第119話
ミュラにスープを作ったときはダイコン、ジャガイモ、豚の干し肉の3種類の具しかなかった。
けど……今回は全然違うぞ。
追加するのはニンジン、玉ねぎ、キャベツ、ネギだ。
キャベツの葉を剥がし、2cmほどの幅に切り分ける。
続けて玉ねぎもキャベツと同じくらいの幅に切りそろえる。
次にニンジンの皮を剥いて、食べやすい大きさに乱切りにする。
ジャガイモも皮を剥いてから乱切りにして、水を張った器へと入れていく。
そして、ザルへ移して水気をしっかり切る。
ダイコンを手に取り、皮を剥いてから半分に割り、いちょう切りにしていく。
ネギを小口切りにする。
最後は、豚の干し肉を2cmほどの幅に切り分ける。
『よし……これで具の準備はいいな』
本来なら、これでスープ作りに入るが、今日はまだ終わらない。
俺は昨日残しておいた手羽の先を取り出し、水で洗ってから布で水気を拭き取った。
そして、包丁で手羽の先を半分に切る。
切った手羽の先を鍋へと移して、水を400ml、酒を大さじ1杯、薄く切った生姜を2枚入れて鍋をかまどの上に置いて、強火にかける。
沸騰したら、表面に出てきたアクをちゃんと取り除く。
後は蓋をしてから、弱火で15分ほど煮る。
その間に、スープ作りだ。
別の鍋をかまどの上に置いて、バターを一欠けら入れる。
中火にしてバターが溶けたところに豚の干し肉を入れ、木べらで混ぜながら玉ねぎとニンジンも加える。
玉ねぎがしんなりになるまで炒めたら、ネギ以外の野菜を全部入れて炒める。
鍋に蓋をして、弱火で2分蒸し焼きにする。
野菜全体に火が通ったら、鍋に水を400ml入れる。
『さて、出汁の方は…………よし、いい感じだな』
鶏の出汁を効かせるなら、もっと長く煮込まないといけない。
しかし、今回の主役はあくまで塩。
ここで鳥の出汁の味が強すぎると、それは別の塩スープになってしまう。
まぁ、正直なところそっちの方が旨味が出てうまいが……それだと、ミュラが初めて食べた時の塩スープとは到底言えない。
俺は、おたまで鶏の出汁をすくいとって鍋へと入れた。
『これでよし、後はジャガイモとニンジンが柔らかくなるまで煮込んで、塩で味を調えれば完成だな……次は……魚の下ごしらえをするか』
俺はアユを手に持ち、まな板の上に置いた。
しかし、胸ビレの部分がカエルの前足の様な形で、水かきまで付いている魚がアユだとは、当時思いもしなかったな。
腹をこちらに向けて、腹部分に包丁を入れこみ、刃先を肛門まで通して、腹を開く。
開いた腹に指を入れて内臓が傷つかないようにゆっくりとかき出す。
本来なら、この内臓の苦みが旨味になるんだな……。
けど、ミュラや他の子供達が食べるとなるとやっぱり取った方がいい。
俺はそのまま血合いへ指先を添えて軽くこそげ、水の中でアユの中をきれいにすると、布へ包んで水気を丁寧に拭き取り、台へと戻した。
木の串を1本手に取り、口から差し込んで中骨を縫うように少しずつ角度を変えながら通していく。
アユの体がS字の形になれば串打ちの完了。
ひれ……というか前足と尾へ塩をつけ、後は全体にまんべんなく塩をふればアユの下ごしらえは終わり。
次はアジだ。
こっちは、目玉が口の下についているから一瞬どっちが上かわからなくなるんだよな。
尾の付け根に包丁の刃を当て、両側のぜいごを薄く削ぎ取る。
目玉が口の下についているところ以外は、普通のアジと一緒だからぜいご取りは大事。
包丁の刃で全体の鱗を落とし、そのまま頭の付け根へ刃を入れてえらを外す。
そして、アユ同様に腹を開いて内臓を丁寧に取り出す。
水の中に入れて、腹の中まで指先で洗ってから布で包んで水気を取ってからまな板の上に乗せる。
次に両面へ薄く塩を振って、少しだけ時間を置く。
こうすれば臭みを取りつつ、身を締めることができる。
『そろそろ、いいな?』
表面へ浮いた水分ごと塩をさっと水で洗い流し、もう一度布で包んで水気を拭き取る。
木の串を手に持って、目の後ろから背中側へ差し込み、背骨を縫うように通していく。
アユと同じようにS字の形になれば串打ちの完了。
こちらも、ひれと尾へ塩をつけてから、全体にまんべんなく塩をふればアジの下ごしらえは終わりだ。
『これでよし』
俺は魚を盆へ並べてコヨミさんに声をかけた。
「コヨミさん」
「ん? なんっスか?」
コヨミが俺の声に振りかえる。
「この アユとアジ 焼いて ほしい」
「ウチがっスか?」
「ミュラ、コヨミさん 焼いたの 食べたい だろ?」
俺の言葉に、ミュラが元気よく頷いた。
「うん! それがたべたい! だって、ミュラたちはたべられなかったもん」
俺らの姿を見た瞬間、一気に食べたものな。
「あ~……なるほど……わかったっス。焼き係はウチに任せるっスよ」
コヨミはそう言って盆を受け取ると、裏庭へ向かおうとした。
その瞬間、食堂の扉が開いた。
「お邪魔しま~すなの」
「来てやったぞー」
「お、もういい匂いがするね」
食堂に入って来たのはターン、カル、ナナ、その後ろからノルンとヒヅキも続いて入って来た。
「おっ、ちょうどいいところに来たっス」
コヨミが足を止め、魚を抱えたまま笑う。
「みんな、今から魚を焼くっス。火起こしの手伝ってほしいっスよ」
「あ、うん! やるやる!」
ナナが真っ先に手を挙げた。
「しょうがねぇな、オレが火を起こしてやるよ」
ターンもナナの後に続く。
「じゃあ、僕も!」
カルも手をあげ、コヨミは嬉しそうに頷く。
「じゃあ、裏庭に出るっスよ」
「「「お~!」」」
3人が元気よく返事をすると、コヨミと一緒に裏庭へと出て行った。
「さて、では私たちはミュラちゃんの手伝いをしますか」
ヒヅキがそう言うと、ノルンが頷く。
「そうですね。ミュラちゃん、私たちはどうすればいいですか?」
「あ、えとね、じゃあ……」
ミュラが指示を出し、ヒヅキとノルンが動き始める。
飾り付けが佳境に入った。
魚はコヨミたちに任せた。
俺もメインディッシュの仕上げと行こうじゃないか。




