あさ)りだけでも、割と時間が掛かる訳だし。

 ってか、考える時間も勿体(もったい)ないので、早速狩りを始める事に。取り敢えずは、ファー抜きでのネムの動きを確認したい。


 そんな訳で、ファーとネムに辛抱強く要点を言い聞かせて、再度動きのおさらいを。最初は単純な戦闘手順、俺が矢を放った敵に間髪入れずに襲い掛かる感じ。

 ファーはすぐに理解してくれたが、仔竜のネムはママの不在に心細そうな表情。しばらくして、そういう遊びなのだと自分の中で解釈してからは順調に。


 一気にテンションアップして、俺が弓を射る敵に襲い掛かっている。実際、断崖の上の段に張り付いている大トカゲや山羊は、弓矢でないと攻撃が届かない。

 そして攻撃が当たった瞬間、こちらに向かって降りて来る。その途中でネムが急襲、獲物はそれで呆気なく倒されて行くお手軽さ。


 俺の弓の威力が高いのもあるが、意外とここの敵も雑魚指定に成り下がってしまっている。それから、ネムが想像より強いってのも勿論(もちろん)ある。

 ちゃんと成功したら、その度にファーママが誉めてあげているみたいだ。そのため、狩りの途中なのに何処(どこ)かホンワカした雰囲気ではある。


 一応は戦闘訓練なのにね、いやまぁ楽しむのは全然構わないので文句はない。犬の(しつ)け訓練みたい、まぁ似たようなモノではあるかな。

 ってか、ファーも遊び感覚で本当に楽しそうにしている。こちらはクエの消化中だが、そちらに関してもなかなかに良いペース。

 山羊の皮集めも、いつの間にやらクリアしていて良い調子。




 獲物を求めて崖沿いを移動してたら、落っこちて来た馬車の残骸(ざんがい)の前にたどり着いた。このポイントは、確か以前に(あさ)った奴だったかな。

 まぁ、ファーが反応しているからポイントは復活してる筈。ネムにご苦労様の言葉と串焼きのお肉を差し出して、休憩と上空警戒を頼んでおく。


 それからファーと一緒に、馬車の収集ポイントを片っ端から探って行く。自分の出番が巡って来て、彼女はこの上なく楽しそう。

 半壊馬車のポイント探索も、既にすっかり慣れたモノで抜かりもない。前回は真夜中の行動だったけど、今は夕方で陽はまだ明るい。


 そのせいか、気分的にもちょっと楽だしゴブリンも周囲には見掛けない。ファーは全く変わらない、そのテンションは常に高度を維持していて容赦ない。

 彼女の指し示すポイントを、俺は(うなが)されるままにチェックして行く。その結果、ほんの数分で結構な収集物を得る事が出来た。


 まずは品質が並みの収集物だが、一番多いのが木切れ各種に保存食が少々。ついでに木箱の中からは、鉄鉱石などの大物が幾つか出て来た。

 次いで中当たりの品だけど、果実酒とポーション(大)、それから魔石(極小)×6個と宝石少々。当たりに位置付ける品は、まずは闇の秘酒×2本と金のメダル×1枚。


 それから『木人形の呼び鈴』と、土の水晶玉が1個。変わり種と言うか用途不明なのが、料理レシピ本と何かの手紙、それから形見の楽器と(めい)打たれたアイテムだった。

 何だろうね、クエアイテムとかなのかな?


 今は無用の品だけど、どこかに持って行ったらイベント的なものが進行するとか? 良く分からないけど、ゲーム的に考えれば充分あり得そう。

 手紙だって、誰に届けていたモノなのか汚れのせいで一切不明である。普通に考えれば、馬車での輸送中に不幸があって荷物ごと廃棄された感じだろうか。

 いや廃棄と言っても、荷物主も無事では済まなかっただろうけど。




 取り敢えず収集ポイントもひと段落付き、ファーもやり遂げた感を存分に出している。そろそろ潮時、もう少し狩りをしたら安全地帯に戻って落ちるのがベストかな。

 などと思っていたら、不意にネムが緊張した鳴き声を上げた。


 同時に地面が不意に陰った、俺の中でけたたましく警鐘が鳴り響く。ネムも同様らしく、小さな翼をはばたかせて上空の“何か”を必死に威嚇している。

 ファーも半壊馬車から飛び出して、慌てて再び物陰に隠れてしまった。俺も出来たら隠れたい、だけど恐らく既にロックオンされてるんだろうなぁ。


 ありったけの勇気を振り絞って、俺は弓を片手に上空を仰ぎ見る。“最悪”はどうやら(まぬが)れた様で、いつかのユニオン種『巨大キメラ』では無かったようで何より。

 代わりに獲物を求めて、レア種の“ワイバーン”が高速飛行で上空を飛翔していた。そしていつの間にやら、勇ましい戦闘音楽が鳴り響いている。


 このゲーム、そう言った臨場感を(あお)る工夫だけは素晴らしく凝っている。こっちは襲われる側なのにね、さてどうしたモノやら。

 とにかく、大人しく狩られるのだけは避けたい所。


 殴り武器は全く届かないので、武器は弓矢のままで良いだろう。続いての戦闘準備、せめて楯は欲しいので代役に『闇水』で海月モドキを作り出す。

 今回は役立ってくれると良いが、あの高速移動に追い付くスピードはこの生物モドキには無い。せめて楯代わりに使う程度、まぁ無いよりはマシかなって感じ。


 そうこうしている内に、奴が高速で降下して来た。その速度は敵ながら素晴らしく、まさに天が降って来たような感覚に(おちい)ってしまう。

 まさに、巨大モンスターのド迫力を垣間見た瞬間だった。そしてあわや、一撃で事故死しそうに……障害物なんて関係無い、速度と巨体の両立は卑怯過ぎ。


 その結果、半壊馬車はモノの見事に全壊して木っ端みじんの憂き目に。こちらはなす(すべ)無く、とにかく直撃を喰らわないように逃げ回るしかない。

 それにしても、馬車に隠れていた相棒は大丈夫だろうか。


「ファー、無事か……っ!?」


 ひっくり返って目を回しているネムを回収して、馬車の中に逃げ込んでいたファーに声を掛ける。自分と言えば、何とか地面に転がって最初のタッチダウンは回避に成功した。

 ただし、小さな相棒たちはそうもいかなかった様子。それでもファーが、ひょっこり馬車の破片の中から顔を出したのを確認して、思わず安堵のため息を漏らしてしまった。


 最悪の事故は防げたが、あんな敵に反撃の手段なんてあるのか? レア種と一言で言っても、その中でも格付けみたいなものは存在する。

 つまりはレア種もピンキリで、中にはエリアボスに匹敵する強者も間違いなく存在するのだ。ワイバーンも、間違いなくその強者の部類に組み込まれそう。


 最初の頃に琴音に目撃証言を報告したら、絶対に関わってはダメだと釘を刺された。今ならその真意も分かる、この速度と巨体を併せ持つ敵の厄介さ。

 まず取っ掛かりが無い、どう攻めようかとか考えるもその手段が圧倒的に少ないのだ。殴り合いはまず無理、たとえ奴が同じ土俵に降りて来ても踏み潰されるのがオチ。


 それだけの圧倒的な体格差があるうえ、向こうは飛翔能力持ちである。ちまちまと魔法か弓矢で攻撃してれば、まぁ百回程度当たれば倒せる可能性はあるかも。

 ただしそれも、向こうの1回のタッチダウンで先にこちらが潰されて終わりだ。


 砂埃(すなぼこり)が派手に舞っている中、俺たちは一応無事に合流を果たした。確認すると、ワイバーンは再び浮上して完全に有利な位置を取っている。

 並みのレア種とは迫力も重圧もまるで違う、カテゴリー的には竜の亜種の筈なんだけど。間違っても、仔竜のネムにお前頑張れとは言えないレベル。


 体格差はそれ程に酷いし、それに加えて生のバーチャル感は半端ない。これを味わえるとは、ひょっとしてゲーマー冥利(みょうり)に尽きるのか?

 そこまでゲーマーじゃない俺は、何とか全員で生き延びる手段を脳内模索する。おっと、そう言えば……確かこの近くに、洞窟が幾つかあったっけな。


 前回の探索で、熊とか大蛇が巣を作っていたのを確認したような記憶がある。そこまで逃げ延びれたら、向こうは追って来れないだろう。

 まぁ、そこまで逃がしてくれるようなヘマや油断を、ワイバーンがしてくれればの話だけど。向こうの速度はこちらの比じゃない、ちょっと無理ゲー気味じゃない?


 断崖寄りを駆けての避難も、向こうはあまり気にしていない様子。山羊や大トカゲを狩り慣れているのだろう、どうせならそっちをタゲってくれれば良いのに。

 そう思って見上げた断崖だが、生き物の気配はいつの間にか無くなっていた。それはもう完璧に、彼らは危険察知からの避難に全力を注いだ様子だ。


 知らなかったのは、残骸(ざんがい)漁りに浮かれていた俺だけってか? 気付くのが遅れたのは確かに致命的だが、まだ完全にアウトを宣告された訳でも無い。

 壁沿いをネムを抱え、俺は洞窟を目指して必死に走る。


 ファーもちゃんと付いて来ているな……こちらの思考を先読みしているのか、洞窟のある方向を指し示して彼女もかなり必死な模様。

 相手にブレス攻撃は無いよな、知識の不足を()いながらの激走に。思ったより距離があるのを知って、ちょっと絶望的になってみたり。

 上空からは相変わらずの重圧、どうあってもタゲは外れてくれそうもない。





 ――それは既に、殺意と言えるレベルで俺を(から)め捕っていた。








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