オーガ国 王都イオス
キャノが同行していたため人間族の俺達でもほぼフリーパスで入都することが出来た。
茶色のレンガ造りの建物が並びそれらが規則正しく並んでいる。
中世のスペインとかあの辺の建築様式に似ているのかな・・俺は海外旅行とか行った事が無いので詳しくはわからないけど、すべての家のデザインがある程度統一されているので、街並み全体で一体感がある作りになっている。
「同じような作りの建物が多いな」
「目印になりそうなものが少ないから迷いそうだよ!」
トニーとエリアの意見に同意である。非常に美しい街並みなのだが、その辺に置いて行かれた確実に迷うような建物の作り。
「これは、敵に侵入された時に自分の位置をわかりにくくさせる工夫なんだ」
道路なんかも直線のようで直線では無いとか急に狭くなっているとか、ある意味迷路状になっているの大型の魔獣等が侵入しても足止めが出来るようになっているようだ。
俺の居た時代の城下街なんかもそんな仕掛けがしてあって、観光で行くと車が通れなかったりして案外不便な街が多かった事を思い出す
王都だけあり見かける種族はオーガ族が多い。
でも人間種との違いは角の有無程度なのと体格の違い位で日本人がアメリカ等に行った時に感じるアメリカ人のデカさみたいな感じに近い。
もちろんアメリカに行っても日本人と同様の体格の人も居るので、大きな違いは角のみと言った感じだ。
どこから来ているのかは分からないけど獣人種やモンスター系の種族等もかなりの割合で見かける。
「あの亜人たちは商人や傭兵が多いな。この辺の魔獣や魔物はとても強いんだよ」
「人間族側では見ないような種族が多いのだな」
「この辺は魔族領に近いからな」
ええっ!?やっぱりこの世界には魔族と言うのが居るのか?魔獣や魔物という「魔」の付く生き物が居たので「魔族」が居ても不思議では無かったのだが、本当に居るとは思わなかった。
「キャノ、教えて欲しいのだが魔族ってなんだ?」
「そうだな人間族領の方にはほとんど出没しないだろうから教えておくぞ」
詳しい地形については国防上の問題があるので教えて貰えなかったが、イオス王都から2日程の距離の場所に海に面した要塞都市「ピクシス」があり、海を渡ると魔族領に入るとの事だ。
「もしかして魔人族も居るのか?」
「ああ、もちろんいるぞ。見た目はオーガ族とほとんど変わらないから人間族のリック達ではほとんど区別できないと思うぞ?」
「もしかして敵対とかしているのか?」
「敵対している魔族も居るな。人間族でも人間族同士で敵対している所もあるだろ?魔族も同じだよ」
魔族大陸とこっちの大陸で唯一距離が近い場所にあるのがオーガ領なのだと言う。
不思議に思ったがなぜ人間領で魔人を見かけなかったのかを聞くと、人間領と魔族大陸との間には海と大きな山脈がある。
容易に移動できない地形で、おまけにあの辺一体はドラゴン系の種族の生息地なのだとか。
正確な地図が無いので、魔人たちも海を渡って険しい山脈越えを行い、ドラゴンとの戦闘を避けてわざわざ人間族の土地を侵攻するほどのリスクは起こさないようだ。
その間にも荷馬車は王都のまがりくねった道を走り続けている。
防御壁周辺は、冒険者や商人たちの使うの宿泊施設や商業施設が多く存在し、その関係の建物が何ブロックか続くと居住区に切り替わってくる。
水道設備や排水の為の設備も整っており、居住区と言っても清潔に保たれている。
街の中心には大きな川が流れ、それを超えると貴族階級の屋敷が見られるようになる貴族区と呼ばれる場所に入り、その周辺は国の施設が見られるようになる。学校やら図書館、訓練場みたいなのもある。
治安維持系の施設は王都の中に点在していて、その中央司令部みたいなのもここら辺にあるようだ。
さらに中心部に行くと巨大な王城がそびえ建っている状態だ。
「見た感じクレータの再利用みたいだな・・・」
「リック!くれーたって何?」
思わず呟いていた事に少し恥ずかしくなるが、素直なエリアに質問されたので回答しておく。
「クレータって言うのは空から大きな星が落ちて来て出来た大きな穴みたいな物だよ」
「星って落ちてくるの?」
「実際見た事は無いけどな。この街のお椀のような形の地形をクレータって言うんだよ」
「古代魔法にメテオフォールという物があったのじゃ。それの事じゃろ?」
「そんな恐ろしい魔法もあるのか?」
「古代魔法じゃ、気にするな」
ミリアが珍しく話に参加して来たが、言っている事が物騒なのであまりツッコまないようにする。
「さぁ見えたぞ!あそこがリックの王都での拠点だ!」
キャノが指定した方向にあったのは、巨大な屋敷だった。
パーマの街にある拠点の10倍は軽くある。
イオスさん、俺は10人位が滞在できるような拠点が欲しいって言ったよね!!!
強固な外壁で囲まれた屋敷は、守衛の居る門を通り抜ける事で中に入る事を許される。
石作りの5階建てのメインの屋敷の他に、何に使うのかわからない建物が並んでいる。
おしゃれな私立高校をさらにリッチに強固にしたようなレンガと石を使った建築物を想像してもら
えるとわかりやすいかもしれない。
まぁ街並みに統一感があるように、この屋敷自体もオーガ王都フォーマットで建築された物なのだろう。屋敷の入口付近には使用人20名ほどが待機中である。
「ようこそいらっしゃいました。リック様。キャノーラ様」
パーマ街の屋敷でもビビったけど、やっぱり慣れない。
元の世界で温泉旅館なんか行ってお出迎えされるのだって、違う意味でソワソワしたからな。
小市民だよ俺は!
「長旅お疲れ様でした。お荷物はこちらで運びますので、室内にてお待ちください」
メイド達が馬車から荷物を降ろして行く。装備品に関しては預ける訳には行かないので俺達が持っていく事になる。
「キャノ、もっと小さな拠点を想像していたんだけどな・・なんでこの大きさになった?」
「リックが父上に頼んだからだろ。リックは父上の恩人でさらに認められた男だからなこの位が普通だと思うぞ」
「そうなのか?いつ認められるような事をしたのだろう?」
執事に案内され屋敷のリビングルームのような場所に移動中なのだが、執事服の上からでも体つきのわかるように鍛え上げられている人物のようだ。
先ほどのメイドの人達も普通ではない事が一目でわかる人達だった。
「皆さん鍛えられているようで、強そうですね」
「はい、リック様。我々は主人を有事の時に守るために日々鍛錬も行っておりますゆえ、ご安心してお寛ぎ下さい」
という事で執事やメイドさん達も達人の集まりなようだ。
そんなに物騒なのか・・ここは。
執事の人がドアをノックしている
誰か居るのかな?
執事がドアを開け中に案内されると、イオスさんとお姉さま系美女が居た。部屋の中にはほかにも使用人が数人待機ているような状態だ。
「おお、リック!やっと会えたな!」
「ご無沙汰しております。イオスさん」
お姉様系美女がムッとした表情をしているのが気になる
「こんな男が強いのですか?私には信じられないワ」
「母様、それはリック殿に失礼です」
「私は見てないもの!、イオス王が心酔するほどの男に見えないって事よ!」
「イクシよ、リックを見た目で判断するな!俺が認めた男だぞ!」
入った瞬間何故か揉め事に巻き込まれた。
さっき執事の人に「お寛ぎ下さい」と言われたばかりなのに。
「キャノーラよ、あなたもこんな男に負けたというの?騙されているのではないの?」
リーザさんが怒りそうになっているので宥めるが、イクシと呼ばれる女性はそれを見逃さない
「あの女なんなの!私を威嚇するつもりなの!」
俺は安心していたつもりだったので全く威嚇等威圧に関する事は全くしていなかったが、リーザさんに対して怒りの矛先が向いてしまう。
「すいません、事情が良く見えないのですが、お邪魔のようなら我々は引き上げます」
「そうして頂戴。あなたの事なんか私は全く認めませんからね!」
「じゃ、イオスさんそう言う事らしいので、帰らせてもらいますね」
「「ちょっとまて!」」
イオスさんとキャノが引き留める。
まさかこんなにあっさり帰ると言い出すとは思わなかぅたのだろう。
いや、来て早々文句言われたこっちも気分悪いし、屋敷をくれると言われても、まさかこんなにデカイの貰っても困るから、普通帰るよ。
「母様、リック殿に謝って下さい!私も困ります!」
「なによ!私はキャノーラの事を思って言っているのよ!、あんな弱そうな男の事なんて認められないわ!」
なんか事情がおかしい感じがする。
すげぇ嫌な予感がする。
今「キャノーラの事を思って」って言わなかったか?
「イオスさん、日を改めさせて貰っても良いでしょうか?後々ご挨拶に伺うような感じでも良いと思いまして」
何故か、キャノはビックリしたような表情をして顔が真っ赤になって行く
「リック、キャノーラから話は聞いていたのか!なら早い方が良いではないか!」
「あなた!私は絶対に認めませんよ!こんな男!!!」
キャノからは何の話もされていない。
ただ、この場に居る事と、この屋敷を貰う事は絶対にヤバイと俺の第6感がビンビンに警告音を響かせている。
「キャノはリックの事が好きなんだよね!」
パリーンと俺の中で何かがブッ壊れる音がする。エリアちゃんこういう時はお口チャックだよ。多分もう止まらないよこの人達。
「キィイイイイ!!信じられないわ!こんな弱そうですぐ死にそうな人間族を選んだの!?そんなにまで言うなら証明して頂戴!」
「いやだから俺は帰りますよ」
「あなた逃げるのね!」
「いい加減にしないか!イクシ!!!」
怒鳴り声が響き渡る。凄い怖い顔をしているイオスさん。部屋に居る使用人達は完全に委縮してしまい顔を上げようともしない状態だ。
「あなたがいくら怒ろうとも私は認められないのです!」
この奥さんも凄い強気だな・・・強さが絶対の国の女王だけの事はある。
「母様!リック殿や私たちの話も少しは聞いてください!」
「キャノーラ!貴方私に盾突くつもりなの!」
次の瞬間にパパァーン!とイクシの平手が炸裂する。
これはこれでマズイなと思った俺は、メンドクサイけど事態を止める事にしようと思う。同時に俺も窮地に落とされるかもしれない・・・本当は逃げたいよ。
「イクシ様、逃げるなとか言われているリックです。デンジャーゾーンというパーティリーダーをしています」
イクシからは全く相手にされていない感じだ。その辺の野良犬か何かを見ているような目つきだった。
「俺達の事でキャノに手を上げるのは間違っていると思います。その行為謝罪して頂けるなら、逃げずに証明とやらをしましょう」
「フン!丁度良いわ!山脈地帯から村近くまで降りて来たはぐれドラゴンが居たわよね!、それを討伐しなさい!」
「「おい!ちょっと待て!」」
即座に反応したのはイオスさんとリーザさん
「人里の方までドラゴンが来ているのか!」
リーザさんが汗水流しなら言っている
「ドラゴンは人間族では無理だ!報告ではLV50と聞いているぞ!」
「じゃあ、あなた達も加勢すればよいじゃない!、どうせ人間族なんか巻き込まれて死ぬだけだわ!」
イクシさんはどうやら俺達を事故に巻き込ませて殺す?つもりらしいようだ。
ひでぇな。
やっぱりやめて帰るか?
「リック、話を聞いてしまった以上Aランク冒険者の私としては討伐に参加しなければならない。これは冒険者組合のルールなのだ。それにはぐれドラゴンを無視する事も出来ない。すまん」
「リーザさんが行くなら俺も行きますよ。あなただけを危険な所に行かせる訳には行かないです」
「私も行くよ!」
「私にもお手伝いできる事があると思います」
もちろんトニーとマイも同意する。
ミリアは悩んでいた。
彼女はアンデットやゴースト系の召喚を専門としているのでいかに強力なモンスターでもでもおおっぴらに召喚すると後々トラブルになるからだ。
「久しぶりに魔導士時代を思い出すかの・・・」
小さく呟いていたので、何を言っているのか俺には良く聞こえなかったが、彼女も参加してくれるようだ。
こんな感じで俺達は初ドラゴン討伐戦に参加する事になる




