パーマの街との交流
デンジャーゾーンのメンバーはしばらくの間、遺跡街周辺の探索や地下街でのレベル上げ等を繰り返している状態だ。
このメンバーは案外金食いで意外と金が貯まらない。
一応魔獣の討伐やキャノからのビジェイの件とされる謝罪金等が送られはいるが、遺跡街での住居の購入やデンジャーゾーンメンバーの備品購入費等がバカにならず、異世界転移や転生で良くある『現代知識で金儲け!』みたいなパターンには今の所なっていない。日々の生活だけで案外アップアップだったりする。
他の冒険者から見れば高給取りに見えそうだが、それなりに支出も多いから案外上手く行くものではないと。
そんな時、メイドのシリカさんから話が来る
「リック様、パーマ街のお屋敷が修理完了したと連絡がありました。」
数か月かかると言われてはいたが、慌ただしく日々を過ごしていたせいか何時の間にかに数か月が経過していた訳だ。
遺跡街の状況は既にミエスさんや地下街組合の人達が色々なルール作りをしてパーマの街と遺跡街の交流自体はスタートしてる。遺跡街にハイームさん達に作って貰ったダンジョン入口があるので、パーマの街の冒険者組合の人達が来てダンジョンの初期調査を行い、地下街からの冒険者組合で構成された冒険者組合遺跡街支部が設置されていた。
最初はパーマ街の冒険者組合が勝手に組合を作るなと難色を示したが、マンダムさんや地下街メンバーがとても優秀だった為、パーマ街冒険者組合の組合員をうまく丸め込んで遺跡街冒険者組合が正式に稼働始め、冒険者組合がパーマ街公認設置されれば、あとは自動的に他の地域からの冒険者達が遺跡街のダンジョン探索や遺跡街周辺の魔獣討伐等で賑い始めている。
遺跡街のダンジョン自体が1000年以上手つかずの地域なので、採掘や財宝目当てで訪れる冒険者も多いはずだと思う。
俺達はパーマの街で買った屋敷を確認する為に馬車で目指す。
俺は手綱を握っているだけで基本自動運転。操作しなくても勝手に目的地に着くが、さすがに不審に思われるので運転席には座っているけどね。
「遺跡街に来る人の数が凄く増えたなぁ」
街道整備が完璧に行われているので一攫千金を求める冒険者やそれらに商品を売ったり遺跡街の珍しい商品を求める商人達が数多く出入りしているし、仕事を求めて近隣の村から引っ越して来る人達も多いようだ。
基本的な開拓はミリアのアンデット(人間偽装)が行っているので24時間疲れを知らない奴らが作業中で、下手をすれば現代の農機や重機よりも効率よく作業しているように感じる。
ハイームさん達は遺跡街の修理とか改築等が主な作業なので作業分担もされているようだ
移住等で周囲から引っ越してきた村人・農民たちがミリアのアンデットが開拓した土地で作物を育て仕事にしていると言った具合。
何処で噂を聞きつけるのか、元々住んでいた村がよっぽど酷い状態だったのか・・流れ着く村人の数も尋常ではない状態になっている。
「来年辺りは本格的に交易が始まるかもな」
街道には地下街からの冒険者達が警備巡回しているため、盗賊や魔物も出没せずにすんなりとパーマの街に到着した。
拠点となる屋敷に早速移動すると旧ラベール商会の別荘だった屋敷はきれいに改修され、燃えて崩壊していた部分はミエスさん達が使用するための施設に改造済み。
馬車で入口前まで移動すると、10人近いメイド達が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
一同が頭を下げての挨拶。普段こんな体験をしない俺は少々ビビり緊張モード中。
現代にもメイドカフェなんて所もあったかもしれないが、俺は行った事が無い。だからこんな経験もしたことない!
アリシアさんは慣れているのかメイド達に挨拶をして会話をしている。こういう時はアリシアさんみたいにすれば良いのか?
「ご主人様、挨拶が遅れました。私はこの屋敷のメイド長のゼオライトと申します」
第一印象はキッチリしている系のお姉さんという感じ。
肩付近で揃えられた髪の毛、頭にはメイド帽子?がチョコンと乗っている
ロングスカートのメイド服?はロングスカートで少しクラッシックな感じの服だ。
「確か遺跡街にも5人ほどメイド達が来ていましたが、ここに居るメイドさん達は、すべてのあの一件の方達ですか?」
メイドゴーストだったのかは一応確認しておかないとならない。
「いえ、ここにいる私を含め5人はかつての一件でお世話になった者達で、こちらの5人はこの地で新たに雇い入れました」
マジか。俺はそんなこと一つも聞いてないし、どうやって給金払っているんだ?
「リック様、ミエス様達からの資金にて給金は問題なく支払われていますのでご安心下さい」
ミエスさんが何をやってるのか全く知らないのだけど・・・。
「リック!お屋敷に入ろうよ!こんなところで立ち話していてもツマンナイよ!」
エリアとマイが飽きたようなので、挨拶や自己紹介は適当にして屋敷の中に案内してもらう。
「こちらが改修された元、あの部屋です」
元メイドゴースト達はあの部屋があった所は若干だけど嫌な感じなのかもしれない。自分達を殺したヤツが狂って焼身自殺した部屋だった場所だ。
部屋の中に入ると遺跡街の地下に埋まっていた軌道エレベータ地帯の作りに似ている。
この世界が中世ならば、軌道エレベータのある場所は俺が住んでいた現代よりもさらに未来な感じを想像させる構造だ。まぁ自立型のロボが稼働している時点で技術レベルが全く違う文明だったのだと思うけど。
「あっ、リック様お帰りなさい」
仕事中だったミエスさんが気づき対応してくれる。ミエスさんって俺専属なのか?と思うほど良く対応してくれるので「彼女は遺跡街の広報担当だったはずなんだけどなぁ」とか思っていると、パーマ街との交流担当にされたらしい。
屋敷のこの部屋はその関係の事務処理なんかをしているらしいけど、アナログデータの取集と調査等は直に行って調査しないと正確なデータが取れないそうだ。この部屋にも10人ほどのスタッフがこの世界の情報を収集中との事。
「戦争でもやるのかな?」
冗談で言ったつもりだったが、遺跡街というよりも軌道エレベータ施設の自衛の為の警備ユニットしか無いとの事。ミエスさん達の時代の決まり事で、軌道エレベータには軍事ユニットを持たない、配備しないと言う基本ルールがあったので現在もそのままの状態なのだとか。
そんな訳でこの世界(この時代)の知識や情報が少なすぎるので自衛の為の情報収集を行っていると強く説明された。
ちなみに遺跡街の方は自給自足出来るので金に困る事は無いそうなのだが、こっちの世界に合わせるために情報収集等に金がかかるらしく、その辺は遺跡街に商売をしに行く商人達を相手に手数料を請求したりしてこの世界のお金を入手しているとの事。まぁ他にも手広くやってるようだけどあえて追及はしない。
「あと、重要な案件があります。」
ミエスさんは深刻な顔をして俺にそれを伝える
「アリシア様エリア様ともう一人に対して3人まとめて奴隷組合から捜索依頼が出ているという情報がありました」
この件は放置するとマズイかもしれないと俺は思った。もう一人というのは多分俺の事かもしれないからだ。
「ミエスさん、奴隷についての情報はありますか?」
ミエスさんは現状で把握している奴隷に関する情報やルールを説明してくれた。詳しく説明すると凄く長くなるのでここでは省略するけど。
奴隷契約自体は地下街で無理やり無効化したため、契約自体は残っていないはずなのだが、名指しで捜索依頼が出ている以上、この場所もいずれバレてしまう可能性もある。
屋敷を購入したのは俺だが、ここが元ラベール商会の建物で不動産屋でアリシアさんが業者に対して色々話をしてしまっている事等は冒険者組合にも知られている情報だ。
奴隷を契約を解除する場合は
・契約者が不要と感じた時に契約解除の魔法を実行する
・契約者が別の契約者に譲渡したとき(再契約)
・奴隷が死んだ時(自動解除)
奴隷が逃げた時の処分
・奴隷の場所は探索魔法で大体の場所が把握できる
・逃げた奴隷が近距離であれば遠隔で殺害が可能
・冒険者組合や奴隷組合に捜索依頼か処分命令が出される(価値があれば捜索で、無ければ見せしめの意味で殺される。処分の場合は奴隷組合がメンツをかけて処分部隊を送り込む事もある)
奴隷契約を意図的に解除する例
・契約主が奴隷契約のままだと都合が悪い場合(奴隷にした人物が政治的等情勢の変化で都合が悪くなった等)
・金銭による解決(奴隷の稼ぎは契約者の持ち物なので基本これは無いが、売った人物が買い戻したい、時々慈善事業みたいな事をする金持ちが居るレベル)
今回俺達は死んだ事になっているので奴隷契約の自動解除に相当している。本来契約の自動解除状態の奴隷は奴隷組合で書類上処理されてそれで終わり。気にもされないハズなのに、誰かが探していたという事になる。
もう少しパーマの街でゆっくりして居たかったが、緊急事態のようなのでこの問題を解決するべく奴隷組合に出かける事にした。
リック・アリシア・エリアの奴隷時代を清算する為のお話がスタートします




