第101話
「新・コヨミ スープ。作る」
俺はそう言いつつ、別の鍋を台の上へと置いた。
「新って……コヨミスープを改良っスか?」
「そう だ。ベース そのまま 改良 する」
とはいっても、味を足すのとつみれを少し変えるだけなんだがな。
それでも、だいぶ変わるはずだ。
まずは、乾燥しいたけを器の中に入れて、水を注いで戻す。
ここで重要なのは、この戻し汁を捨てない事だ。
そして、使う魚はヒラメ、ブリ、イワシ。
こっちに戻ってきてミュラが納得いった組み合わせだ。
この3種類を順番にさばいていく。
ヒラメの骨に熱湯をかけて、表面の血、ぬめり、汚れを洗い流す。
洗い流したら、布で水気をしっかり拭き取る。
拭き取ったら網の上に置いて火にかける。
焦げすぎないように気を付けながら、全体に焦げ目がつけば完了だ。
次はメインのスープ。
鍋に水を注ぎ、昆布を入れて火にかける。
沸騰直前になったら、昆布は鍋から取り出す。
焼き色のついたヒラメの骨を鍋に入れて、酒を大さじ2を回し入れ、乾燥しいたけの出汁を全部流し込む。
そして、弱火にして煮ていく。
「ミュラ アク 頼む」
「うん! まかせて!」
鍋の様子はミュラに任せて、俺とコヨミはつみれ作りだ。
ヒラメの身を包丁で細かく叩き、粘りが出てきたところで塩をひとつまみ入れて、粘りが出るまでしっかり混ぜる。
粘り気が出てきたら、酒を小さじ1と水を小さじ1を加えて身がややゆるくなるくらいまで伸ばす。
伸ばせたら片栗粉を小さじ1、みじん切りした白ねぎを大さじ1、すりおろした生姜を少々加えて混ぜればヒラメのつみれの完成。
次はブリのつみれだ。
ブリとアサリを食感が残るように粗く刻み、塩をひとつまみ入れて軽く練り合わせる。
食感が大事なので、練りすぎないように注意だ。
最後はイワシのつみれ。
イワシを粗めに包丁で叩く。
ある程度叩いたら、塩をひとつまみとすりおろした生姜を小さじ1入れて粘り気が出るまで叩く。
イワシ独特の風味を生姜で緩和する……この組み合わせを考えた人はすごいと思う。
「おなべ、いいかんじだよ~」
「おっ」
ミュラの声に、俺は鍋の方へと向かった。
そして、お玉で汁を少しすくい小皿に入れて味を確かめる。
『……うん……うまい。前のコヨミスープが家庭的なら、こっちはまさに食堂の味って感じだな』
出来上がった鍋に白菜を手で裂きながら落とし、戻したしいたけも切って加える。
スプーンでつみれをすくって、鍋に落としていく。
ひと煮立ちさせたら、斜めに切った長ねぎを加えて、最後にマゴ油を数滴垂らせば……。
「……新・コヨミ スープ 完成」
「おお! 新の方もおいしそうっス」
「だね! だね! はやくたべようよ!」
ミュラが器を手にして、スープをすくおうとする。
その瞬間、俺は待ったをかけた。
「まだ。次 いく」
「えっ!? まだたべないの!?」
驚くミュラの声を無視しつつ、俺は次のアクアパッツアに取り掛かった。
作り方は以前とほとんど同じ。
ミニトマト10個、ニンニク1欠、アサリ5個、鯛の切り身。
だが、ちょっと豪勢にするために、今回は玉ねぎとしめじも追加だ。
鯛の切り身に塩をふって、5分くらい置いて水分を抜く。
置いている間に玉ねぎはくし切り……甘さを出すために繊維を断ち切るように切るのが大事。
ニンニクはみじん切りにして、ミニトマトは半分、しめじは石づきの少しの部分を包丁で切り落として小房は指でほぐす。
フライパンに油をひいて熱して、鯛を皮目から中火で焼く。
皮が焼けたら裏返して、両面を焼く。
鯛全体が焼けたら一度身を取り出し、そのまま同じフライパンにニンニクを入れて香り付け。
続けて玉ねぎを加えて、しんなりしてくるまで軽く混ぜる。
さらにしめじを入れて、全体が馴染んだところで取り出しておいた鯛を入れる。
その上からアサリ、ミニトマトを入れて、水を100cc、酒を大さじ2加えて中火にする。
ふつふつとしてきたら、蓋をして弱火で5分ほど蒸す。
最後は塩、こしょうで味を整えて、バターを落とせば……。
「アクアパッツア 完成」
「おお! まえとちがう!」
ミュラが身を乗り出し、目を輝かせた。
「おいしそう~……じゃあさっそく……」
「まだ だ」
「えっ?」
「フルコース 作り まだ続く」
俺がそう言うと、ミュラはプルプルと体を震わせ、顔が真っ赤になっていく。
「ん? どう した?」
まさか、また病気に――。
「ミュラちゃ……」
「もうがまんできない!!」
ミュラの魂の叫びが食堂の中を震わせた。
「はあ?」
「はあ? じゃないよ! いいかげんたべたい! スープとアクアパッツアた~べ~た~い~!」
爆発したミュラが、その場で地団駄を踏みだした。
いやいや……まだ全部完成していないんだぞ。
「フルコース 全部 作って 食べ……」
「やあああだああああああ! たべるもん!」
ああ、駄目だ。
完全に食欲旺盛モードに入っちゃっているよ。
「あ~……ゴブくん……ちょっとくらい良いじゃないっスか? ほら、味見も大事っス」
まぁそうだけど……。
「そうそう! あじみ、だいじだよ! ミュラがおいしいかどうかはんていしないと!」
はぁ……仕方ないな。
「わかった。けど、牛肉の 赤ワイン 煮込み まだ だ。もっと 煮て おいしさ 出す からな」
「え? ……く~……わ……わかった……」
俺たちは作業を一時止め、スープとアクアパッツアを試食した。
ミュラの評価は上々、これなら出しても問題ないだろう。




