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第99話

 翌朝、今日は食堂を開けず作戦会議を行うことにした。

 俺たちは席に座り、頷きあう。


「改めて フルコース 説明 する」


「うん!」


「お願いするっス」


 2人の返事を受けてから俺は指を一本立てる。


「まず最初 前菜。これは 軽い ものを 出す」


「かるいもの? わたみたいなかんじ?」


 ミュラが首を軽く傾げた。

 その軽いじゃないっての……。


「軽食の 事。最初に 少し 食べて 胃 刺激 させる。そして、食欲 引き出す」


「なるほどっス。で、前菜はどんなものが出されるっスか?」


「そうだな……主に 魚介系、野菜系、加工肉系 使われてる」


「ふむふむ。じゃあ、その中でどれにするすっか?」


「俺的に カルパッチョ いいと 思う」


 この世界において、基本魚や肉を生で食べる事はしない。

 ならば、ここは現世界の物で勝負だ。

 それにカルパッチョはつくるのが簡単。

 コヨミに負担をかけすぎないところもいい。


「カルパッチョ? なにそれ?」


「生の 魚、肉 使った 料理」


「えっ……それおいしいの……?」


 ミュラが額にしわを寄せてしまう。

 まぁ、そうなるのも無理はない。


「安心 する。おいしい から」


「……ゴブが、そういうなら……たべてみる……」


 なんか、ミュラが食べる前提の話になっていないか。

 いや、味見役として必要ではあるか。


「じゃあ、前菜はそのカルパッチョで決まりっスね」


「ああ」


 俺は頷きながら2本目の指を立てた。


「次 スープ」


 これに関したら、出来ていると言ってもいい。


「コヨミスープで いいと 思う。どう?」


「……そうっスね。ウチもそれが良いと思うっス」


「コヨミスープが、スープのなかでいちばんおいしいもんね! ジュルリ」


 とはいえ、まだ改良できる点があるからそこは詰めていかないとな。


「3番目 サラダ」


 俺は3本目の指を立てた。


「ねぇねぇ、サラダってさいしょからテーブルのうえにおいておけば、いいんじゃないの?」


 確かにそうだけども、それじゃあフルコースとして意味がないっての。


「サラダ、口の中を 一度 リセット する」


「リセット? なんのいみがあるの?」


 うーん、説明しにくいな。

 説明だけで時間がかかりそうだし……ええい、こうなったら。


「とにかく 大事 なの! お婆さん、どんな 野菜 好きなのか わからない。だから、コヨミさん 任せたい」


「あ~……確かにそうっスね。わかったっス」


「4番目 魚料理」


 俺は4本目の指を立てた。


「さかなって、ぜんさいでつかうんじゃ?」


「これは 重い 方だ。しっかり 調理 する」


「ふ~ん?」


 ミュラがよくわからないという感じで視線を上に上げた。

 まぁこの辺りについては実際作ったら、理解できるだろう……多分。


「案として アクアパッツァ どうかな?」


 大抵は魚のソテーになるが、それだとつまらない。

 ちょっとここいらで変化球だ。


「ああ、あれっスね。ウチもそれでいいと思うっス」


「アクアパッツァもおいしいよねぇ~……ジュルリ……」


「5番目 ソルベ」


 俺は右手の指を全部上げた。


「ソルベってなに?」


「冷たい やつ。甘い 氷菓子 だ」


 それを聞くと、ミュラの顔が明るくなる。


「それって、ゴブが初めてミュラにつくってくれたやつじゃん!」


 ああ、そういえばそうだな。

 まだ1年もたっていないのに、だいぶ前だった感じがする。


「そう。けど、呼び方 違う。ミュラ 食べたの シャーベット。フルコースは ソルベ」


「え? なんでわざわざかえてるの?」


 そこまで知らないっての。


「と、とにかく、ソルベ なの! これ、ミュラ 力 借りる」


「っうん! まかせて!」


 ミュラが右腕を曲げて、力こぶを作る。

 が、その力こぶは全くと言っていいほど膨らんでいない……。


「任せる」


「6番目 肉料理」


「おにく!! ジュルリ!」


 肉と聞くなり、ミュラが目を輝かせて前のめりになった。

 本当に肉が好きだよな……こいつ……。


「肉 主役。言わば 全て 決まる 過言じゃ ない」


「メインっスね!」


「そう。普通 牛。だが 豚 鳥 でも いい。これも 好み 出る。どの肉 料理 するか、コヨミさん 任せたい」


「……了解っス。うわ~……責任重大っスね~」


「7番目 デザート」


「あれ? ソルベは?」


「あれは間。デザート 食後 締め」


「また、よびかたがちがうってやつ?」


「まぁ……そう だ」


 面倒だから、そういう事にしておこう。


「シンプルに、アイス いいと 思う」


「アイスっスか」


「そう。それなら、ミュラの 力 生かせる」


「まっかせて! ソルベもアイスも、ミュラがつくってあげる!」


 ミュラが椅子の上に立ち、両手を腰につけてふんぞり返った。

 心なしか、ミュラの鼻が伸びていっているように見える。


「最後……食後の飲み物……」


 終わりの余韻を楽しむ。

 これもかなり大事な工程だ。

 普通はコーヒーだが……やはり、この食堂の飲み物と言えば……。


「コヨミさん、いつもの お茶 出して ほしい」


「え? それはいいっスけど……じゃあ、高級な葉を……」


「いつもので」


 俺はすぐさまコヨミの言葉を遮った。


「へっ?」


 それを聞いたコヨミが目を丸くする。


「高級な葉の方が、よくないっスか?」


「いや、いつもの お願い」


 こればかりは譲れない。

 いつも飲んでいる、コヨミのお茶でないと意味がない。


「? よくわからないけど……わかったっス」


 俺は、不思議そうな顔をしているコヨミを横目に、力強く頷いた。


「これで 大体 決まり だな」


「うん!」


「え? あっ、そうっスね!」


 後はコヨミに任せるもの次第だ。

 どんな材料を言ってきても、対応できるように考えなくっちゃな。


「それじゃあ、市場 行って 材料 探す」


「了解っス。任せられたものを探したいっスね」


「いったい、どんなものがたべられるんだろうな~! たのしみ~!」

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