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【完結】ゴブめし!~ゴブリン料理の隠し味は異世界転生者~  作者: コル
第14章 思い出の味

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第111話

 料理長にプリンの作り方を教え、俺たちは屋敷の外へと出た。

 すると、ノルンが前に出て俺たちに頭を下げた。


「本当にありがとうございました……おかげで、ギルドのメンツは守られました!」


「気に しない」


「そうっスよ」


 謙虚な俺たちに対し、ミュラが胸を張って口を開く。


「ミュラのおかげだね!」


 お前は何もしていないだろうと、ツッコみかけたがやめた。

 本来、冷蔵庫で2~3時間は冷やさないといけない物ばかり作った。

 料理そのものを作ったわけじゃないが、氷魔法はすごく助かったものな。

 コヨミもノルンも同じように思ったのか、苦笑しつつも何も言わない。


「……ん~!」


 コヨミが腕を上げて、背を伸ばした。


「とりあえず、これで一段落っスね。さっさと着替えて、食堂に戻るっスか」




 港町に戻った俺たちは、服屋へと向かい着替えることにした。

 しかし、服屋に入ってもミュラは一向に着替えようとしなかった。


「どうしたっスか? ミュラちゃん」


 不思議に思ったコヨミがミュラに声をかける。

 ミュラはモジモジしながら俯き、上目遣いに答えた。


「……これほしい……」


 そう言って、ドレスのスカートを少し持ち上げる。

 なるほど、着ているドレスが気に入ったのか。


「へ? えっ! そ、それは……ちょっと……」


 ミュラの言葉に何やら焦るノルン。

 そんなノルンにコヨミが不思議そうに首を傾げた。


「別に、いいじゃないっスか。そのまま買い取――」


 言い切る前に、ノルンがすかさずコヨミの腕を掴み、傍へと引き寄せた。

 そしてコヨミの耳元へ顔を寄せて、何かを小さく伝える。


「――っ!?」


 その瞬間、コヨミが目を見開き口があんぐりと開いた。

 コヨミの顔を見ただけで、ノルンが何を言ったのかよくわかるな。

 そんなに高い服を俺たちは着ていたのか……まぁ男爵の屋敷に行くんだし、それはそうか。


「……」


 コヨミはしばらく視線を泳がせ、それから無理やり口角を引き上げて笑顔を作り、ミュラに視線を合わせた。


「コヨミおねえちゃん?」


「さっ、ミュラちゃん、着替えるっスよ~」


「え~……でも、このドレス……」


「こ、これ以上に可愛く、ミュラちゃんがすごく似合うドレスが見つかるっスよ! ささっ! 汚れないうちに着替えるっスよ~!」


「え? えええ!?」


 コヨミはミュラの背中を押して奥へと引っ込んでしまった。

 ノルンも、慌ててその後を追いかけて行った。


『……ミュラには申し訳ないが、こればかりは擁護できんな……』


 俺も苦笑をしつつ、着替えるために奥へと向かった。


 着替えた俺たちは、服屋の外へと出た。

 ミュラは不貞腐れたように頬を膨らませている。


「では私は、このままギルド長へ報告に向かいますね。本当に、ありがとうございました」


 ノルンがペコリと頭を下げ、足早に去っていった。


「さて、俺たちも 帰る」


「そ、そうっスね~」


「む~……ほしかったぁ~」


 コヨミは、またミュラの背中を押しつつ歩き出した。

 俺はその後をのんびりと着いて行った。




 食堂の扉を開けて中へ入ると、コヨミは椅子の背に手をかけて引き寄せて腰を下ろした。


「ふぅ~……今日は疲れたっスね……このまま、臨時休業でいいっスかね?」


 正直、開けたところで客は来ないから、休業と変わらんと思うのだが……まぁ気持ちの問題かな。

 休業の方が気が楽だ。


「そう だな」


「あ、そうだ! にわとりのエサあげてない! きょうは、ミュラがとうばんなのに!」


 ミュラが慌てて裏庭へと走っていった。


 この日は、何気ないやり取りや会話を交わしているうちに、時間は流れ、気が付けば夕方になっていた。

 すると、食堂の扉からノック音が聞こえてきた。

 コヨミが確認しに行くと、入り口の前にはヒヅキが立っていた。


「あ、ヒヅキおねえちゃん! おひさしぶり~!」


 ヒヅキが食堂に入ってくると、ミュラは嬉しそうに両手を振った。


「さっき屋敷であったわよ?」


「でも、おはなししてないもん。だから、おひさしぶり!」


「ふふ、そうね。お久しぶりです」


 ヒヅキがミュラに軽く手を振り、椅子へと座った。


「おつかれっス」


 コヨミが作り置きしてあったお茶を、テーブルの上に置いた。


「ありがとう、姉さん」


「ヒヅキ、今日は……泊っていくっスよね?」


 コヨミの言葉にヒヅキが頷く。


「うん、いいよね?」


「……当たり前っスよ」


「え? ヒヅキおねえちゃん、とまっていくの? わ~い!」


 ミュラは笑顔で喜んだが、俺とコヨミはうまく笑顔を作れなかった。

 そのまま4人で食事をし、いつの間にか夜になっていた。

 楽しく会話をしていたものの、ミュラが大きな欠伸をして目をこするのを見て、今日はお開きとなった。

 それぞれ、部屋へと入り、俺は寝床には入らず窓の外を見つめていた。

 しばらくすると、ノックが聞こえた。


「入るっスよ?」


「……ああ」


 扉が開き、コヨミとヒヅキが部屋に入ってきて、そのまま向かいに腰を下ろした。

 そして、ヒヅキが口を開く。


「……掴めました。身売買を行っている連中の所在が……」


 言葉を聞いた瞬間、俺は鳥肌が立った。

 コヨミも自然と姿勢を正す。


「やっぱり、前々からマークしていた裏組織でした。しかも裏にいるのは……多数の貴族だったの……」


「え? じゃあ、もしかしてセドリック様が!?」


「あ、違う違う!」


 コヨミの言葉に、ヒヅキが両手を振って否定する。


「セドリック様は、協力してもらっている側よ。今日来たのは、情報共有と、組織を潰すために兵を動かしてもらうためなの」


「兵を?」


「そう……近くの領地にも、関わってる者がいたの……あのリー婦人よ……」


 その名前を聞いた瞬間、コヨミが大きなため息をつき、呆れたように天井を見上げた。


「はああああ~……あのリー婦人っスか……驚きもしないっスね。むしろ、やっぱりかっ! ってなってるっス」


 誰だそれ。

 聞いたことないぞ。


「誰?」


 俺の質問に、コヨミが肩をすくめて答えた。


「金に汚くて、庶民を見下している事で有名っスよ……巷じゃあ、【強欲傲慢の魔女】って呼ばれてるっス」


 すごい二つ名だな。

 それを聞いただけで、相当嫌われ者なのがよくわかる。


「で、人身売買の奴らが、この地方に来ていたってことは……ミュラちゃんを、買おうとしていた可能性が高いわけです」


 その一言を聞いた瞬間、俺は無意識に拳を握り、そのまま床へ叩きつけた。


「ちょ!」


「ゴブ君!」


「あっ!」


 俺は慌てて、床から拳を引っ込めた。

 すぐに顔を上げ、隣の壁へ視線を向けて、耳を澄ませる。


「「「……」」」


 3人の沈黙。

 隣の部屋からは何も聞こえない。

 数秒そのまま固まり、コヨミが口を開いた。


「……起きてない……ようっスね」


 ヒヅキも肩の力を抜き、小さく息を吐く。


「……すまない……」


「いいっスよ。ウチも同じ事しかけちゃったっスからね」


 コヨミがやると、今頃床に穴が開いてミュラは確実に起きてきただろうな。


「うん、怒るのは当然だと思うわ」


 ヒヅキは姿勢を正し、改めて言葉を続けた。


「そして、今王国が動き出した。組織を潰し、奴隷を解放するために……」


 その言葉を聞き、俺はヒヅキへと視線を向ける。


「ミュラの 両親 は……」


「そればかりは、現状なんとも……でも、見つけた場合、すぐにここに駆けつける! 約束するわ」


 ヒヅキはまっすぐ俺の目を見る。

 俺は信じて頷くしかなかった。


「……頼む」


 短く言って、頭を下げた。


「任せてください」


 ヒヅキの言葉が、とても力強かった。

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