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ゴブめし!~ゴブリン料理の隠し味は異世界転生者~  作者: コル
第12章 ミュラ達がんばる!
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第93話

 ナナの誕生日当日。

 俺たちは、朝からケーキ屋の厨房に入っていた。

 店主が気を利かせてくれて、今日1日を臨時休業にしてくれた。

 本当にありがたいことだ。


「よ~し! がんばるぞ~!」


「おう!」


「うん!」


 ミュラ、ターン、カルが気合を入れ、ケーキ作りを始めた。

 俺とコヨミは黙って3人の姿を見つめた。

 さぁ、今日まで練習してきた成果を出す時だぞ。


「よいしょっと」


 ミュラは器を少し寄せて、卵を手に持つ。

 そして、器の角に卵を軽く叩きヒビを入れた。


「む~……」


 器の上で、ゆっくりと……慎重に卵を割り入れた。


「……よしっ!」


 殻が入ることもなく、卵の黄身は綺麗に器に入っている。

 ミュラは続けて、残り2個の卵も入れた。

 最初に比べたら、すごい成長だな。


「よし、できた!」


「じゃあ、次は僕の番だね」


 ミュラと入れ替わりで、泡立て器を持ったカルが器を持った。

 そして、泡立て器を器の中に入れ、かき混ぜ始めた。

 リズムよく、卵も周りに飛び散らない完璧な混ぜ方だ。


「…………こんなもんかな?」


 カルが器を傾け、俺に確認を取って来た。

 卵がなめらかになっているな。

 これなら次にいっても大丈夫だ。


「問題 ない。砂糖 入れる」


「うん」


 カルは砂糖100gを器に入れ、混ぜ始めた。

 砂糖が溶け切ったことを確認し、今度は牛乳150mlを数回に分けて入れ、更にかき混ぜていく。


「……ふぅ……これでいい?」


 もう一度中身を確認し、俺は頷いた。


「よっしゃ! じゃあ俺の出番だな!」


 今度はターンが器を受け取り、小麦粉の袋の口を開けた。

 そして、牛乳同様に小麦粉200gを分けて入れ、泡立て器でかき回し始めた。


『よしよし、うまい事いっているな』


 力と体力がないミュラは混ぜる作業から外し、その作業はカルとターンに任せることにした。

 混ぜる作業は重要、この役割分担はとても大切だ。


「んっ! んっ! ……おっも……いな…………ふぅ……おい、こんなもんでどうだ?」


 ターンが見せてきた生地は、もったりとした塊が出来ていた。

 うん、この状態なら問題ないだろう。

 俺は指先で塩をひとつまみつまんで落とし、そのまま軽く混ぜてから溶かしておいたバターを入れた。


「さっ。混ぜる」


「チッ、気楽に言ってくれるぜ……ふんっ!」


 ターンは器を持ち上げ、必死に泡立て器を回し続けた。



 泡立て器を持ち上げ、生地がゆっくり流れて落ちる状態になれば、型の陶器に流し込む。

 そして、陶器の端を持って、軽く左右に揺らしてならす。


「じゃあ、コヨミさん。窯に」


「了解っス」


 コヨミが石窯の前に立ち、扉を開けて陶器をゆっくり中へと差し込んだ。


「焼く 間、クリーム 作る」


「うん!」


 ミュラは壺を持ち上げ、中から生クリームを器へと注いだ。

 そして氷魔法を使い、器と生クリームを冷やしていく。

 冷たい状態でかき混ぜるのが、おいしいクリームを作る理想の形だ。

 そして、これが出来るのはミュラだけ……頑張ってもらわないとな。


「ミュラ、頑張る」


「うん! がんばる!」


 ミュラは必死に生クリームを泡立て器で混ぜる。

 クリームにとろみが出てから、砂糖を入れて、またかき混ぜる。

 泡立て器を持ち上げ、クリームに角が立てば出来上がりだ。


「……できた……ふぃ~……つかれたよ~……」


 ミュラは両手をブンブン振り、うなだれた。


「そろそろ、生地焼きあがったんじゃないか?」


「あ、はいっス」


 ケーキ屋の店主の言葉に、コヨミが窯の扉を開け、陶器を外へと出した。


「あちちちちっ!」


 コヨミは熱がりながら、陶器を台の上に置いた。

 その瞬間、全員の目が陶器に集中する。

 その瞬間、誰も言葉を出さなかった。


「…………これ……ふくらんでいる……よね?」


「……と、思うけどよ……」


「……ど、どうなの?」


 不安そうな顔をして俺を見つめるミュラ、ターン、カルの3人。

 俺は陶器の縁に沿って刃を入れて外し、陶器を逆さまに向けて台の上に乗せた。

 そして、陶器を持ち上げると……。


「わああああ!」


「おお……」


「いい匂いだ!」


 台の上には綺麗に焼けた生地が崩れずに乗っていた。

 おいしそうな匂いが辺りを包む。


「コヨミさん、半分 切って ほしい」


「お任せっス」


 コヨミは包丁を手に取って、横に刃を当ててスッと切る。

 切れた生地を上下に分けると、綺麗な断面が顔を出した。


「クリーム 塗る」


 出来たクリームの器を生地の横に置いた。

 すると、3人はすぐさまパレットナイフを手に持った。


「まってました!」


「よっしゃ!」


「任せて!」


 ミュラはパレットナイフでクリームをすくって、押し広げるように塗っていく。

 それに続いてターンとカルも塗っていった。

 クリームを塗り終わり、切っておいた果物を並べた後に、上に生地をのせる。


「つぎ 上」


「「「お~!」」」


 先ほど同様に、3人がクリームを塗り始める。


「ここをこうして~」


「いやいや、塗りすぎだろ!」


「ちょっと2人共! 僕の塗るところがなくなっちゃうよ!」


 3人が好き勝手にクリームを塗るせいで、歪なケーキが完成していく。

 かなり雑だし、見栄えもひどい……。

 だが、これはこれで手作り感は出ているから……ありではある……かな。


 上のクリームも塗り終わり、最後の仕上げだ。

 ミュラ、ターン、カルが頑張って集めたお金。

 そのお金で買った、大きなイチゴをケーキの真ん中に置く。


「ケーキ、できた~!」


「おおっ、オレたちで作ったケーキだ!」


「これなら喜んでくれるよね!」


 3人が喜びの声を上げ、俺たちは完成を祝い拍手をする。

 正直、不安なところもあったが立派にやり遂げたな。


「これ ナナの家 もってく」


「うん! すぐにもっていこう!」


 ミュラが氷の箱を作り、その中にケーキを入れた。

 そして、氷の箱を布で包み、ターンが持ち上げる。


「ターン、落とさないでね」


「落とすわけないだろ、任せとけ」


「それじゃあ、レッツゴー!」


 ミュラが先に店から飛び出し、ターンとカルがその後ろを追いかけて出ていく。


「あっ! みんな、待つっスよ! おじさん、ありがとうございますっス!」


「ありが とう」


 俺とコヨミは店主に頭を下げ、お礼の言葉を言うと店主はニコリとほほ笑んだ。


「ああ、俺も面白いもの見せてもらったよ。ほれ、早く追いかけないと子供たちが行っちまうぞ」


 店主の言葉にもう一度頭を下げ、俺たちはケーキ屋から外へと出た。


「ゴブ~! おねえちゃん! はやくはやく~!」


 ミュラが手を振って、大きな声を上げた。

 先に出て行ったのはお前だろうに……まったく。

 俺たちは3人の後を追いかけ、ナナの家へと向かった。

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