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【完結】ゴブめし!~ゴブリン料理の隠し味は異世界転生者~  作者: コル
第14章 思い出の味

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第108話

「またゼリーの時と違いますね……」


 ノルンが杏仁豆腐を置いた皿を持ち上げて、少し左右にする。

 すると杏仁豆腐はプルプルと小刻みに揺れる。


「ああ、これ 合ってると いいが……」


「そこは、セドリック様に確かめてもらうしかないっスね」


「そうですね……すみません、セドリック様とお取り次ぎをお願いできますか?」


「わかりました。確認してきますので、少しお待ちください」


 メイドさんがペコリと頭を下げ、厨房から出て行った。



 しばらくすると、メイドさんが戻ってきていつでも来ていいと返事をもらった。

 俺たちは杏仁豆腐をトレイに乗せて、厨房から廊下へと出た。

 そして、昨日と同じ客室前までメイドさんに案内された。


「旦那様、連れてまいりました」


「ああ、入ってくれ」


「失礼します」


 セドリック男爵の言葉のあと、メイドさんが扉を開ける。

 部屋の中に入ると、昨日と同じ様に中央の椅子に座るセドリック男爵が俺たちに視線を向けた。


「ほほう、次はそれかね」


「はい」


 ノルンが中央に置かれたテーブルへ向かって進み、杏仁豆腐をその上に置いた。


「……では、味見をさせてもらうよ」


 セドリック男爵はスプーンを手に持ち、杏仁豆腐をすくい上げる。

 そして、パクリと口の中へと入れた。


「…………ふむ、うまい…………だが……」


 セドリックは、そのままスプーンを皿に置いた。

 ああ……このパターンは……。


「……この味では、ないな」


 やっぱりか。

 しかし……もしかしたら……。


「確認。味 全然 違う? それとも 近い?」


 近ければ、杏仁を使わなければならない。

 違うなら、杏仁豆腐ではないという事になる。

 さて、どっちだ。


「む? 味かい? 全然違うな……それと……もっと、やわらかく……これより、なめらかだった気がする」


 もっと柔らかくて、なめらか……か。

 となると、ゼラチン主体ではないのだろうか。


『……いや、そんな決めつけは駄目だ』


 決めつけると、視野が狭くなってしまって正解から離れてしまう可能性がある。

 よし、ならば……アレを作って確定させようじゃないか。


「ノルンさん 作り 直したい」


「え? 作り直す? あ、えと、それは今日ですか?」


「材料 買えば すぐ 作れる。どう?」


「ちょ、ちょっと待ってくださいね」


 ノルンが慌てた様子でセドリック男爵の方を向いた。


「あの、セドリック様……材料を買い、また別のものをお作りしてもよろしいでしょうか?」


「ふははは! 話は、ここまで聞こえていたよ。まだ候補があるとな……良いぞ、今日は1日屋敷にいるからな。好きにするといい」


「ありがとうございます!」


 ノルンが頭を下げ、俺たちもそのあとすぐに頭を下げた。

 そして、客室から出た俺たちは、急いで屋敷から外へと出た。


「早く いく」


 俺が走り出すと、ミュラとコヨミがアタフタとする。


「スカートがながすぎて、はしれないよ~!」


「ウチもっスよ……ノルン、破っても――」


「駄目に決まっているでしょう! ああ、もう! 2人とも私の背中に乗ってください!」


「え? 俺 は?」


「ゴブ君は自力で走ってください!」


 デスヨネー。




 着替えてもまた屋敷に行くため、そのままの恰好で市場へと向かった。

 コヨミは恥ずかしそうにしているが、ミュラの方は見せびらかすかのように小躍りをしていた。


 必要な物は卵、牛乳、生クリーム。

 ここは時間節約のために、二手に分かれた方がよさそうだな。


「二手 分かれる。ミュラ、ノルンさん 牧場で 牛乳 買って 来て ほしい」


「わかりました、牛乳ですね!」


「まかせて~」


 コヨミを下ろし、ミュラをのせたノルンが牧場の方へと走っていった。


「ウチらは、何を買うっスか?」


「卵、あと 生クリーム」


 並ぶ露店を流し見しながら、まずは卵が並んでいる露店の前で足を止める。


「卵 二つ!」


「お金はこれっス!」


 会計を手短に済ませ、俺たちはケーキ屋へと向かった。

 生クリームを手に入れられる場所はそこしかないからな。



 前にお世話になったケーキ屋の前に着いた俺たちは早速中へと入った。


「いらっしゃ……って、2人共どうしたんだ? そんな格好して……パーティーでもあるのかい?」


「あはは……これにはちょっと訳ありでして……そ、それより生クリームを少し分けてほしいっス」


「生クリームをかい? 別に構わないが……」


 店主は生クリームを瓶へと移し、コヨミに手渡した。


「ありがとうございますっス。えと、お代は……」


「いいよいいよ。この前のレシピの件もあるし、あげるよ」


「ありがとうございますっス!」


 コヨミが頭を下げ、その後ろで俺もぺこりと頭を下げた。


 その後、港町の入り口でミュラとノルンと合流。

 材料がそろい、屋敷へと戻った。



「……ん? おおう! みなさん、早いお戻りですね」


 庭の手入れをしていたメイドさんが、俺たちの姿を見て驚きの声を上げた。


「厨房、使えますか?」


 ノルンの質問に、メイドさんが頷く。


「あ、はい。大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」


 メイドさんに案内され、俺たちはまた厨房へと足を踏み入れた。

 買ってきた卵、牛乳、生クリームを台の上に置き、作業開始。


 まずは、今朝で余ったスライムの体液の粉……ゼラチンを水の中に入れてふやかす。


 器を2つ用意して、黄身と白身を分けて卵を割る。

 使うのは黄身の方のみだ。

 そこに、砂糖を40g入れて、泡立て器でかき混ぜる。

 白っぽくふんわりするまでしっかりと混ぜれば卵液の完成だ。

 よし、次の作業。


 鍋に牛乳を入れて、かまどの上に置く。

 弱火で熱して、ふつふつとするまで温める。

 ふつふつとしてきたら、卵液を少しずつ流し入れ、その都度かき混ぜる。

 いっぺんに卵液を入れてしまうと、温度差で固まってしまうから要注意だ。


 混ざったら一度濾して、そのまま火に戻す。

 弱火で混ぜながら、とろみがつくまで加熱する。

 とろみがついたら火からおろして、ゼラチンを混ぜる。


 鍋より大きい器を用意して、そこに水を入れる。


「ミュラ、この中、小さい 氷 たくさん 入れる」


「うん、まかせて」


 ミュラは水の表面を凍らせ、それを麺棒でたたき割った。

 なんか、俺の思った作り方じゃないが……まぁいいか。


 氷水に、鍋底を当てて冷やしながら混ぜる。

 さらにとろみがつけば、氷水から鍋を外して、生クリームを加えて混ぜる。


『これでよし、後は……』


 混ぜた液を、小さい器に流し入れる。


「ミュラ、これ 冷やす」


「おお、きょうはみゅらのでばんおおいね! まっかせて~」


 ミュラは嬉しそうに、すぐに器へと手をかざした。

 器に入った液がどんどん固まっていく。

 完全に固まれば……。


「出来た、ババロア だ」


 しかし、多分これでもないだろう。

 でも、これで答えにたどり着けるはずだ。

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