オルワールの侵攻
リック達が遺跡街に戻るちょっと前の話です
遺跡街管理組合の応接室ではミエスとマンダム、そしてオルワール貴族の使者が対談中であった。
「そのような要件は受け入れられません!」
遺跡街のミエスは大きな声を上げ、オルワール使者の要求を拒否する。
「我がオルワールの提案を全て無視したお前達にはそれ相応の対応をさせてもらう」
「そのような話は一度リーゼント王を通された方が良いと何度も言わせていただきましたし、書面でもそのように回答しております」
「全くの平行線のようだな、バカな選択をしたと後悔させてやる」
オルワールから来た使者の貴族はそのようなセリフを残し応接室から出て行く。
「なぜこの世界の人は人の話を全く聞かないの?やっぱり貴族社会だからなの?」
ミエス達は半ば脅迫のようなオルワールの提案を全て無視し、そのたびに嫌がらせのような事を何度もされていた。
流通面はリック達が立ち上げた運送会社のおかげで盗賊等の被害を受ける件数も劇的に減少したのだが、それでも続く嫌がらせのような妨害活動が何処かの組織によって行われ続けている。
リーゼント王の管轄する地域に応援や対策を依頼した事もあったのだが、王都からの返答もこれと言って効果があるような対策、提案もされず現在の状態になっている。
「王都側から見てもこの街の存在は異常なので静観していると言う感じでしょうか?」
「ああ、歴史的背景もあるから下手に手を出せないのだろう」
ミエスとマンダムは応接室で、この遺跡街が置かれている特殊な状況と環境に頭を悩ましていた。
ミエス達はあらゆる文献や法律の本を参考に遺跡街がどんな状態なのかを調べたが、かつて不死王と呼ばれたエルダーリッチに支配されて、明確記録に残っている2000年の間に何度となく戦闘が繰り返されていた。
エルダーリッチ支配初期の頃の文献はほとんど残っておらず、おそらく2000年以上前から、支配され、この地がどんな理由でエルダーリッチの支配下になった経緯は不明である。
しかし王や近隣領主が代替わりする頃になると戦闘を始めその度に撃退されを繰り返し、約1000年前に不可侵条約のような物が結ばれるのだが、この辺の表記も曖昧になっていたりする。
曖昧な状況から、その辺の事情を知らない新し王や代替わりした領主が忘れた頃にイザコザを起こしていたようだ。
ただ、エルダーリッチ自体は戦力差が大きすぎる等の理由から特に気にする事が無かったようで今まで大事になっていないという流れだ。
今回は、あまりその辺の事情を知らないオルワール領主がエルダーリッチの支配が外れた今になり無茶な要求を出してきたと言う感じになる。
「ミリアさんが無視を続けろと言っていましたが、そろそろマズイかもしれませんね」
そんな時に組合員から連絡が入る
「リック運送社からの報告です」
リック達が立ち上げた運送会社は現在多方面に物資や人員の運送を行っている一企業になり、現場の状況が正確に、しかも従業員達の特有の裏事情から、情報の整合性が取れている為信頼できる情報が集まっている。
連絡の内容は驚くべき内容だった
「オルワール領から5000の兵が出発ですって!?」
ついにオルワールが武力行使に出るようです。
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「ふぅやっと帰って来たな。我がホーム街よ~」
オーガ国の一件もあったけど、あの後俺達のパーティは「どうせここまで来たのだから少しLVアップしていこうと」いつものノリで戦闘を始めた。
ワイバーン等の空飛ぶモンスターも対空攻撃は主にアリシアさんとエリアが担当し狙撃や遠距離魔法で落ちて来た所をトニーやマイがトドメを刺す。
もちろん新しく加わったキャノも同じだが、パーティメンバーとの連携を取る為の慣れの魔獣討伐と意味合いが強い。
イオス王都付近の魔獣は全体的にLV30越えが普通で住人達もみんな強かったし、イオス王都の先にはピクシスという海上城塞都市があるようだったがLV40が推奨との事でイオス王都付近でのレベル上げとなる。
イオスさんの話だと人間族は死線をいくら潜ろうともそんなに早くはレべうが上がらないハズだと説明されたが、戦闘回数を重ねるうちに、どんどん効率よく魔獣を狩る事ができるようになっていた。
多分みんな確実にレベルアップしていると思う。
LV40オーバのリーザさんって何なのだろうと少し疑問を感じたけど、余計な事は考えない事にする。
久しぶりの遺跡街だが一段とピリピリしていた。
ミートバードの串焼きを売っていたおばちゃんが居たので串焼きを買うついでに聞いてみる事にする。
「オバチャーン久しぶり!」
「おう、あんたらかい暫く見なかったけど元気かい!?」
「見ての通りだよ。串焼き7本出来るかい?」
「べっぴんさんが一人増えたねぇ!お兄さん人気者かい?」
おばちゃんはキャノの事を知らないみたい。
まぁ街の人までは覚えてないだろうけど。
「ところでおばちゃん、街の中がピリピリしているけどどうしたの?」
「詳しくは知らないけど、オルワールって所から兵隊が来るんだってよ。冒険者に聞いた話だから噂だと願いたいけど、みんなこんな調子なのさ!」
マジかよ!どーすんのよ。
おばちゃんから串焼きを受け取りとりあえず、詳しい情報を得る為に冒険者組合の方に顔を出す事にした。
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冒険者組合に入るといつもと違う緊張感を感じる。
「リーザてめぇ!しばらく見なかったが、なにやってたニャ!、、、ニャ?、これは失礼しましたニャ。そちらの方はキャノーラ様ではニャイですか?」
冒険者組合受付嬢のニーニャさんはリーザさんに対しては口が悪いのだが、キャノを見て態度が一転する。
細かい事を話すと面倒なのでキャノーラ姫は、デンジャーゾーンメンバーとして同行中という事だけ話しておく。
「それなら助かるニャ!LV40越えは戦力ニャ!」
「ニーニャさん事情がわからないです詳しく説明してください」
冒険者組合受付嬢のニーニャは冒険者組合長に話を通し俺達は応接室に案内された。
「そちらに居るのはキャノーラ様のようでこんな汚い所で大変失礼ではありますが」
組合長が挨拶を始めるが、キャノがそれを止める
「組合長、何かの緊急事態のようですし、今は一冒険者としてここに居ますので、気になさらず本題に入って下さい」
「実はオルワール領から兵が出発したようで、数は5000、目的はこの街の奪還との事です」
「ほぉ、あのバカ共が喧嘩をしに来るのじゃな」
組合長は驚いた顔をして、この娘さん「何を言っているの?」という感じでミリアを見ている。
ちなみにミリアの正体を知っている者はこの街でも何人も居ない。
もちろん、この組合長も本当の正体を知らない。
「バカ共はあとどのくらいで到着するのじゃ?」
組合長は「ええ?」と言う感じだったが、俺がフォローする。
「俺達が知りたいので教えて貰えますか?」
「約10日程度で到着すると思われます」
現在冒険者組合の方で街を守ろう会が発足。
あくまで自治権を守ろうと立ち上がっているとの事だが、そんなことを説明されている途中でミエスさんが表れる。
「リックさんお帰りをお待ちしていました」
ミエスさんの話では「街を守ろう会」の人員ではとても対応できないとの事だった。
今回は対人戦になり確実に人同士の殺し合いになるので人殺しが苦手な冒険者は協力を辞退しているとの事だった。
俺自身も俺達が解放?したこの街をオルワールなんかに取られてたまるか!とも思っているが、人殺しとなると一歩引いてしまう。
「リックが悩む必要はないぞ、いざとなれば妾が何とかしようぞ」
ミリアは遺跡街の裏の支配者だ。
「ここが占領されたら地下街にも影響が出るだろう。私は参加するぞ」
リーザさんは地下街から来ているので参戦の意思を告げる
「リック!私も参加するよ!人間らしく生きられるようになった地下街の人に迷惑をかけたくないもん!」
エリアも参戦の意思を示し、アリシアさんトニーやマイも同様だ。
「キャノはどうする?来て早々人間族とのゴタゴタに巻き込まれてしまったけど」
「リック、私の意思はお前と一緒だ。守るべきものを失った時の事を知っていれば答えも出るだろう」
そうだな、俺も地下街の人に色々と助けられた。
こんなつまらない事でその人達を失う訳には行かない!
「リックの覚悟も決まったようじゃな」
オルワールの兵隊と戦う事を決め、デンジャーゾーンフルメンバーの参戦が決定した。
翌日から情報収集戦となるがとにかく時間がない。
ミリアはアンデットカラスを召喚し敵の数や状況を正確に把握していく。
カラスが喋るのかは知らないけどミリアはカラスから得た情報を元に部隊構成等を「街を守る会」の会議室で集計を開始。
「兵隊と言っても野盗崩れのような者達が3割程度じゃの。それに徴兵や徴用された村人が2割、冒険者や傭兵が3割、正規兵が2割と言った所じゃ」
「村人は殺したくないなぁ」
「戦ってみないとわからんのじゃが、おそらく一番貧素な装備が村人じゃ。もちろん偽装もありえるのでその辺は注意が必要じゃがの、面倒なのが魔法士が2割ほど居る事じゃおそらく、過去にアンデット戦があった事を考慮しているのじゃろう」
他の領地から見ればアンデットから解放されていると噂はされているが、2000年はアンデットに支配されていた地域だ。ヒョッコリと出てくる可能性も否定できない訳である。
「父上に頼んでオーガ軍を派遣してもらおうか?」
とキャノから提案もあったのだが、おそらくワイバーン航空便経由でこの情報はオーガ国にも知られていると思われる。
「多分頼まなくても来ると思うよ。あのイオスさんだし」
キャノがいる関係や政治的な面から考えて戦闘に参加するかは不明だが、遺跡街のオーガ国側にオーガ軍部隊を抑止力として配置する可能性もある。
ここで参戦すると人間族VSオーガ族の戦いにまで発展しかねないので「街を守る会」が負けた場合のバックアップとしての意味合いが強いかもしれない。
等と考えていると
「ワイバーン航空隊より連絡がありました。現在オーガ軍2000人が救援物資と共に遺跡街サポートの目的で向かっているとの事です」
はやり対応が無茶苦茶早かった。
俺達が遺跡街に帰って来る前には事前情報を把握していた事になるからイオスさんの決断力が素晴らしく早い事になるが、到着にはしばらくかかると思われる。
「ミエスさん。こちらの戦力はどのくらいなのでしょうか?」
「街を守る会で集められるのは300人程度です。軌道エレベータ防衛隊は外部との戦闘は不参加でミリア様の部隊は・・・」
「状況次第じゃ、何とかなるじゃろう」
ミリアの部隊を参戦させて勝利しても今後どうなるかわからない。元々アンデットが徘徊している街と知っている地下街の人達は問題ないが、地上の人から見ると死の街と間違われるかもれないので、戦いに勝っても人間族とのお付き合いがどうなるかは不明である。
出来ればアンデット主軸による戦いは避けたい所だ。
そんな感じでオルワール兵隊との戦闘準備が進んで行く。
長かったオルワール編がラストに向かいます
誤字報告ありがとうございます。




