謎の建造物
俺が初めてこの世界に来た場所。
一応、クソ村長の村で親切にしてくれた奥さんに方角や場所について聞いたら、ものすごく離れていた。
通常、馬車で8時間以上はかかる距離だと説明され少し焦る。当時の感覚だと歩いて1時間位の距離だった気もするのだけど、そんな近距離に草原や野原のような場所が無いと言われてしまった。
何時ものようにフライちゃんに先行してもらい、情報確認後ロボ馬車のハイスピードモードで移動。結局の所、ロボ馬車でも結構かかる距離だった。
季節は変わっている為、風景も変わっていたがこの草原が、俺がこの世界に来た始まりの地。
なんとなく山並みや森の木の特徴等を覚えているし、遠くには冗談のような大樹木が見えている。たぶんここに間違いないと思う。
フライちゃんに上空から変わった物が無いのか調べてもらう事にする。手つかずの草原なので何か落ちているとか探すのは無理そうだ。
『ミリア様~森の中に変な建物がありますよ』
「リックさん、フライちゃんと同じ方角なのですが、魔素割合が異常な場所があります」
「りっく!あの森の魔素さんちょっと変だよ?何言っているのかわからない言葉なの」
「エリア、その魔素さんとやらは怒ってるとか何かわかるか?」
「うーん雰囲気だと、怒ってる感じじゃないよ。混乱しているというか、そうそう酒場の酔っ払いみたいな感じ!」
そりゃ何言っているかワカランな。
魔素がらみだとアリシアさんやミリアなんかの方が専門なので、危険が無さそうなら行ってみたい気もした。
「特に問題ないじゃろ、村人も訪れているようだしの」
「魔素割合が異常と言うだけで、魔獣や魔物の気配がある訳でも無いので大丈夫だと思います」
二人とも特に問題が無さそうと言うので変な建物のある場所に行ってみる事にした。
「結構森の中なんだな。良く村人がこれを見つけたと思うぞ」
「この辺は魔獣の気配が全く無いですからね。比較的安全なのでしょう」
良く見ると森の中はきれいに管理、清掃されている。
昔、爺さんに聞いた事があるが、燃料が無い時代は森や林に入って燃料用の薪を拾ったりしていたので、綺麗に管理されていたんだよと。この時代もそうなのだろう。人間が入れる場所は綺麗に管理され、獣が住み、狩りに必要な部分はそれなりに残されているような感じである。
そんなところに「これ」があった。
「これは見た感じ家だよな」
最初に呟いたのはトニー。
俺は見た瞬間何と言って良いのか分らず絶句中。
「この辺では見ない形の建築物ですね」
アリシアさんが鑑定しているようだが、「不明」としか鑑定されないらしく困った顔をしている。
ミリアの様子が少し変なのが気になる。
改めて見ると家自体は綺麗なのだが、外構壁には蔦や草が生え、森の中だった為なのか苔まで張り付いている。
「つい最近発見された建物だろう?、外壁を見る限り10年20年の苔や蔦の生え方をしていないぞ。もっと昔からここにあった感じもするけどな」
ちなみに、今喋っているのはトニー。俺は絶句中。
「それに外壁と建物自体の傷み方にずいぶんと差があるな、建物自体はかなり新しい感じがするな」
「最近、この小さな門の所で何かをした形跡がありますね」
確かに草や蔓などが剥ぎ取られた形跡が残っている。
「こんな低い外壁なら軽々乗り越えられるけどな、入口が開かないのか?」
「ちょっと俺が中に入って見てくるぜ!」
トニーがジャンプして敷地に入ろうとした瞬間に、ミリアが叫ぶ
「待てぃ!!!、ここは魔素が異常も何も空間が異常じゃ!トニーお主死ぬぞ!」
「おいおい、死ぬって・・・空間異常ってなんだよ」
ミリアはアンデットカラスを召喚する。LV1のアンデットだ。
アンデットカラスを建物に向かって飛ばす。
「良くあのカラスを最後まで見ておれ」
飛び出したカラスは普通に屋根にとまったが、数秒もたたずにそのまま干からびて落下。干からびた事自体は良く認識出来なかったが、落下速度が異常にゆっくりだった。
地面に落ちる前にバラバラになって行き、灰のような粉のような状態になって風に飛ばされて行ってしまう。
「あっあぶねぇ・・・なんなんだよここは」
「多分じゃが、あそこに粉の山があるじゃろ。あれは人間のなれの果てじゃ」
「マジかよ・・」
おそらく無理に入ろうとした村人だった物?。
仲間の雰囲気がとても重い、ミリアでさえこんな危険な場所は封印するべきだと言っている。
「ちょっとみんな話を聞いてくれないか?」
「リック!さっきの見たでしょ!リックも灰になっちゃうよ!」
すげぇ言いにくい。
「実は、この家、俺が、昔、住んでいた、家なんだ」
元居た世界で俺は、親父たちと相談してこの家を購入。元々の実家が区画整理の対象になって引っ越しする事になったからだ。引っ越し自体は半年位後の話だったが、俺もアパートを引き払い、職場に近いこの家に俺だけ先に住んでいたと言う訳だ。
この時代からすれば変な構造の建物に見えるのかもしれないが、俺から見ればごく一般的な建売住宅なのだ。
「俺の危険察知も反応していないから大丈夫だと思う。一度中に入ってみる」
エリアやミリアに反対されるが、大丈夫だと説得して家の中に入る事にした。
ゲートに付いている蔓や草を綺麗に取り除き、ダイヤル式の鍵を合わせてロックを解除する。
「リック。念の為じゃこれを持っていけ」
ミリアから身代わりの宝寿という首飾りを受け取る。死の危険になると砕けて1度だけ助けてくれる物だと説明を受ける。
「あとこいつも一緒に連れていけ」
再びアンデッドカラスを召喚。俺の頭の上にチョコン?と乗っかっている。
「頭に乗るサイズじゃないと思うし、アンデットだから怖いんだけどな・・」
「小鳥サイズだと我らに様子が見えんじゃろ。カラスに異常があったらすぐに逃げて来るのじゃぞ」
「ありがとうミリア。行って来るよ」
俺は自分の家のゲートを開けて、慎重に一歩を踏み出す。
何時も感じる危険信号のような物は一切ないので、全く問題ないのでは?と思うが、村人のように粉になりたく無いので慎重に進む。
「リック!大丈夫か?」
「リーザさん、問題ないです」
村人だったと思われる粉状の何かを通過。
「リック!大丈夫?」
「エリア、大丈夫だよ」
頭の上のカラスも元気のようだ。
アンデットだから死んでるけどね。
玄関に鍵かかかっているので、秘密の隠し場所からスペアキーを取り出して玄関の鍵を開ける。
「家の中に入るぞ」
「気を付けて!」
久しぶりの我が家?なのか自分の家の臭いがするので本物だと思う。家の中は俺があの日帰って来た状態のまま。若干散らかっているが男の一人暮らしなんてそんな物だと思う。一人暮らしするには現状広すぎるけど。
不思議な事に電気・水道がそのまま使える事。テレビは電波が来ていないので映らない。ネットも同様。冷蔵庫の中身は怖くて確認していない。スマホのバッテリーが切れていたので時間は経過していると思う。
時々外から俺の生存確認をするための声がするので、「大丈夫!」と大声で返事をしている。
頭のカラスも問題なさそうだ。
「この感じならみんなを呼んでも大丈夫かな」
家の中を軽く片付けて、仲間たちを呼ぶ準備をする
自分の部屋に移動し、窓ガラスを開けてカラスをミリアに返した
「カラスは無事だったぞ、身代わりの宝珠も問題ない」
「おお!大丈夫か!」
「今から迎えに行くから待っていてくれ」
敷地の外で待っているミリアに宝珠を返しミリアと手をつなぎ、敷地内に招き入れる
「妾が一番か。うれしいの」
「いや、お前が一番死なないだろ」
「恥ずかしがり屋のリック殿だからの」
「夫婦漫才みたいなのはやめてくれ」
ミリア問題なし。
続けてトニー問題なし
「ミリア一回外に出てそのまま入ってくれ」
ミリアは一度敷地外に出て、普通に入って来た。
問題無いみたいだな。
トニーは言われるまでも無く、そのまま出たり入ったりしている。
エリア・マイ・リーザさんアリシアさんも同様に招き入れ、無事に入れる事を確認。
全員入った所でゲートを閉める。
特に問題なし。
「普通だね」
「リックと一緒かリックが認めた者なら大丈夫なのかもしれないな」
「ロボ馬車とニカドさんが外に置きっぱなしだな」
「フライに行かせようぞ」
フライちゃんがロボ馬車の方に飛んで行き、到着したら呼んでもらえるようにお願いしてある。
「ここがリックの家なんだね!」
「変わった構造をしているな」
「ここで履物を脱いでくれ、この家は土足じゃないんだよ」
「東の国の方でこんな文化のある場所を知っておるぞ」
この世界にも似たような文化の国があるんだな
さっき見たようにほぼ最強の結界?が張られているこの家の中なので、仲間たちは装備を外して休んでいる。
「今日はここで泊まってから明日戻ろうか」
「おお!そうしよう!」
と言っても食べる物が無いな・・・俺がこの世界に来てからしばらく経っている。
中身がどうなっているのか怖いが冷蔵庫を開けてみると、後ろで覗いていたアリシアさんが言うにはすべての食品は問題なく食べられますと言う事。
時間はかなり経っているはずなのに不思議と腐って無いんだな。
こっちの世界に来てから相当危険な物も食っているので腹も頑丈になっているかもしれないから気にしない事にしよう。
でも男の一人暮らし、レトルト食品・即席めん・冷凍食品・酒類位しか無い。
森の外からニカドさんを連れたロボ馬車が到着するが、ニカドさんには怖いのでロボ馬車で寝ますとあっさり断られたので、あとで即席めんを差し入れしたら凄く美味しそうに食べていた。
「こんなうまいものは食った事が無い」との事。少し味が濃いとも言っていたけど、この世界で生まれて初めてこんなに味のしっかりした食べ物を食べたのだとか。
俺はみんなに先に風呂に入ってもらう事にする。領都の宿には風呂が無かったからだ。体を拭く程度。この辺でさっぱりしてもらいたい。
「女性陣から風呂に入ってくれ」
「2人位しか入れないからな」
後から俺と入るなんて言われも困るので、先に入れてしまう作戦だ。
異世界ご都合ファンタジーだな、電気や水道は何処から来ているのか、誰が金を払っているのか・・不思議なのだが普通に使える事に感謝する。
「へぇリックの家にもお風呂あるんだね!昔は貴族だったの?」
まぁそういう認識なるわな。この世界の風呂なんて桶に水張って洗う位だし
「面倒な話は無し!とっと洗って来い!」
「えー使い方がわからないよ!一緒に入ろうよ!」
「リック!私もわからないぞ」
「リーザさん、エリア!シャワーもお風呂も遺跡街の家にあったよね!」
「あとは、こっちの青いボトルのここを押すと中から石鹸が出てくるから、このスポンジや布を使って体の汚れを落とす!、このピンクのボトルのここを押すと中からシャンプーっていう髪の毛洗う用の石鹸が出てくるから、これで髪の毛洗う!、この黄色いボトルのここを押すと、リンスっていう髪の毛サラサラにする石鹸が出てくるから、これで髪の毛をなじませてお湯で流す!」
「OK?」
「うーん、早くてわかんないよ!」
「エリアちゃん、私が聞いていたから大丈夫ですよ」
後ろでアリシアさんがちょっと怖い顔で2人を見ていた。
「アリシアさん、下着関係はこっちのネットに入れてから洗濯機へ先に入れて下さい蓋を閉めてこのボタンを押すと洗濯が始まります。上着関係は後で洗います」
話が進まないので女性3人で風呂に入る事になった。普通の家よりはちょっと広めだけど、あの三人だと狭いだろうな・・・リーザさんはデカイし。皆さんいろいろな所がデカイし・・。
「タオルやら着替えのズボンとシャツはここに置いて置きますね」
「はーい」
トニーとマイとミリアは一杯始めていた。
「リック、この火酒貰っているぞ!」
どうやら、こっちの世界ではアルコール度数が高ければみんな火酒と言うようだ
今トニーとマイが飲んでるのはリッター100円でアルコール度47%という何のアルコールが入っているのか分らない激安ウイスキー。安さに引かれて買ったは良い物の最初の一杯を飲んだら不味くて飲むのをやめた物だ。
「トニー?マイ?それ美味いか?」
「不味くは無いぞ、美味くもないけどな。トゲトゲしている酒だな」
良く分かってらっしゃる。さすが酒好きのドワーフ。
「ミリアは何飲んで・・・」
「柑橘の味がするの」
「お前それどうやって開けたんだ?」
ミリアはサワー缶を開けてグラスに注いで飲んでいる。この時代の人から見れば缶飲料なんて開け方わからないだろうに。
「ここに開け方の絵が描いてあるじゃろ。見ればわかるぞ」
さすがエルダーリッチ様、頭脳が俺とは違うんだな。
別の部屋から机を運び込み、全員が座れるようにセッティング。
この家にいつ戻って来られるのかわからないので、冷蔵庫の中身はリセットしてしまいたい。
冷蔵庫の中身の物を適当にぶち込んでスープを作ろうとすると、途中からマイが手伝ってくれたので、まともな物が出来そうだ。
「見たことのない野菜だね。肉なんかも少し違う?」
マイは野菜なんかも少しかじってみては味を確認して料理していく。
「このコンロは魔法か?火が出ないな」
「熱くなるから気を付けろよ」
コンロは俺が見る事にした。IHだと加減がわからないと思う。
水道なんかは遺跡街で見慣れているので特に驚く事も無かったようだ。
米も焚きはじめ、粗末ながらも飯の準備が進んで行く。
「マイ、飲みながらやっても大丈夫なのか?」
「全然問題ないよ」
47度の謎のウィスキーをストレートで飲みながら、調理中。種族の差だな。
「リック!お風呂から出たよ!」
30分位入っていたかな。案外早風呂だな。
「ブッ!なんだその恰好は!」
「まだ下着乾いてないみたいだったから、この格好だよ」
「上着があったでしょ!」
「熱いじゃん!」
3人とも裸にTシャツ。ちゃんとパンツ(ズボン)は履いてるよ。
色ガラ付きのTシャツだから中は見えないけど、3人のあの体形は隠せない。
胸の形がそのまま出ていて目の行き場に困る。アリシアさんとリーザさんは特に凄い。俺のTシャツでは完全に小さいのだ一応男性物のMサイズTシャツなのに胸の辺りがパツンパツン。
丈が足りなくてへそ出し状態になっている。
胸周りが大きい女性は着られる服が少ないと昔聞いた事があるが、これを見ると本当にそうなんだと実感した。
リーザさんは普段からタンクトップのような半裸みたいな恰好だから気にならないが、アリシアさんは少し恥ずかしそうで悪いことをしたなと。
ダッシュで自分の部屋に行き夏用パジャマを取って来て3人に渡す。
「ごめんなさい、リックさんこれも入らないです・・でも借りますね」
胸元だけボタンを外してパジャマを羽織るアリシアさん。凄く色っぽくて困ってしまう。
リーザさんは体格的に無理だった。彼女は身長180cm位あるのかな。俺より背が大きいし。
そんなやりとりをしていると
「マイ!俺達も風呂行こうぜ!」
「はーい」
2人は風呂に行ってしまった。あの二人は色んな意味で仲良しだ。
まだ3人は風呂から出たばかりなので、エリアのドライの魔法で髪の毛を乾燥させたりセットしなおしたりしている。女性の香というのかシャンプーの香なのか、同じ石鹸を使っているのに女性が使うと、こうも香が違うのかとか改めて思う。
「リックさん、このシャンプーとかリンスとかって凄く良い香りがしますね。髪の毛も簡単にサラサラ艶々に仕上がるんですね」
この世界に無い物だからな。
「持って行けますかね?できれば同じ物を作りたいです」
「大丈夫だと思うけど、同じものが作れるのかはわからないよ」
アリシアさんは同意が取れると嬉しそうに微笑む。凄く綺麗なのにかわいい。まだ18歳だからね。
ミリアが風呂に行かないのが気になるが、食事を始めようと思う
予め、ろくな食い物は無い事を言っておく。さっきマイが作ったシチューがメインだと。
「リックの故郷の味が食ってみたい」
というリクエストもあったが、そんなものは無いのでレトルトカレーと冷凍チャーハン等の冷凍食品をレンチンやらフライパンやらで調理していく。
大皿や鍋に料理を入れ、テーブルに並べる。
箸は使えないと思うのでスプーンとフォークを用意
生野菜も野菜室にあったのでサラダに加工。この辺の物が生で食える事はアリシアさんが鑑定済み。いろいろ不思議。
「トニーとマイとミリアはもう飲んでるんだよな。リーザさん、アリシアさん、エリアは何を飲むか?一応果実水もあるぞ。」
「ミリアさんが飲んでいる物を試してみたいです」
「私は果実水がいいよ!」
「私はエールがあればそれがいいぞ!」
エリアにオレンジジュースにアリシアさんはレモンサワー、リーザさんと俺はビール(この世界では飲酒の年齢制限は無い)
「それじゃ頂きます!」
夕食会がはじまった。
リーザさんの知りたいシリーズが始まる
「リック、この麺状の物はなんだ?」
「スパゲッティという小麦ベースの麺だな、水、塩、鶏卵なんかで作るらしいぞ」
アリシアさんは真剣に聞いている。
「トマトという野菜をベースにしたソースで味付けした物らしいぞ」
「トマトか聞いた事がないな。でも似たような風味の野菜なら知ってるぞ」
「こっちの茶色いシチューのような物はなんだ?」
「ああ、それはカレーだな。ライスにかけて食うと上手いぞ」
「ほぉ、カリーか?味も香りも似ておるの」
「ミリア、この辺にもカリーがあるのか?」
「いや、遠く南の国まで行かないと無いぞ。この辺ではスパイスという木の実や草の実が取れないからの。こんなところで食べられるとは思わんかったぞ」
カレーは貴重品らしい、まぁ次にいつここに来るかわからないので置いたままでもダメにするだけだからな。
「この鳥の揚げ物は美味いな!ビールと良くあうぞリック!」
冷凍から揚げだけどな
リーザさんはビールをゴキュンゴキュウン飲み干していく
彼女ご飯を食いながらもう500缶6本開けている。早いな。
俺はビールをやめて、ハイボールに切り替える。トニーとマイに取られた安いウイスキーじゃなくて、それなりのやつを棚から出して冷蔵庫から炭酸水と氷を用意する。
「魔法を使わずに氷が有るのですね」
何気なくアリシアさんが隣に来ていた。
「前に飲んでいた火酒の水割ですよね?私も頂けますか?」
「アリシアさんこれは炭酸割です。前も飲んでましたっけ?」
「リックさんと一緒に炭酸水を作りましたよ」
「ああ、そうでしたね」
グラスを用意し、氷で満たす。
ウイスキーを1/3ほど注ぎ、炭酸水をゆっくりとそそぎこむ。
軽くマドラーで2~3回かき回し
最後にレモンが無いので、レモン果汁を垂らす。
ハイボールの完成
「リックさん、これ凄く飲みやすいです。炭酸の味も全然違いますね」
「まぁ、俺の故郷の人達が一生懸命作った炭酸だからね。秘伝の製造方法とかあるのかもしれないよ」
アリシアさんは薄着でこれ以上俺に近づかれると色々と危険なので何となく脱出。
アリシアさんが、目でこちらを追っていたが、すぐに視線をそらして料理を摘まんでいた。
「アリ姉!何飲んでるの!」
いい具合にエリアが乱入してくれた。ナイスだエリア。
「リックぅ!酒切れたぞ!」
トニーとマイは4リットルのウイスキーを飲み干していた。面倒なので棚から死蔵品の”漢の5リットル!48度”と書かれた買って失敗した焼酎を出す。確か398円。クソ不味くて吐いた記憶のあるやつだ。
透明の酒だったのでマイは蓋をあけると中身の臭いを確認。酒であることを確認するとにっこり微笑んで、一気にジョッキに注ぐ
「不味くても知らんぞ・・」
二人で乾杯して
「リック!効くねぇ!いいよ!!」
「相変わらずピリピリするから製造方が特殊なのかもね」
ただの酔っ払いでは無いようだ。酒の感想をしっかり言っている
「リックぅ捕まえたぁ!」
トニーとマイの二人を見ていたら、リーザさんに捕まる。後ろからがっちり捕まえられ、首に腕を回しピッタリはりつくように俺の方に顔を乗せている。
「リーザさん、飲みすぎですか?」
「まらだいじょうだぞ」
「そういうのを飲みすぎって言うんですよ」
「ぜんぜんへいきよ」
リーザさんはぎゅーっと体を押し付けてくる。力が強いから体の密着感が凄い。おまけにサイズが合ってないTシャツ1枚だから俺もドキドキだ。
「酔っ払いじゃなければ俺もちゃんと相手するのになぁ」
と呟いた瞬間。
リーザさんが爆発したかのように真っ赤になっている。
呼吸と心拍数が異常に高くなり俺の方にまでその鼓動が伝わって来た。
非常に長い時間に感じられたが、多分数十秒。力が一気に抜けたかと思うと、俺は解放される。
「りっリック、私寝るね」
あらかじめ決めておいた寝室向かうリーザさんは顔も真っ赤だし首から下も真っ赤な状態だと思う。スタスタと部屋から出て行き、寝室に行ったようだ。
リーザさんとマイは一緒に俺の両親の部屋になる予定の部屋で寝てもらう事になっている。
「リックさんエリアちゃんを寝かせて来ますね」
2階にある俺の部屋にアリシアさんとエリアが寝る予定。
ミリアは妹の部屋かな。
エリアは酔って寝てしまったようだ。最初はオレンジジュースだったよな?
「すみません、私がリックさんと同じ物を飲んでいたらエリアちゃんも・・・」
あの時か・・まぁ酒も慣れていないから仕方ないな。
俺はエリアを抱っこして自分の部屋まで運ぶ。
「リックの臭いがするよ~」
寝言だけど恥ずかしい。臭いとか言わないでくれよ。
アリシアさんにエリアの事をお願いして、部屋を出ようと思った時、アリシアさんに抱き着かれる。エリアは寝ているので事実上2人だけ。
俺自身も驚いてしまい、言葉が何も出ない。
「リックさん、私も酔ってなければきちんと御相手してもらえますか?」
月明かりの差し込む部屋の中で美しい銀髪が反射するハーフエルフのアリシアさん。おれの想像を超える美しさとサイズの合わない俺のパジャマで色っぽさも倍増どころか脳内修正も追いつかない状態になっている。
言葉がなかなか見つからない。
「その時が来たら必ず」
もう、プロポーズなのか何なのか俺も良く分からない発言をしてしまったかもしれない。相手の取りようでどうにでも取られる。いや、今の状態ならOKって事だろうか?。相手をしてもらえますか?で「必ず」だからな。
今夜は俺も暴走しているな・・・
リビングに戻ると、トニーとマイが後片付けをしてくれている。というよりもまだジョッキ片手に飲みながら作業中。男の5リットルも空っぽ。
片付けが終わると、マイはベットルームに移動。トニーはソファーの上で寝転んでいる。
「ミリアは風呂に入らないのか?」
「・・・もう少し飲んでおるから」
「俺が入るけど、あとから来るなよ」
「・・・もう少し飲んでおるから」
洗面所に入り、洗濯機に上着を入れて洗濯を開始。
風呂の扉を開けたら、ミリアがいた。
「おまえ、さっきまでリビングに居たよな!」
「妾は先に風呂に入っていたぞ」
「さっきのあれは何だ!」
「秘密じゃ」
「もう良いわ!初めてでも無いからな」
「今日のリック殿は勢いが良いのぉ」
諦めて一緒に風呂に入る俺とミリア。
シャワーで体を温め、シャンプーやら体洗いやらを始める。
「そう言えばさきっきリーザとアリシアに何か言われていたの」
「なぜわかる?」
「どうするのじゃ、あの二人は本気じゃぞ。もちろんエリアもな」
「俺も色々考えているんだよ。最初はエリアとアリシアさんを守るって本気で考えていたからな。でも俺は意外と弱かったんだ」
「リック殿は弱い訳ではないぞ、まだ気が付いていないだけじゃ」
「リーザさんにも言われたよ。でもわからないんだ。結局俺一人では3人も守り切れない。俺がミリアやリーザさんが言うように強くてもダメだと毎回思うんだ」
「そういう時は妾達を頼れ。お主一人で考え込むな」
「お主がアリシア、エリア・リーザを諦めたとしよう。あの容姿じゃ言い寄る男は星の数ほど居よう。ハーフエルフのアリシアとLV40オーバのリーザなら王族からも声がかかるかもしれんし、精霊使いのエリアなら上位貴族に嫁ぐ事も可能じゃ」
俺の頭の中から3人か消える事が想像出来ないというか否定している。知り合って1年も経っていない関係だがこれほど強く思っているとは思わなかった。
トニーとマイとの付き合いも長いが、あの二人が離れていく事は容易に想像が付く。俺の頭の中では二人はいずれ結婚してパーティから離れる日が来る事。
でも、アリシアさん・エリア・リーザさんの3人が俺の傍から離れていく事を想像すると何とも言えない気持ちになる。
「お主の中でも正解が見えているのではないか?」
「長湯は体に悪いの。先に出るぞ」
今まで何となく恥ずかしくて流してきてしまった面を本格的に考え直さなければならいと思う。
風呂から上がった俺は、ふと時計を見る。
スマホのバッテリーが切れていた為、時間や日付の感覚が分からなかったが、壁時計を見ると時間を刻んでいる。時計の下にはデジタルで日付が表示されていた。
「俺がこの世界に来てから、この部屋の時間は1日経っていない?」
俺は急いでスマホの充電を行う
テレビを付ける。こいつは1週間分全番組を録画する機能が付いているからだ。
俺が帰宅した時間辺りのTV放送を再生始める。
この辺はテレビを見ていない。
俺が就寝した時間頃
まだ、何も起こっていない
緊急速報の字幕。富士山噴火。自衛隊スクランブルの字幕
TVニュース速報にて
深夜なのに日中のような明るさの報道
上空からの光線が降り注ぐ映像
画像には光に包まれた巨大な何かが映っている
いくつもの建物が消失。未曽有の大惨事のテロップ
その後電波が届かなくなり。録画が止まる
「まさか、またあれが起こるのか・・・」
「ミリア何か知っているか?」
「リックすまぬ。今は話せぬ。冗談抜きの話だ。妾はお主に全協力する事を誓う」
「何が起こるんだ?」
「こればかりは時を待つしかないのじゃ、お主が転移者である事も妾は知っておったが、この映像を見て確信した。映像の中でいくつもの建物が消失と言っておったな、あれは全て転移させられておる」
俺が転移した理由は何なのだ?
「ん?リック、どうした?」
トニーが目を覚ます。ミリアが口に×マークしているので秘密にしろと言う意味なのかもしれない。テレビの電源を切り何事も無いようにミリアと話だす。
「妾は寝るぞ、寝室はあちらだったな・・・はたして寝られるのかの・・」
「リック俺も寝るぜ」
何だか急展開を始めたが、訳もわからないのでとりあえず寝る事にした。
ミリアも時を待つしかないとか言っているのでそのうち何か展開があるのだろう。なる様になるしかないのさ。
翌日、何か使えそうな物が無いか家の中を探す事にする。
両親の趣味のサバゲー装備。玩具だけどこっちの世界の武器よりもよっぽど武器っぽい。
俺の持っている鉄の剣はどう見ても発泡スチロールよりも弱そうな剣だからだ。
親父の模造刀の方が本物に見える。
妹のコスプレ衣装一式と模造武器とか色々。
俺の車とかも使えそうだけど、今は温存しておく事にする。ガソリン補給が出来ないからな。
サバゲ用のエアガンがどの程度使えるのか試してみると、玩具はおもちゃだった。
この世界の物に比べると凄く重厚な作りではあったけど期待外れとなる。
分解して仕組みがわかれば新たな武器製作に役立つと思い、一応持っていく。
衣装関係はアリシアさんに鑑定してもらうと、未知の素材が使われていてオリハルコンよりも強度があるという事。
ミリアの話では我々がこの家に入れるのと同じで、ここの物は全て俺が許可した者達しか使えないみたいだ。
オルワール領都で装備の一部が燃えてしまったので、いい感じに補充出来たと思う。
俺はこっちの世界の服装から親父の部屋にあった某デルタフォース映画のファスナー・ノリス風の装備のように、上下黒の戦闘服のような物に防弾ベストを着用。ハンドガンと模造ナイフの装備とこの世界の鉄の剣の構成。他の装備品は一応持っていく事にする。
アリシアさんは某指輪映画のエルフの衣装のまんま。中世ベースの映画だったからこの世界でも違和感全然なし。劇中では男性エルフだったけどね。
エリアは某魔法使い映画の「ハリーはバッター」の学生服みたいなのを着ている。エリア自身が魔法使いだからすげぇ似合う。というよりかわいい。
リーザさんは胸元やボディラインが強調されたコンバットスーツと言うのかな。革製で知らない人が見るとバイク乗りの人が着ているライダースーツにも見える。前の半裸のような装備よりはよっぽど目のやり場に困らない。
トニーとマイはモロにマッド〇ックスな世紀末革ジャン的な装備。モヒカンだったら「ヒャッハー」言いそうな感じだ。
と衣装と言うか装備が一新される。
でもいろいろ思う所もあるが俺の妹は何を考えてこんな衣装をそろえていたのかが怖い。
武器類は本人の希望でそのまま。ミリアは衣装変えしていない。興味があって色々な衣装を見ていた程度。彼女の場合は偽装なのでいくらでも外見は変えられるとの事。
あとは使えそうな道具・資料や着替え等をバック等に詰めて、俺の家を後にする。
「ここに俺の家があるから、この先ここから何か起こるのかな」
「何か意味があるかもしれんな」
昨日の夜TVを見ていた俺とミリアだけの秘密になってしまっているが、時期が来たらみんなにも知らせる事にしよう。
ミリアが黙ってろって強く言っていたのでその辺は意味があると思うので、その通りにすることにした。
朝飯にご飯を炊き、昼飯用のおむずびを作る。外で待機しているニカドさんにおむすびを差し入れると、やっぱりうまそうに食っていた。
デザート代わりに出したプリンが女性陣には好評。こっちの世界にもありそうだが、作る時に「蒸す」という話をしたら、菓子類ではあまりやらないらしい。この世界にはプリン自体がまだ存在していないのかもしれない。母親の書棚に「誰でもできる簡単料理」の本があったので一応そんなのも持っていく。あとでシリカさんに研究してもらおうかなと。
戸締りを確認し奇跡的に遭遇した我が家と別れを告げ、遺跡街へと帰る事にする。
今後の話の流れで重要なお話にしたつもりです。
次話からいつものペースに戻りますので、リックが転移してきた秘密に関してはもう少し後に書きたいと思います。




