爆走!馬車野郎
始めに。
今回の話はパロディ要素がかなり強いのであらかじめご了承ください。
「よし!計量OKだ!準備はいいな2台とも」
「「ああ、OKだ」」
なんかNKエキスプレスもRSグループもスタッフまで付いていて、繋がれているランニングホライゾンは「ブシューン、ブシューン」言って鼻息が荒い。
「お宅らはその荷馬車引っ張っていくんだな。まぁ賭けてる訳じゃないから適当に2台に付き合って離脱してくれ」
スタッフの人は案外常識人だった。
「俺達は負けないぜ!」
「はん!、そんな大型荷馬車で付いて来れる訳ねぇだろ!、まぁせいぜい観光馬車に煽られねぇようにするんだな」
トニー君二人を挑発するのはやめてくれよ。
「行くぜリック!俺達も全開だ!」
「一応兄さんにも行っておくが、こいつら1日で中間滞在ポイントまで走るからな。普通の馬なら2日かかるの予定のポイントだ。馬だけは潰すなよ」
エリアがロボ馬に補給中でこっちはマイペースな感じ。
「リック、餌と水あげたよ!」
「全員、馬車に乗ってくれ、そろそろゲートオープンみたいだ」
「リック!ミエスさんがロボ馬に何かあったらこれ付けてって言ってたのがあってね、耳に着けると馬の気持ちがわかるんだって!」
ヘッドセットじゃんしかも馬耳って何だよ・・・2個あるから運転手と助手用なんだろうな。
俺は一つ受け取り、もう一つをトニーに渡そうとしたが「そんな物いらねぇ!心で会話するぜ」って事なので、もう一個はエリアが装備中。馬耳ヘッドセットでエリアが凄く可愛く変身。
そんな事を考えている場合じゃない!
『運転手がスポーツモードを要求中、モード変更しますか?』
この場合は「はい」だろうな
「リック!スポーツモードって何?」
「競争するって事だよ」
『安全の為ベルトを着用してください』
座席からベルトが表れた。今までどこに収納されていたのか謎のベルトだ。
「リック!椅子から変なベルトが出て来たよ!」
「それで体を固定するんだ、今やってやるよ」
荷台に戻ってメンバー達の体をベルトで固定する
俺も運転席に戻ってベルトで固定
『スタート準備中・レディ!』
定刻の鐘が鳴り響き、衛兵達が一気にゲートをオープンさせる。
「行くぜ!NKエキスプレス発進!」
「RSグループ出発!」
『レディ・ゴー』
3台の馬車が一気にスタートする
「チッNKの野郎、前足にスパイク装備か!出だしのトラクションを優先させやがったな!」
「時代は4足トラクション強化だせ!先頭はいただきだ!」
NKの馬車が先頭を取り、次にRSの馬車、続いてリック達の馬車だ。
「あの冒険者の馬車もなかなかのパワーだせ、俺達の加速に付いてくるようだな」
「カーブ3個も抜けた所でバックミラーから消してやる」
『メッセージ・サスペンションレベルの変更を要求』
俺は何だかわからずに「オッケー」と回答すると荷馬車の乗り心地が一気に悪くなる
前方の2台の馬車は馬車とは思えない速度で、コーナーをドリフトして抜けていく
映画やTVの世界で自動車のドリフトを見たことがあるが、馬車でやっている所は初めてだ。
「いけぇ!リック号!」
トニーは叫んでいるだけ。特に操縦のような物はしていない
と言うより、リック号って何だよ、勝手に名前付けるな!
前の2台に続きロボ馬車もドリフトしてコーナーを次々と抜けていく
「きゃぁぁ!!!!!!!!」
荷台から叫び声が聞こえてくる。多分キャノだと思う。がんばれよ。
「まさかあの荷馬車もドリフトが出来るとはな!ちゃんと着いて来いよ!」
前の2台はさらにスピードアップする。
「前の2台上手いな、コースを知り尽くしている走りだ、こっちは初めてだぞ」
『メッセージ・前方2台の走行をトレースしますか?。乗り心地がさらに悪化します』
エリアが「イイヨ!」と発声。
エリアこれ以上乗り心地悪化させるとキャノが死ぬぞ・・
「こんな狭い峠道をこの速度で走るなんて正気じゃねぇぜ!!!!!イェーイ!」
トニーはスピードハッピー状態になっているようだ。憑りつかれているなありゃ。
「落ちたら死ぬぜ」という峠道を80キロ以上の速度で爆走中。
長めのストレートでも3台とも縦1列にピッタリと並び、後ろの2台は空気抵抗を減らし馬の疲労を軽減させている
「RSの野郎スリップストリームか!案外冒険者の馬車が速いからパワー温存作戦か?」
ジャンピングスポットに入り3台から続けて綺麗にジャンプ。
「きゃぁぁぁぁぁぁっぁっぁ!!!!!」
「リック!!、キャノさんが絶叫してる!」
ジャンプ中の無重力感覚と着地した時の衝撃で荷馬車が激しく揺れている。
着地した瞬間に荷馬車がバラバラにならないのか心配になる位ひしゃげているが、そのように作られた物なのだろう。何事も無かったかのように走行する3台。
砂煙と砂利をまき散らしながら爆走する
「次のコーナは難しいぜ!見た目緩いが、出口が急カーブだ!知らねぇで突っ込むと死ぬぜ!」
NKとRSの馬車が減速するが俺は何かあると思い減速を指示しようとするが、トニーがそれを拒み「行ける時に行くぜ!」と叫ぶとエリアが「加速だって!」とロボ馬車に指示を飛ばしてしまう。
「バカ野郎!この先のはその速度じゃダメだ!」
荷馬車が明らかなオーバスピードで木の葉のように不安定になり流れ出す
「あぁ!!!死んだな」
「落ちるな!行けぇえええ!!!」
トニーは叫んでいるだけ。
ロボ馬は足の動く方向をカーブ内側だけ遅くし、外側を高速で動かす事によってキャタピラのような動きをさせる。
いままで崖側へ一直線のように外に広がるような動きをしていた馬が、突然内側に回り込み始める。
「あの馬!カウンター走法も出来るのか!もう一級品の運転士と馬として認めてやる」
崖下行きの危機から救われた俺達だったが、激しく減速してしまい、ビリに後退。
「兄ちゃんたち、腕は認めるがこのコースで生きて居たかったら無茶するのは止めな!」
「誰も俺の前を走るんじゃねぇ!行くぜ!リック号!」
道幅が広くなると、並走するとNKエキスプレスとRSグループ。2台同時にカーブに突っ込ブレーキング勝負から、そこから一気にドリフト侵入させる。
「並走ドリフト!?、あれは両者がお互いに実力が無いと出来ない荒業だ!」
「凄いね!リック2台並んで滑ってるよ!」
若干距離が離れて来た俺達の馬車、ロボ馬車より早い動物が居るとは、この世界は凄いと改めて思う。
「リック!キャノがダウンだ。減速してくれ」
リーザさんがキャノの具合が悪いと言って来たので、2台を追いかけるのはやめようとトニーを説得。
通常モードに変更してキャノが回復するまで普通に走る事にした。
キャノにマッソWライトを飲んで貰い一時的にドーピングさせレースからは離脱の方向となる。
しばらく走っていると2台の荷馬車がランホラに乗った盗賊なのか?、複数の敵に襲われているように見える。強制停車させようとしている感じだ
「ワォーン!ワォリィーーー!」
「ふざけんな、クソイヌが!俺達のバトルを邪魔しやがって!」
弓矢で攻撃されているじゃないか!!
「エリア攻撃できるか?」
「ちょっと遠いし、私の魔法だとあの2台も巻き込んじゃうかもしれないよ」
「私がやってみます」
アリシアさんが新武器のライフルを取り出す。ライフルと言うよりも対物ライフルに近いスタイルだ。レベルが上がり筋力ステータスも向上しているので、今では軽々と扱えるようになっている。
「実戦は初めてですけど大丈夫ですか?」
「2台を巻き込まないように魔素パウダー量を調整しますし、この距離なら問題ないです」
俺達が乗っている馬車が高性能荷馬車と言っても走行中は揺れている、彼女は揺れる荷馬車の中から狙撃するつもりのようだ。
エリアに一旦荷馬車内に戻ってもらうと、アリシアさんが運転席へ移動する通用口からライフルの銃身を出し2脚で固定。
俺とトニーは銃身を挟んで左右に座っている感じだ。
スコープ越しにアリシアさんがターゲットを確認する
「リックさん、犬のような顔に人間の胴体のような魔獣?魔物みたいです」
「そいつはコボルトだ!時々この辺に現れるので警備隊が巡回しているはずなのだが、まさかランホラを使役するようになったのか!」
キャノが言うには知能が高く様々な武器道具を使う魔物でオーガ族よりは基本スペックは劣るが知恵が回る為非常に厄介な魔物という事だ。
「魔物なら狙撃します。狙撃するときに合図しますので、リックさん、トニーさん耳を塞いでください」
「了解!」
アリシアさんがターゲットを補足すると
「撃ちます!」
俺達は耳を塞ぐと、合図から何テンポか遅れて弾が発射される
コボルトらしき一匹の頭が吹き飛び胴体がランホラから落ちる。
「アリシアさんヒットです」
コボルトは仲間が突然死んだ事で一瞬ひるみ、こちらに注意が向いたが、俺達が冒険者と気が付くとコボルトの奴らは散開して逃げて行ってしまった。
「やはり引き際が早いな。遠距離から頭を飛ばされた事で、近づく間に全滅させられる事を本能的に分かっているようだ」
コボルト+ランホラの組み合わせは脅威のようで、キャノの悩みが増えたようだ
そして2台の馬車が減速して近づいてきた
「兄ちゃん達すまねぇ、助かったぜ!」
「バトルは一旦中断だ、荷馬車がこの有様じゃどうにもならねぇ」
ランホラは無傷だったが、荷馬車が弓やら投げ斧等の攻撃を受けた跡が痛々しい。
「兄ちゃん、礼と言っては何だが、運転テクを少し教えてやるぜ」
「リックやったな!一流のテクを教えてくれるらしいぞ」
NKの人とRSの人は実走しながらいくつかの特殊なテクニックを教えてくれた
馬車でこんな動きが出来るとは思わず色々と驚いた。
一番死ぬかと思ったテクニックが「崖落とし」という物。
高速でカーブを曲がっている時にワザと内側の車輪を崖の外に出すテクニック。荷馬車の荷重移動が完璧でないと出来ないようだ
崖落としが出来ると道幅が馬車1台しか通れないようなスペースでも車輪幅だけで追い越しが出来る高等テクニックだ。
簡単に言えば崖下目掛ける片輪走行。
ウチの場合はロボ馬車が学習してくれるので、こんなイカれたテクニックも比較的簡単に覚えられたようだけど、こんな危険な事をする必要なのか疑問に思う。
「兄ちゃん達もすげぇが、その馬もすげぇな良く調教されているぜ」
他にも崖上がりや曲芸のようなテクニックも教えてくれた。
そんなことをやっているうちに1日目の停泊地に到着する。
停泊地は小さな村のような感じで宿屋や各馬車の駐車場のような物があり、プ・リンタの街とオーガ王都との間を行き来する時に利用する為の物である。
村との違いは王都が管理しているので警備がしっかりしている所で規模の割に頑丈な外壁で囲まれ、外部から魔獣や魔物の侵入を防いでるようだ。
「兄ちゃん達、俺達の宿はあっちだ。今日のお礼に奢らせてくれ。酒場で待ってるぜ!」
ここにある宿は宿と言っても雑魚寝ができるような所しかない。雨風がしのげれば良い程度の宿である。旅人等は野営セットを持ち歩くので、大体は野営場の方で夜を明かす感じとなる。
「予定よりもかなり早く到着したな、ウチのワイバーン隊はまだ到着していないようだ」
キャノは必要な荷物をワイバーン隊で運ばせているようである。さすがお姫様。
「途中トラブルはあったが、それでも素凄い速度で走って来たからな!」
ワイバーン隊は空中をほぼ直線で飛んでくるのに、こっちは峠道を走って来た訳で、それでも地上移動の方が速いと言うのは異常だ。
「キャノ、俺達は何処に行けば良いのだ?」
「ああ、あっちだ」
10分ほどで石垣で囲まれた王族用の建物に到着。まぁお屋敷だね規模は小さいが、それなりの物が建築されている。
「まだ使用人達が来てないので大したもてなしは出来ないが、ゆっくりしてくれ」
一応管理者のような使用人が居るので建物自体は綺麗に手入れがされている。
まさかきちんとしたベッドで寝られるとは思わなかったのでこの辺は大助かりだ。
「みんな食事はどうする?、さっき速達屋の人に酒場に誘われたから、俺は酒場に行くけど」
「俺も行くぜ!」
「私達も酒場に行く!」
「キャノも行くだろ?」
そんな訳で全員で酒場に行ってみる事になった。
「よう!来たな!兄ちゃん達。改めの自己紹介だNKエキスプレスのビレジだ」
「俺はRSグループのブリジだ。あの時は助かった」
二人ともそれほど仲が悪いという訳では無いようだ
「あぁ、運転席に座るとライバル意識全開だが、馬車から降りればいつもこんな仲だぜ」
「それにしても、あの距離から良くコボルトを攻撃で来たな」
アリシアさんが挨拶をする
「すげぇ美人だ。つか兄ちゃん、すげぇ美人ばかり連れているな・・・と思ったらキャノーラ様じゃないですか!!!!!!」
ははー という感じで席から離れて頭を下げる2人
「こういう場所ではキャノで良い。楽にしてくれ。周囲のみんなが気にするだろう」
「わかりましたキャノ・・様」
どうやら2人供キャノと面識があるようで、別人のように畏まっていた。
「兄ちゃん達はキャノ様の護衛か何かか?」
「護衛という訳では無いが、以前少しあってな、それ以来の付き合いなんだよ。あんまり気にしないでくれ」
「そっそうか、あの距離からコボルトを仕留められる腕前のある冒険者なのだろう?」
「まぁ、そんなのかな、ねえアリシアさん」
にっこり微笑むアリシアさん
デレっとしているビレジ、ブリジだったが、あとは暗黙の了解で詮索するのは止める。冒険者と王族が一緒に居る事自体が異常だからである。
まぁ、王族なら専属の護衛が付くはずだからね。
「よし!今日は俺達命の恩人に奢りだ!好きに飲み食いしてくれ!」
「すまない、じゃ遠慮なく頂く」
「ビレジさん、ブリジさん頂くね!」
翌日、発着所に到着すると、ビレジとブリジの2人はスタンバイ中であり、俺達も挨拶に行く。
「おはようございます、ビレジさんブリジさん」
「リックおはよう・・今日は王都まで全速で行く予定だが、俺達とお前の仲だ。顔を向けずにあっちにだけ視線を移動しろ」
指定された方向に視線だけ移動させる。
ランホラ種とは違う種類の馬が12頭繋がれた巨大な荷馬車が停車していた。
「あの馬車は裏組織系の馬車だ。どこの組織とは言えんが危険な馬車だ。気を付ける事だ」
真っ黒な荷馬車には会社名も何も入っていない。黒く大きな馬車はそれだけで不気味である。
「馬はダイブボディ種という、ほとんど魔獣種だ。パワー・スピード・スタミナ全てがランホア種を上回っているが気性が荒く普通は手名付ける事も出来ないが、あいつらは薬と魔法で従えている」
「あの馬車に抜かれる時は素直に道を譲れ、確実に跳ね飛ばされる」
「こっちにはキャノが居るから何も無いのでは?」
「あいつらは関係ない、死人に口なしや気づかなかったで済ませるだろう」
「裏組織の連中だが、表向きは合法に荷物を運んでいるだけだ。事が始まればあいつらのルールになってしまうから、とにかく気をけろ」
「了解だ。ありがとう」
いわゆる強い物が正義の世界だから結局のところは何でも有りなのだろう。
定刻近くになると色々な馬車が集まり始める。
例の12頭馬車は先頭でゲートを塞ぎ定刻を待っている状態だ。
NKとRSのランホラは昨日とは違う装備がされている。ランホラの顔にマスクのような物と運転席にはレバーや謎のハンドル等が追加されていた。
「ランホラが被っているマスクは何ですか?」
「ここから先は標高が一気に上がるからな、空気が減って馬の力が出なくなるからな、これで強制的に空気を送ってやるのさ」
周りを見渡すとマスク装備している馬を見る事が出来る。当然さっきの12頭も装備済みだ。
「キャノは大丈夫か?」
「問題ない。ある程度揺れる事が覚悟できていれば昨日のような失態は起こさんぞ」
「愛馬リック号!今日は負けねぇぜ!」
トニーは相変わらずだな
「リック!馬さんがスポーツモードを要求しているよ」
「エリア!OKだ。頼む」
『スポーツモードセット・レディ』
衛兵がゲートをオープンさせると一気に荷馬車たちが走り出す。
NKとRSの馬車が先頭を取り、その間に別の馬車が数十台続く。俺達の馬車はスタートで出遅れる形となった。12頭の黒馬車は重量からスタートダッシュできなかったものの、動き出すと12頭のパワーで大型馬車とは思えない速度で加速を始める。
最初は広めの峠道が続き、道幅も馬車4台分以上あるだろうか余裕をもって上り、下りで行き来が出来る整備された道だ。
王都とプ・リンタの街をつなげる街道なので、峠道ではあるが整備もきちんとされている。
先にスタートダッシュを決めた馬車達は急な上り坂に入ると徐々にスピードダウンを始める。
速度が一定なのはウチの馬車と例の黒馬車である。黒馬車は200メートル位後方を走行しているのだが
「おいリック、あの黒馬車、他の馬車を跳ね飛ばして走っているぞ!」
黒馬車は他の馬車を避ける気配もなく、我が道を進む。
他の馬車はその状況を知っているようで、道を外して避けているのだが、避けきれず跳ね飛ばされている馬車も有る程度はいる状況なのだ。
「幸い大事故にはなっていないようだな、ビレジが言っていたのはこういう事なのか」
登り坂道を猛スピードで迫る大型の黒馬車、12頭パワーで上り坂を平地のように加速し続ける。
「トニー!そろそろ追いつかれるぞ、一旦道を譲れ」
道幅は徐々に狭くなっていくが、まだ馬車2台は余裕で走行できる位の道幅があったので、俺達の馬車は黒馬車に道を譲る事にしたのだが
――パァアアアンーー
黒馬車から警笛音が鳴り響く。
「クソ!あいつら道の真ん中しか通らないのか!」
ダイブボディが俺達の荷馬車に急接近してくる。
次の瞬間には接触して荷馬車が付きあげられるように軽く加速を始める
『アラーム!減速不可!、次のカーブ時に事故の可能性50%』
「チキショ!踏みつぶされちまうぞ!」
カーブ侵入時に一瞬だけ黒馬車との距離が離れる、その瞬間を見のがす事なくカーブ侵入直前でフルブレーキングさせ一瞬のうちに荷馬車の姿勢をブレイクさせる。
華麗にブレーキングドリフトを決める荷馬車、カーブの侵入スピードが速すぎて追従できない黒馬車
「カーブへの突っ込み勝負で勝ったな!」
しかし黒馬車が猛烈な加速で距離を一気に詰めてくる。いくらロボ馬車にパワーがあっても、12頭のパワーには勝てないようだ。
「リック!やはり直線が少しでも長いと追いつかれるぞ!」
『インフォメーション・レースモードに変更しますか』
「リック!馬さんがレースモードにしようか言っているよ!」
スポーツモードでも乗り心地が悪かったのだが、これ以上悪化する事は容易に想像できるが
「リック!勝負に勝つにはいろんなものを捨てる必要があるんだぜ!」
トニーは相変わらずヤル気満々なのだが、荷室の仲間が心配だ。
「このままだと黒馬車に潰されるから覚悟を決めています!」
アリシアさんや他の女性達も覚悟が出来たようだ
「レースモードに変更許可!」
『レースモードセット・レディ!』
荷馬車が移動しながら変形を始める。
おフランス映画の「的士」やアニメ「サンバホーミュラ」に出てくる車みたいだ。
元々ハードトップだった部分が変形しウイングのような物がとびだし、車輪は車軸が伸びてワイド化している。
『ブーストモードが使用可能・ただし駆動ユニットに負担大』
「いくぜ!リック!一気に引き離すぜ!」
「リック!ぶーすと許可するよ!」
少し長い直線に入ると黒馬車による突き上げが一層激しくなる。
『ブーストセット・レディ!』
ブーストがかかると一気に荷馬車が加速を開始する。
「ぐぉおぉぉぉおぉ!!!!」
「きゃぁあぁぁぁぁっぁl!!!!!」
「ヒャッハ!!!!!!A!!」
「スゴーイ!ハ・ヤ・イ!!!!」
『ブーストオートカットまで3分、カウントダウン中』
ロボ馬の脚が異常な速度で動き出し、巻き上げる砂煙で一気に視界が悪くなる。
カーブ手前からあり得ない角度に荷馬車を横向きにさせそのままスライドさせた状態でカーブに突っ込んで行くロボ馬車、目の前は崖下であるのに崖下には向かわず、車両はカーブをトレースするかのようにカーブを抜けていくのである
「黒馬車との距離がかなり開いたな!」
土煙で視界を塞がれた黒馬車は減速するしか無かったようでかなり後退している
「チッ舐めたマネしやがって・・・」
ある程度の差が付いた所でロボ馬からメッセージでブーストをカットする。
「ここまで引き離せばしばらく平気だろう」
「リック!頂上だよ!」
頂上にも中継ポイントがあるが、俺達はそのまま素通りする。
「リック!ビレジとブリジの馬車が見えたぞ!」
「追いついたぜ!お二人さん!!」
「兄ちゃん達にここで追いつかれるとは思わなかったぜ!」
―ガシャーン―
後方で大きな音がする。
「おい!あの黒馬車中継ポイントのゲートを破壊して通過したぞ!」
「兄ちゃん!ここからは下りだ!一気に王都まで走り抜けるぜ!ついて来いよ!」
後ろから迫り来る巨大な黒馬車、下り坂であんなのに跳ね飛ばされたら崖下に一直線か壁に叩きつけられてバラバラである。
NKとRSの荷馬車はレバーを引くと一気に加速強める。ゼンマイを利用した加速アシスト装置で手元の車輪でゼンマイを撒き、レバーを引くとゼンマイの力が一気に荷馬車の車輪に伝わるという仕組みだ。
続けけてエリアが叫ぶ
「ぶーすとON!」
『レディ!』
2台に遅れないようにこちらもブースト加速開始だ!
下り坂はブレーキポイントは間違えると一気に壁に突っ込むか崖下行である。NRとRSの2台は豊富な走行経験から路面状態の微妙な変化に応じて走行スタイルを変えながら最適最速の方法でカーブを抜けていくのだが
「クソ!黒馬車との距離が一定以上から離れねぇ!」
「ランホラへの送風機が止まっているんじゃねぇのか!!」
「この先はこの峠最長のストレートだ!マズイぜ!」
軽量、ハイパワーなNK・RSの馬車だが、絶対的なパワーが足りないのだ。下り坂という所で重量的な問題は速度が乗ってしまえばあまり関係なくなり、1対12頭でのパワー勝負となる。
「兄ちゃん崖側には絶対に逃げるな!壁側だ!いいな!」
トップスピードの状態から黒馬車に追いつかれる、時速140キロを超えているだろうか?
NKとRSの荷馬車が黒馬車をブロックしているが車両重量差が大きすぎる為微妙な変化しか現れない。
「すまん兄ちゃん!」
3台の中では一番遅い俺達のロボ馬車は黒馬車に徐々に追い越され始め、その時だった
「リック!幅寄せだ!マズイぞ!」
現代風に言えば大型トレーラに普通自動車が挟まれたような状態だ、黒馬車の大きな車輪がこっちの荷馬車に向かって急接近してくる。
NKとRSの荷馬車が俺達を助けようロープをかけ引っ張るように加速を始めるのだが
「反対側は壁だ!逃げ道がないぞ!」
徐々に道幅も狭くなりゆるいカーブに差し掛かる
―ガッシャーンー
黒馬車の車輪が荷馬車にヒットする。
「キャアァ!!」
荷馬車が壁と挟まれ上下に揺れる
「クソ!やりやがったな!リック!あいつ等俺達を殺す気なんじゃねぇのか!」
ふたたび黒馬車から当てられ、荷馬車が大きくバランスを崩す
『車両状態維持不能!緊急モードを発動を提案!』
「馬さん!お願い助けて!」
『エマージェンシーモードセット・レディ!』
ロボ馬からオーラのような磁場のような物が発生しだす
「魔法壁を展開しているの?」
『エネルギーシールド展開中、オートカットまで90秒』
『基本スペック130%上昇』
ロボ馬車が何だが解らない状態になっているが、いったんNKの馬車との接続を解除する
「二人とも安全な所まで逃げて下さい!何かするみたいです!」
「兄ちゃん了解だ!何か策があるんだな!!!」
「死にな」
一気に踏みつぶそうと迫る黒馬車だったが、エネルギーシールドにより黒馬車を跳ねのける、しかし重量差で荷馬車は壁方向に突き飛ばされる形となる。
荷馬車が跳ね上がるタイミングを使い、ロボ馬は垂直の壁を走り出す。
「きやぁぁっぁあ!」
こればかりは荷馬車内の女性陣の悲鳴が聞こえる
「すげぇぜ!リック!馬車が壁を走ってるぞ!!!!!!」
おれもチビりそうだ・・・冷静でいられる自信が全くない・・荷馬車だぞ。荷馬車がほとんど90度の崖壁を登るような感じで走行しているのだ。
俺達の荷馬車が抜けた事で、黒馬車は激しく壁にヒットする。
時速140キロを超えた速度でバランスを崩す黒馬車は繋がれていたダイブボディのロープが引きちぎれ、ダイブボディ達はチリジリになって逃げていく。
動力を失った黒馬車は制御不能の状態に落ちいり、再度壁にヒットするも慣性重量の大きさから止まる気配もなく転がりながら峠道をバウンドを繰り返し車輪や部品をまき散らし峠道で停止した。
「殺されかけたから乗員の確認等はしないぞ」
キャノに合意を取ろうとしたが、彼女は荷馬車の椅子でぐったりとしていて動かなかった。
『エマージェンシーモード解除します。システム冷却中』
ロボ馬から湯気のような物がずっと出ている。かなり疲れている?のかな?ロボだけど。
「兄ちゃん壁走りも出来るようになったな!もう教える事は無いぜ!」
「さぁ王都まで行くぜ兄ちゃん!」
街道を爆走する3台の荷馬車、王都手前に用意してある停留所がゴールだ。
「「「ブーストオン」」」
ゼンマイ加速機のロックを外すビレジとブリジ、ロボ馬からは『レディ!』の声
3台の荷馬車は横一列に並び本日最高速を叩き出す。
『ブーストカットまであと10秒』
「クソ!リックダメだ!加速が続かねぇ!!!」
8人乗ってる荷馬車ではやはり無理があったのだろう。じりじりと引き離されていく
「NKの不敗神話は続く!貰った!」
「勝つのはRSグループだ!」
2台はほぼ同時にゲートを通過、そのあとに俺達の荷馬車がゴールする。
王都の停留所に着くと歓声に包まれる
NK/RSが毎回のように運送レースをしている事は有名なので賭け事が成立しているためだ。
今回は俺達の馬車が接戦を繰り広げた事に街で賭けをしていた連中が声をかけてくれる。
「すげぇ荷馬車と馬じゃねぇか!、ボロボロだけど何かあったのか!」
「あの2台について来れるとは凄いな!、次もレースするんだろ?」
と色々と声をかけられたが、たぶんもうレースみたいな事はしないだろう。
「兄ちゃん、最初は悪かったな!、でもおかげで良い走りが出来たぜ!」
「何か運送の仕事があったら協力するぜ!その時は声をかけてくれよな!」
ビレジさんとブリジさんとの友情のような物が芽生える。ある意味死線を潜り抜けたからなのかな。
今回、馬車による陸路最速記録を叩き出す。ワイバーンによる飛行よりも数時間速い結果となりこの記録が破られるのはしばらく先の話である。
おさらい
・ランホラ種・・ランニングホライゾンという馬と爬虫類を混ぜたような馬?地平線まで走っていくという言い伝えがあるほどスタミナとパワーがある。オーガ国周辺の特有種である。
・ダイブボディ種・・ダイビングボディという馬。馬と言うよりも魔獣に近い種でランホラよりも身体能力が高いが、気性が荒く手なずけるには薬や魔法を使う事がある。
ちなみに冷静さを失うと崖だろうが壁だろうが飛び込む性質があるのでダイビングボディと呼ばれる。




