オーガ国のマッソWドリンク
ワイバーン航空隊が遺跡街と連絡等を兼ねて定期的に往復をしている。物資輸送はほとんど行っていな状態だが、今回は私宛という事で特別に物資が輸送された感じだ。
「キャノーラ様リック様より荷物が届いております」
キャノーラ宛の荷物の中には例のマッソWドリンクが入っている
「結構早く到着したな」
重要と書かれた説明書が一緒に入っている。
「マッソWスーパーライトとマッソWゴールドか、スーパーライトが子供用でゴールドがデラックスの強化版なのか」
以前リーザ殿が殴ったゴロツキに使った物がデラックスで私が服用したものがライトという事だ。私自身には副作用のような物は無かったが
”健康状態の良好な人には絶対に使うな”
と書いてある。
一般には流通していないので副作用がとか色々書いてあるが、私は専門では無いので読むをの止める。
「ヒューレ、早速だが近くの病院や孤児院にこのドリンク剤を配ってくれ」
「何なのですかこれは?」
「リック殿とアリシア殿が作った元気の出るドリング剤という物らしい」
「そんな怪しい物を病院等には配れませんよ」
そうだな、ヒューレの言う事にも一理ある。我が町の英雄リックが使っているドリング剤?という物だけでは知名度や信用度が無さすぎるのは事実である。
「私も一度使った事があるが、戦傷等が綺麗に消えてしまったのだ」
「キャノーラ様が綺麗になった事が存じておりますが、高級ポーションをご使用されたのかと思っておりました」
普通はポーションを利用したと思われるだろ。しかし古傷が完治するほどのポーションとなると高額であり王族と言えど古傷位で使う訳には行かない物なのである。
「ヒューレ、お前飲んでみるか?」
「私は特に健康上問題ありませんので、健康に良いのであればメイド長に勧めてみてはいかがでしょうか?」
私はメイド長を呼び出す。確か今年で50歳だったメイド長、長年私に仕えていてくれる信用できる人物だ。髪の毛には白髪も混じり、小じわの増えた顔であり年齢相応の熟練のメイドと言って良い風格もある女性だ。
事の経緯を説明し、服用してもらえるか頼んでみる事にした。
「キャノーラ様が信用されている物でしたら、有難く頂きたいと思います。」
メイド長にマッソWスーパーライトと書かれた小瓶を手渡す。
「それでは頂きます」
メイド長はおそるおそるそれを口に含むと
「おいしい!昔、下級ポーションを使った事がありますが、あれは不味くて飲む物では無いと思っていましたが、これは別物です!!」
柑橘系の風味付けがしてあり、苦みも無ければ変な臭みも無いと言う事だ。
「何か体に変化はあったか?」
「いえ、特に変化は感じられないですが・・でもとても美味しく頂けました」
「そうだな数日様子をみてくれ」
そう言うとメイド長は部屋を出て行った
アリシア殿が作った物だからただの美味しい水という事は無いと思うのだが、私は数日様子を見る事にする。
翌日
「メイド長おはようございます!」
若いメイド達が朝の準備に取り掛かっている。私は今日も朝薄暗い時間から仕事を始めているのですが、今日の目覚めはとても良かったのです。
「んっ!?メイド長??」
若いメイドが何か驚いた表情でこちらを見ています。
「どうされましたか?」
「メイド長、綺麗になったと言うか、若くなってませんか?」
朝も薄暗い中で身支度をしていたので鏡もロクに見ずに仕事を始めたので自分の顔等をあまり良く確認していませんでした。
「何をバカな事を言っているの?」
「でも、全然雰囲気が違いますよ」
本当なのか、からかわれているのか良くわかりませんが、手袋を外し自分の手を確認すると、いままでシワと手荒れの手が綺麗になっているではありませんか!
改めて顔を手で触ってみると、かさついた顔に弾力が戻っているのです。
すると若いメイドの子が手鏡を持ってきてくれます。
「これ、私?」
鏡を見て唖然としました。年齢相応と言われれはそうなのかもしれませんが、明らかに労働者の顔ではありません。健康状態を追及し何のストレスも無く年をとった女性の顔がそこにありました。貴族の婦人でもこの状態の顔を見た事はありません。
肌トラブルも一切なく、シワの多かった顏にはハリが戻って居ます。白髪交じりの頭は変わっていないので髪の毛には効果が無いようです。
「みんな!メイド長が若くなったよ!」
若くなったと言うのは正確には違うのでしょうが、体の状態が恐ろしいほど快調になっているのは事実のようです。
キャノーラ様にこの事実をお伝えしなければなりません。
私はキャノーラ様の部屋のドアをノックし入室の許可を得ます。
「キャノーラ様失礼します」
そこにはハッ!?という表情のキャノーラ様が居ました
「メイド長だよな?」
「はい、このような状態になっています。考えられるのは昨日いただいたドリンク剤の効果だと思われるのですが」
「ここまで変化が起こるのか」
話を聞きつけたヒューレが入室して来ます。
「メイド長なのか!?」
ほとんどキャノーラ様と同じ反応です。
私は体の状態についてキャノーラ様とヒューレに説明します。周りは若返ったと大騒ぎしているようなのですが、個人的に考えると肌の状態は凄く良くなっているが、筋力等についてはほとんど変わってない事などを説明します。
おそらく、体の状態が刺激やストレスを全く受けてない状態に戻っているのではないかと推測。
「ところで、メイド長は体に不調等は無かったのか?」
このお屋敷の労働環境や私の健康管理は完璧にこなしていたつもりですので、この歳でも十分に健康状態でした
「いいえ、おかげ様で全くの健康状態でした」
キャノーラ様は一瞬ビックリした表情した後にすぐにいつものキャノーラ様に戻ります。
「メイド長、報告ありがとう。また変わった事があったら教えてくれ」
そう伝えられ、私は仕事に戻る事にしました。
「キャノーラ様、メイド長に渡す前に健康状態について確認しませんでしたか?」
年齢も年齢だから何処かしらに不調があると思って、健康状態についての確認は特にしないで
渡してしまったが、1日であんなに効果があるとは思わなかった。
「しかし、このマッソドリンクの効果は凄いな」
「下級ポーションではあのような事は起りませんので、効力的には別系統の物かもしれません」
「お父様に贈るのは少し考えた方が良いか?」
「もう少しメイド長の様子を見た方が良いかと思われます」
あまりにも効果が強力すぎるマッソドリンクだったので、私はしばらく様子を見る事にする。
それから数週間が経つ。
メイド長の髪の毛から白髪の量が減っている事が確認できた。
それ以外は前の報告と同様だが、疲れにくくなった等の細かな変化はあったようで、悪い物では無いという事は証明される。
「キャノーラ様!イオス様が大変です!」
ヒューレが血相を変えて執務室に飛び込んで来た。
イオスとは私の父であり、オーガ国の国王である。
長年病を患って来たが、回復系ポーションを使用しつつ、跡取りが育つまで現役を続けるつもりで居たのだ。私は第三王女であり、2人の兄が王座をめぐって争っている。
しかし今父が亡くなると、あの兄2人ではこの国は戦乱の国になる可能性が高く、兄たちには父が病気である事を隠していたのだ。
私はヒューレと共に王宮に急いで行く事になる。
最初に会ったのは第一王子のゴビア、身長は2メートルを超えオーガ族らしい筋骨隆々の暴力の塊のような男だ。
「おう!キャノーラ来たのか、父上が死にそうだぞ!いよいよオレの時代だ、ハッハッハ!」
父が死にそうと言うのにこの男は自分の事しか考えないのだろうか?
私はゴビアに軽く挨拶をするとその場から移動する
次に会ったのは第二王子のビジェイ、身長は190センチ程度、一見細身の体ではあるが、人体兵器とまで言われ武道に精通している。
「キャノーラ、今頃来ても父上はもう長く無いだろう。父上が亡くなったら、私を国王として推してくれよ」
この兄も父上の事よりも自分の事しか考えていない。
父の死期を知ったのかここ数日で第一王子、第二王子派閥が露骨に目立つようになってきた。
ヒューレの話によると派閥が3等分されているようで、残りは様子見の状態であるという事だ。
私は父上の私室に入る。
「おお、キャノーラか・・・すまんなこんな状態で」
オーガ王は強さの象徴でもあるが、ベットの上の父上にはそんな面影はない。
痩せた体、やせ細り骨のような顔、顔色もとても悪い。
「医者や神官は何をやっていたのだ!」
「キャノーラよ、どうやら医者か神官のどちらかに、王子派閥の物が居たようだ」
上級ポーションは手に入らないのか?と看病のメイドに話をしてみたものの
「よせ、キャノーラよ突き詰めれば王子達がやった事。おそらく上級ポーションも手に入らぬだろう、ワシに知恵と力があればこのような事にもならなかった」
イオス王は弱々しく語る。子供に裏切られた事実で悲しさも見える。
「お父様、実はリック殿という冒険者がおりまして」
「ああ、お前の街をワイバーンから救った英雄と報告を受けておるぞ」
父上にマッソドリンクの事を説明する。服用した私やメイド長の話などを含めて慎重にそして正確に。
「お前が信用している物であれば試してみようか、おそらくワシはもう長くない」
通常ならば国王が服用する物は念入りな検査や確認が行われるが、今回は特例というよりも本人の希望という事でマッソドリンクの服用が認められる。
私は父上にマッソWゴールドの小瓶を手渡す。
「これを飲めば良いのだな」
父上が瓶の蓋を開け、一気に中身の飲み干した
「ポーションは不味いが、これはそれほどでもないな、美味くもないがな」
今まで飲んでいたマッソドリンクは全て美味しい物だったのだが、父上が飲んだ物は美味しくないそうだ。私は一瞬冷や汗が出る。もしかして違う物なのでは無いのだろうか?
リック殿には父上用にと説明していたのでまさか、何か違う物を渡されたのか?と不安が頭によぎる。
「キャノーラよ最後かもしれぬ。良く聞け、あの2人ではこの国はダメになる。お前も王座争いに参加せよ。お前なら上手く国を纏められるかもしれぬ。たのんだぞ」
マッソドリンクを飲んだ父上は顔が真っ赤になり、大量に汗が滲み出ている。飲んでからまだ数分しか経ってない。
呼吸も荒くとても苦しそうな状態に変わったのだ。
容態の急変により周りの医師や神官達が一斉に慌ただしくなり、父上の様子を見る為にベットを囲む。
ある神官は上位回復魔法を唱えるが、全く効果が見られない
「あっ・・・ありえない、イオス王の体が魔法を拒絶している!」
隣の医師は体の状態を確認しているようだ
「なんだんだ、この状態は、これでは何時亡くなってもおかしくない状態ではないか!」
体温は異常に高く検診するのも難しいほどに上昇
脈拍もオーガ族とは思えないほどに激しく脈打っている。
「これではイオス様が高温で死ぬ!冷やすのだ!」
神官は冷却系の魔法を唱えるのだが
「だめだ、イオス王に魔法が効かない!」
私はその場に座り込んでしまう。私がマッソドリンク等を勧めなければ、父上はもう少し長生きできたかもしれない。
「キャノーラ様は別室でお待ちください」
専属メイドに連れられ、私の部屋に連れて行かれた。扉の外には多分兄派閥の兵士が立っている。もしも父上が亡くなった時にその原因を作った私だ。監視の意味もあるのだろう。私は部屋から出る事が出来なくなってしまった。
翌日、話を聞いたゴビアが部屋にやって来る
「キャノーラ、父上になんて事をしてくれたんだ!、お前の対応は後日正式に決めるからな!
俺が国王になったら少しは恩赦でもやるわ!」
なんともごもっともなお話である。父上はまだ無事なのだろうか?
今の話だと亡くなったとも、なんとも言えない感じだが。
何も続けて来なくても良いのに、ビジェイがやってくる
「キャノーラ、父上に何をやったんだ?確かお前に変な物を渡した冒険者が居るらしいな、そいつも見つけて殺さないとだな!」
リック殿の事も筒抜けか、あの神官なのか医者なのかどっちだかわからないが、兄達と通じているのだろう。
二人とも部屋を出るときは何やら笑いながら出て行く。
専属メイドが扉を開け、部屋に飛び込んでくる
「キャノーラ様!至急、イオス王の元へ!」
ついにこの時が来たのか・・
イオス王の私室に入ると、そこは騒然としていた
神官や医師の姿は見えないのだが、部屋の奥から大きな声が聞こえてくる
「肉だ!肉もってこい!!、血が全然足りないんだ!」
一体何が起きているのだ??
しかしそれは聞きなれた声であり、かつて元気だった頃の父上の声。
「キャノーラ!来たか!、ワシ復活だ!」
はぁ?
やせこけた父がベットの上で肉を大量に食っている。
「王様、そんなに一気に食べられると体が壊れますよ」
メイドから何やら言われているようだが、父上はそれを無視して肉を食っている
「なんの肉でもかまわねぇ!とにかく肉だ!体が肉を要求しているんだ!、生でもかまわねぇからどんどん持ってこい!あと水だ!墫とジョッキで持ってこい!」
そんな食べ方をすると確実に腹が壊れそうなのだが、父上はありえない量の肉を次々と口の中に入れていく。体の何処にそんな肉が入るスペースがあるのかと不思議な位だ。
「キャノーラよ!あのあと死にかけたらしいのだが、目が覚めたら腹が減ってな!これは完全に全盛期の食欲だ!そしてこのあふれ出るパワー!素晴らしい!」
そして1週間が過ぎる
表向きは危篤中面会謝絶の国王となっているが、私室の中ではマッチョな国王が激しく筋トレ中だった。
「キャノーラ!ワシ!完全復活だぞ!」
イオス王も2メートルを超える大男だ。筋力量で言えばゴビアよりも2周りほど大きい。
「父上、私の知っている父上よりも強そうに見えるのですが・・」
「当たり前だ、この体はワシが全盛期の時の状態かそれ以上だ!」
父派閥の信用のおける神官が一緒に居る。
「鑑定の結果、イオス王の病魔は完全に消滅しています」
この短期間で病魔(病気)が完全消滅。呪い等と違い病魔の場合は完治までに時間がかかるのがこの世界の常識、たとえ高級ポーションを服用しても完治させるには時間がかかる物なのです。それを1週間という時間でしかも完全消滅させるというのは私も信じられなかった。
「ワシが飲んだ、あのマッソWゴールドという飲み物は何なのだ!、ワシもビックリだぞ!」
「私もビックリです」
「とりあえず復帰後1発目は王子どもをブチのめしに行くか!」
オーガ族は力が優先の種族、兄達でも今の父には叶わないと思う
あの二人が協力する事を考えれば、勝てる可能性もあるかもしれないけど、今の兄達では無理な話かもしれない。




