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第100話

 俺たち3人は、いつもの大通りに出た。

 さて、買うものを決めていかないとな。


「コヨミさん、おばあさん 好きな肉 決まった?」


「それっスけど……やっぱり、牛っスね」


「牛肉 か……」


 牛肉のメインとなれば、アレしかないよな。


「それ だと……ステーキ かな」


「ステーキ! それでいいんじゃないかな? ……ジュルリ」


 ミュラが目を輝かせながら、涎を垂らしつつ口をもぐもぐと動かす。

 頭の中では、ステーキ食ってるな……。


「ふーむ……」


 俺は腕を組み、眉をひそめた。

 果たして、それでいいのだろうか。

 確かにステーキはおいしい。

 しかし、言ってしまえば焼くだけ……それで、コヨミの祖母を喜ばせられるのだろうか。

 下手をすれば、祖母の方が焼き具合がうまい場合もあるんだよな。

 だとすると、ソースに工夫をするしか……。


「あれ? ステーキ、だめなの?」


 俺の様子に、ミュラが首を捻る。


「駄目 というか……ステーキ 定番 果たして 満足 するか 不安……」


「う~ん……たしかにそうかもっスね……」


 まぁ、まだ時間はある。

 今すぐに決めなくてもいいだろう。


「とりあえず、店 見ながら 考えて 歩く」


「うん!」


「そうっスね」


「じゃあ、後 サラダ は?」


「そこが問題なんっスよね……おばあちゃん……野菜系は全部好きなんっスよ」


「……は?」


 俺はその言葉に足を止めて、コヨミに視線を向けた。


「全部?」


「そうっス。なんでもバクバクいける口で……」


「えっ!? ピーマンも!?」


「おやつに、生でかじっていたところ見たことがあるっス……」


「……」


 コヨミの言葉に、ミュラが目を丸くしてその場に固まった。

 ミュラからしたら、信じられないだろうな……。

 にしても、それも困ったな。

 何でもありなら、到底絞り込めないぞ。


「じゃあ 強いて なら? よく 食堂 置いてた ものとかは?」


「……う~ん……そうっすねぇ~……」


 コヨミが腕を組み、眉間にしわを寄せて目をつむった。


「……むむむむむむ…………あっ」


 しばらく考えたのち、何かを思い出したようで目を開けた。


「トマト……そう、トマトは絶対に置いてあったっス。まぁサラダ用の付け合わせではあるっスけど、それもおやつとしてよく食べてたっス」


「トマト か」


 そうなると……。


「クスクス」


 俺が考えていると、ミュラが口を押さえて笑い出した。


「どうした?」


「どうしたもなにも、おねえちゃん、トマトって、くだものだよ。それだとデザートになっちゃうじゃん」


 その一言に、俺とコヨミが固まる。

 まさか、勘違いしているタイプだったとは。


「「……」」


 俺たちの反応を見て、ミュラが目をぱちぱちとさせて首を傾げた。


「あれ? どうしたの?」


「え~と……ミュラちゃん……トマトは……野菜っス」


「えっ!?」


 コヨミの言葉に、ミュラがすぐさま俺の方を向く。

 俺を見たところで答えは変わらないっての。


「野菜 だ」


「うええええぇっ!?」


 ミュラが声を上げて、交互に俺とコヨミの顔を見る。


「ほ、ほんと……?」


「……ああ……」


 俺は迷わず首を縦に振った。


「う、うそだぁ……」


 ミュラが恥ずかしそうに頭を押さえて、その場にしゃがんでしまった。


『まっ、してしまうのも仕方ないか……』


 そんなミュラを横目に、俺はトマトでどうするか考え始めた。

 そのまま切って出す……なんて一番あり得ない。

 となれば、トマトソースにするかだが、それもつまらない。


『何かトマトでおいしく……あっ!』


 あった。

 オシャレで、おいしいトマトの料理が。

 アレを作るとして、残りは肉だが……。


「っかー! うめぇなぁ」

 

「ああ、最高だな」


『ん?』


 ふと声のする方を見ると、親父2人が屋台で酒を飲んでいた。

 おいおい、朝っぱらから酒かよ。


「今年のワインは出来がいいな」


「ああ、香りが違う!」


 しかもワインを飲んでるのかよ。


『まったく、いい気なも……待てよ、今年のワインは出来がいい…………これだ!」


 いいものを思いついたぞ。

 これならうまくいくもしれない。


「メイン 決めた!」


「え、本当っスか?」


「おお~! どんなのにするの?」


「それ、出来てから お楽しみ だ!」




「ふぃ~……やっと、ついたぁ~!」


 ミュラが食堂の入り口前でしゃがみこんでしまう。

 俺も、ミュラみたいに今にもしゃがんでしまいそうだ……。


「今すぐ開けるっスから、もうちょい頑張るっス」


 コヨミは鍵を取り出し、扉を開けた。

 それと同時に、俺とミュラは食堂内へ入り込み、荷物をテーブルの上に置いた。


「はあ……はあ……おも……かった……」


「だ……な……」


 フルコースに必要な食料はかなりの量となり、3人で分けることにした。

 とはいっても、ほとんどはコヨミが背負った状態だが……俺とミュラにとっては大荷物だ。


「はは、これくらいでだらしないっスね」


 コヨミはケラケラと笑いつつ、背負っていた荷物と氷の箱をテーブルの上に置いた。

 ミュラの作った氷の箱は4個、大小はあるものの全部持つとなると相当な重さになっているはずだ。

 それを涼しい顔で運ぶコヨミの方がおかしいと思うんだが……これは言わないでおこう。


「少し 休んだら 始める」


「了解っス」



 俺たちはお茶を飲み、一息入れてから厨房へと立った。

 まず作るのは時間のかかるメインからだ。

 俺は氷の箱から、牛すね肉を取り出した。


「じゃあ メイン から いく」


「そのメインは何を作るっスか?」


「牛肉の 赤ワイン 煮込み だ」


「あかワイン……? え? おさけ!? それじゃあ、ミュラたべれないじゃん!」


「アルコール 飛ばす。だから、食える」


「そうなの? たべられるなら、つくってよし!」


 ミュラの承諾も得たので、早速取り掛かろう。


「それじゃあ 始める」


「任せるっス!」


 まずはトマト1個を角切りにする。

 そして、玉ねぎ1個をみじん切りにして、ニンニク1欠を縦半分に切って芯を取り除く。


 牛肉は食べやすい大きさに切り、塩こしょうをふり、小麦粉をまぶす。

 鍋に油の大さじ1の量を入れて熱して、ニンニクを入れて香りが立つまで弱火で炒める。

 香りが立ったら、小麦粉の余分な分を叩き落とした牛肉を入れて中火で焼いていく。

 裏返しながら焼き色を確かめて、表面に焼け目がついたら牛肉を一度鍋から全部取り出す。


 牛肉を取り出した鍋に、油を大さじ1を入れて、みじん切りした玉ねぎを加える。

 中火で色づくまで混ぜながら炒め、取り出した牛肉を戻し、小麦粉を大さじ1を加えて粉っぽさがなくなるまで炒め合わせる。

 それが出来たら、角切りにしたトマト、赤ワインを400ml、水を200ml、鍋に加えて軽く混ぜる。

 後は塩を入れて味を調える。


「後は、肉 柔らかく なるまで 煮る」


「了解っス。結構、簡単っスね」


 まぁ確かにそうだな。

 下ごしらえより、煮る時間の方がかかるし。


「おお~……もうおいしそう!」


「いいや、煮込めば 煮込む ほど うまく なる」


「カレーといっしょってこと?」


 んーちょっと違うが……まっいいか。


「そうだ」


「じゃあ、またないとね!」


 ミュラの口角が上がった。

 これは相当期待しているな……。


「そう だな。その間、次 いく」


「はいっス!」


 次は、新・コヨミスープだ。

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