オーガ国からの招待状
「リック様、イオス様から手紙が届いています」
シリカさんが俺の手元にイオスさんの封印入りの手紙を渡してくれた。
王族からの手紙、ロウで封印された手紙なんか人生で初めて貰ったから若干ビビっている俺である。
この時代、ある一定階級では普通なのだろうけど、一般市民の俺から見ると重要な手紙みたいでビビる。
「ありがとうシリカさん」
手紙の内容は、以前のお礼と礼品の家が出来たので一度見に来てほしいといった内容だった。
あの時、デンジャーゾーンの拠点になるような家が欲しいとイオスさんにお願いしてあったのでその建物等の確認だろう。
パーティメンバーたちに、手紙の件を話すと2日後にオーガ国に出発する事になる。
前回は道も無く荒れた森の中を6日程かけて移動していたが、現在は基礎工事が8割ほど完了している状態。街道整備はオーガ国との共同事業と聞いていたが、ほとんど遺跡街のスタッフが工事してしまっているようだ。
そりゃ、疲れをしらない偽装スケルトンと怪力サイボーグだからね。しかも24時間作業しているから工事も早い訳。
道自体は一部未整備という状態ではあるが、プ・リンタとの街には普通に行けるようになっている。距離にして300キロ位かな。ロボ馬車なら2~3日もあれば到着できる距離になっていると思う。
「ずいぶん移動が便利になったな」
「ああ、前回は凄く時間がかかったよな」
運転席で俺とトニーはそんな会話をしている。街道整備が進んでいても魔獣が出ないという事は無いと思うので警戒も怠らない。
「この辺の魔獣はずいぶんと強いよな」
LV20以上が普通に出てくるからだ。俺達から見るとこっちが普通だと思っていたので、オルワールの方に行ったらLV20辺りが上限でしかも強い方の魔獣という扱いだったからオーガ達が強い事も理解できる。
「遠くの方にワイバーンが見えるな」
「隊列組んでいるからオーガ国のワイバーン隊の定期便だろう?。空の警備はワイバーン隊がやっているそうだからな」
彼らのおかげで空をほとんど気にせずに進めるのは有難い事である。野生のワイバーンに襲われたら人間族の冒険者や商人では大きな被害が出る事だろう。
トニーが馬を見ながら言う
「こいつ速いよな、パワーもすげぇ。餌もミエスが指定した変な餌食わせているだけだろ?」
ちなみにこのロボ馬はミエスさんの指定した餌以外も食えるのだが、泥や木みたいに消化できない物が混ざるとダメらしいので、知らないで沢山泥や砂の混じった草とかを食わせると消化器系が壊れるので出来れば食わせないで欲しいという注意事項がある。
なぜ餌が必要なのかは、生体ボディの維持の為の栄養だからみたい。
街道には高レベルの魔獣が出現する可能性があるので旅人の数もまだ少ない。
他の人に見られる事も無いので常識外れの速度で馬車を飛ばした為、予定よりも大分早く到着してしまった。
「リック見えて来たぞ、プ・リンタの街だ」
衛兵に書状を見せると、そのまま街に入る事が許される。
元々ワイバーン討伐の英雄なので衛兵から大歓迎を受けたけど。
指定の場所で待つようにお願いされ、現在その場所で待機中。
オーガ族から見れば人間族は珍しいのだが、現在は遺跡街との商業取引が始まっているので、人間族も見られるようになっている。
「久しぶりだな!リック」
冒険者スタイルのキャノが出迎えてくれた。
「ずいぶん早かったな。予定だともっと後だと聞かされていたから出迎えが遅くなってしまい悪かったな」
そりゃ予定日よりも早く着きすぎると、キャノも困るよな
「今日は屋敷に泊まって、明日王都へ向けて出発しよう」
「「わーい、キャノの屋敷だ!!!」」
エリアとマイが嬉しそうだ。普段は泊まれないような豪華な部屋で前回は大喜びだったので今回も多分同じ。
「エリアとマイ、残念だが今夜は良い料理が出せんのだ」
「大丈夫だよ!気にしないで!キャノが用意してくれるだけでも嬉しいよ」
元々俺自身が食にこだわりがそんなに無いし、飯を用意して貰えるだけでも十分だ。
パーティメンバーもその辺が凄く適当で、今までの旅で思ったのは質よりも量派なので小洒落た店よりも大衆食堂とかの方が気を遣わずに済んで良いみたい。
そう考えると、前回の食事会で最後は串焼きを出された記憶がある・・・。
屋敷に到着するとキャノは執事のヒューレさんと打ち合わせの為一旦別れる。
俺達はメイドさんに連れられ部屋に案内され、前回と違うのは執事のヒューレさんの対応も凄く丁寧に変わっていた。
前回はゴミを見るような目で対応されたからね。
ヒューレさんが挨拶を済ませると、「キャノーラ様との打ち合わせがありますので」という事で世間話もせずに行ってしまった。
「豪華なお部屋に到着!!!」
エリアが真っ先に大きなソファーにダイビングして、お菓子は何があるのかな?とテーブルの上の箱の中を確認中。
メイドさんが4人ほど入って来て、俺達の装備や上着類を収納してくれているのだが、問題発生。
「リック様・・・リック様一同の装備品が重くて動かす事が出来ません・・」
仲間指定していないと俺が元居た世界の物は重くなってこの世界の人では取り扱えないのだ。
「すいません、もう大丈夫ですよ」
一時的にメイドさん達を仲間指定すると、さっきまで持ち上げられなかった衣服類が簡単に持てるようになった。
ちなみに、なぜクローゼットが重量で壊れないのか・・・なんて事は考えない。異世界ご都合主義として気にしない。
「リック様、お茶がはいりました。」
メイドさんがお茶の準備をしてくれたのでテーブルの方に移動すると、エリアとマイは既に用意されたクッキーをバリボリく食っている状態だ。
旅館のウエルカムドリンクみたいに、トニーとマイは酒を飲み始める。
「明日から王都に向かうからホドホドにしろよ」
俺達はティータイムを楽しみつつ明日からの予定の相談をはじめた。
「メイドさん、王都までどの程度かかるのですか?」
「ワイバーンで2日、早馬だと3~4日、馬車ですと8~10日程度です」
ワイバーンで2日とは結構遠いのだなと思った。
ワイバーン自体が時速60~80キロ程度で飛べる
前に調べた時はワイバーンの1日の飛行時間は4時間程度だった。
1時間連続で飛ぶと疲れてしまい、1時間位休憩しないとダメなので1日8~10時間位の運用となる。
実際には野営準備等も含まれるので日の出ている時間帯しか飛べないのである。それでも200~300キロは飛べる計算だ。
この世界の早馬は時速80キロ位で走れるが、全開だと1日2時間位でダウンするので、ゆっくり目の時速40キロで走って1日4時間ほど走ることが出来る。
「ワイバーンの飛行速度から、ここから王都まで500キロ位か?」
「リック様良く、ご存じで。主からその位と聞いております」
「うちの馬車なら2日位で行けるな」
メイドさんは「はぁ?リックさん何言ってるの?」という感じだけど気にしない。
「リック!一度全開で試してみようぜ!」
トニーがノリノリだ。何でかな?
ただし、馬車で8日~10日という所が引っかかる。
食事の用意が出来たという事で今回は食堂に呼ばれた。
前回は食事の間みたいな所に案内されたけど、今回は使用人達も使う普通の食堂。
でも王族の使用人達だからそれなりにマナーも出来ているし、街中の冒険者宿の酒場と比べると、こっちの食堂の方が何倍も豪華だ。
メイドさんがテーブルまで案内してくれる。
「リック、今日はこんなところで悪いな」
キャノもドレスではなく普通の服だ。まぁ高価そうだけど。
「気にしないでくれ、俺達もこっち方が気を使わなくて楽だから」
「そう言って貰えると助かるぞ」
「今日は出来立てを食べて貰いたいからこっちの食堂に来てもらった。風呂とか入って無いよな!」
メイド達がドラム缶を半分にブッた切たしたようなコンロを用意し、中には炭が真っ赤になって焼けている
「使用人達も今日は冒険者スタイルのBBQという料理だ!みんなで楽しく食おう!」
「「「「「「キャノーラ様!ごちそうになります!!!」」」」」」
コンロに串刺しにされた肉がどんどん並べられていく。食欲を誘うソースの焼ける香と共に食堂内に充満する肉の煙、換気は行われているが、それでも全然間に合わず、部屋の上の方は煙が充満している状態だ。
「キャノがラフな格好だったのはこの為なのか」
「火酒も用意したぞ!存分に楽しんでくれ!」
「ヒャッハー酒だ!!!!」
トニー君、マイさん・・俺はもう何も言わない。性格変わっちまったな。
厨房の方でも肉がガンガン焼かれ、こっちのコンロは俺達用な感じだ。
「これ美味しいですね、珍しい肉なのですか?」
「リック!これ柔らかくて食べやすいよ!でもちょっと臭いかな?」
「香はこれをかけるとスッキリするぞ!」
レモンのような果実を肉に絞って果汁を振りかけているキャノ。
確かにこの食感は食った記憶のある食感である。肉の色も珍しく茶色から赤系の色をしているし、白い部分は脂身という事は認識できる。
「キャノこれは何の肉なんだ?」
キャノは残念そうな顔をしているが、何か問題でもあったのだろうか?
「すまんなリック。これは猪を家畜化した物と牛なんだ」
えっ?この世界にも猪の家畜(豚)と牛が居たの?。
俺は違う意味で衝撃の事実を知る。
オーガ国では猪を家畜化して養豚ならぬ養猪、この種類は性格が温厚なので労働用に使われたりしているので主に食用では無いらしい。
本来ならば労働用にされる予定だった家畜をキャノ達が急遽食用に転用したという感じだ。
「いや謝る事は無いですよ。みんな美味いと言っていますよ」
「しかしな、王族がこのような物を用意したとなるとメンツが立たんのだ」
いや、そりゃ牛と豚に悪いって。
「キャノ、これ凄く美味しい!」
「そうだな私が知っている牛とは全然味や肉質が違うが何か特殊なのか?」
人間族の方にも牛を使って畑を耕していたりするのを見た事があったが、なぜか食卓で見た事が無かった。
昔爺さんから、「昔はな、労働できなくなった牛を最後は殺して食うんだよ。でも歳を取って疲れた牛なんか硬くて不味くてな。でも貴重な命だから大切に食ったものさ」
と子供の頃に聞かされた事を思い出した。
基本、労働力だから、そのような時にしか牛は食えないし、この世界には食える魔獣が沢山いるので、わざわざ牛を食う必要も無いのだろう。
だから不味いイメージしかなくて、キャノ達は申し訳なさそうにしていたのかもしれない。
今回用意された牛と猪は労働前の若い個体だった事もあり、肉も柔らかく美味かったという事になる。
実際は肉にしてから熟成させると美味いんだけどね。その辺はプロじゃないから知らないけど。
リーザさん、トニー、マイは野生児だな。ワイルドだ。コンロの肉が次々に無くなっていく。
メイドさんが忙しそうに肉を投入。
焼き加減については冒険者という事もあり生焼けは許されないとの事。
寄生虫だの病気だのの心配が出てくるからだ。早食いしているわりには、正確に生焼け肉はコンロに戻して焼き直している。
意外とみんな、牛は食った事があるようで、この世界で食った事がなかったのは俺だけ。
猪も似たよな魔獣が居るので、そいつらよりは脂身が多く肉が柔らかい。
でも独特の臭みがあるからレモン汁のような物をかけて酸味を強くする感じで食べていた。
これはこれで、酒に合う。
俺はアリシアさんに炭酸水を生成してもらって、エリアに冷却の魔法で氷を生成してもらう。
アリシアさんは銀座のクラブの人みたいに火酒(多分ウイスキーだと思う酒)でハイボールを上品に作ってくれるので、受け取る時に緊張してしまう。
美人の作った酒は何故か美味い法則。
ちなみに俺は銀座のクラブなんか行った事はない。あそこは金持ちが行く所だし。
炭酸と酒が肉の臭みを誤魔化してくれるのか普通に食えるようになってくると、食がどんどん進むようになる。
猪と牛と聞いて俺も安心して食っていられるのだと思う。
そんな感じでBBQ大会は続き夜も更けていく。
・・・・。
翌日、なんか飲み過ぎたトニーにあれほど飲むなと言っておきながら自分がこれじゃマズイな。
シャワーを浴びて寝た事までしか覚えていない。
目覚めるとベッドに裸のミリアが潜り込んでいたが気にしない事にする。
うん、気にしない。気にしない。隣にあるベッドは使われた形跡すらないけど。
両方とも裸で寝ていた状態なら大問題になりそうだが、俺は服を着ているしミリアは元々偽装服なのでわざわざ服を偽装している必要もない。
骸骨だったら叫んでいたかもしれないけど。
多分何事もない。彼女なりのジョークなのだろう。
ベッドルームから出ると、アリシアさんがマッソWライトを用意してくれた。
一気に飲み干すと、頭痛やだるさが一気に消える。
「アリシアさんありがとうございます」
「ミリアさんは大丈夫でしたか?」
アリシアさんがちょっと怖い顔をしている。
「普通に寝てますよ。大丈夫です」
「そうですか・・・」
どうやら昨日の夜、誰が俺と一緒のベッドルームで寝るか勝負があったらしい
クジ引きで決められたらしいが、何をしてもミリアが全勝。
イカサマ扱いしてミリア以外が決めたゲームで深夜まで勝負したが、結局ミリアの勝利。
「賭け事で妾に勝とうなど無理じゃ」
という事だったそうで、みんな俺の心配しながらミリアをベッドルームに送ったようだ。
朝食を取り、キャノ達と一緒に王都に向かう為、出発場のような所に移動する。
オーガ王都に移動するには一度この場所に集まり、いろいろと手続きを行う必要があるそうだ
なので、ここには王都行の定期便の発着場だったりもしている。
「キャノはどうする?」
「ああ、今回はリック達の馬車に同行させてもらうぞ」
「キャノ様そんな荷馬車でなくても、きちんとした馬車が有りますので、そちらを利用されてはどうでしょう」
執事のヒューレが提案している。俺もそっちの方が良いと思うが、肝心のキャノが俺達との同行を強く望み、半ば強制的に乗りこまれた。
王族と一緒だと何となく気を使うからなぁ・・運転操作なんか荒い事も出来ないし。
待機場には、ワイバーン移動便や人間族側では見ないようなゴツい馬が複数繋がれた馬車や変わった生き物だと【ランニングホライゾン・通称ランホラ】という馬とドラゴンを掛け合わせたような爬虫類のような馬がいた。
ランホラは、地平線の彼方まで全力で走って行って消えてしまうと言われているほどパワーとスタミナのある馬の一種であるとキャノが教えてくれる。
待機場の中心部では男達が騒いでいるのが聞こえて来る。
「今回も最速は俺が貰うぜ馬車のNKマークは不敗神話のNKだぜ」
「何言ってやがる、時代遅れのこのポンコツ野郎が!」
「あそこの人達は何をやっているんですか?」
俺は気になって、近くにいた人に聞いてみると
「ああ、あいつらは速達屋だよワイバーン便で運べない重さの荷物を王都まで最速で運ぶ仕事をしているのさ」
「結構早いぜ、最高速で100キロ位出るらしいからな」
あの馬車で時速100キロ出すなんて正気じゃないぞあいつ等。
黒色のランニングホライゾンと白色のランニングホライゾンがそれぞれ、荷馬車につながれてゲートオープンを待っているような感じだ。黒色のランホラに繋がれた荷馬車にはNKエキスプレスと書かれ、白色のほうにはRSグループと書かれている。
「へぇこの馬と同レベルは走れる馬車も有るんだな!」
周囲が騒がしいのでトニーがデカイ声でそんな事を言うと、どうやら2人も聞こえたようだ。
「なにぃ!そんな馬が速い訳ねぇだろ。昔から速いのは【ランホラ種】って決まっているんだよ!」
「いやいや、ウチの馬も早いぜ!今日は初めての全開ドライブ予定だ!」
「兄ちゃん!俺達と勝負するってか!」
「受けて立つぜ!」
「おいおい、トニー!勝手に何決めているだよ!危ねぇ事を勝手にはじめるなよ」
「リックもこの馬のスピード知りたいだろ?、丁度良いじゃねぇか!」
すっかり来る途中のスピードにやられてしまったトニーだ。まさかスピード狂なのか?
「兄ちゃんゲートが開いたらスタートだ。準備しときな!」
何故か知らんが速達屋と王都までレースする事になってしまった。
どうなるか知らん・・・。
今回から文節を短くして改行を増やしてみました。




