レッドゾーン、遺跡街を発見する
比較的まともな冒険者グループ レッドゾーン 目線のお話で
リック達はチラリと出てくる程度です
オルワール領の領都を拠点としている俺達レッドゾーンは、オルワール領とパーマ領の中間にある遺跡の調査依頼を受けた。
どの位からなのかは不明だが、かなり昔からエルダーリッチが支配している遺跡で近づく事は不可能な遺跡だったはずだ。
王都から直接の調査依頼でオルワール領都の冒険者組合にも依頼があり、他の街の冒険者協会にも同じ調査依頼が来ているようだ。
・初期の報告では人の目撃情報があった
・遺跡近辺で野営の跡が発見された
・以前のような物騒な気配が消えた
と、情報はこれだけであるが調査報告の結果によっては報酬がかなり美味しい依頼なので俺達はこれを受ける事にした。
なお、予備知識として過去に遺跡を調査したときは何も価値の有るものや重要な物は発見できなかった。
その後エルダーリッチに支配される。
王都は軍を率いてエルダーリッチの討伐に向かうがアンデット軍団の出現にて討伐奪還に失敗。
エルダーリッチ自体は遺跡から出てこない為、近づかなければ攻撃してこない。
過去の歴史で何度か奪還を試みたが全て失敗。
無理やり奪還しても地形的にも全く何も無い土地で、しかも隣はオーガの国があると言われている。そんな所にそこまでする価値は無い遺跡と言う事で不可侵条約が締結。
以降数百年の間、そのままになっていた場所だ。
しかし、最近になって人の目撃情報があったのだ。王都が黙っているハズが無い。
俺達は街道から過去に遺跡に最も近いとされるルートを選定し森の中を進んでいる。
森と言っても数百年前までは遺跡へ移動するための道として利用されていた所だ。
過去に石畳があったであろう道には大木が生え人間が入る事を拒んでいるようだった。
確かに前に来た時と比べて邪悪な気配?が全くしない。この辺に現れる魔獣はLV20以上なので初心者冒険者はまず訪れない場所だ。遺跡に近づくほど凶悪化し、LV25以上のアンデット等が徘徊している事もある。俺達なら2~3体は相手に出来るだろうが、一般の冒険者が遭遇したらまず即死になるだろう。
森の中を1日程移動したが、野営中も高位のモンスター等は出てこなかった。普通の森と同じ感じなのである。さらに1日移動すると、地図にない道が表れた。
美しく整備された道が続いている。
「リーダー、この道は何なのだ?」
「俺にもわからん。方角と距離的に地図のこの辺だろうか?」
オルワール領の領都の中の道と比べても明らかに道の完成度が違う。石が綺麗にカットされ、それらが隙間なく敷き詰められている。
通常の石道の場合多少デコボコしているのだが、この道は真っ平に仕上がっている。どんな人物がこんな山の中にこのような美しい道を作ったのか?
元々エルダーリッチの支配地である土地だ。いろいろと考えると恐ろしい事しか思いつかない。
「リーダー!上に続く道がありますから行ってみましょう」
仲間が周囲に危険が無い事を確認しているので、そのまま俺達は道を登っていく。
何時間歩いただろうか、時間は既に夕暮れ時になっている。
目的地の遺跡のハズなのだが、真新しい壁に囲まれた街が見えて来た。
俺達は警戒度を高め、遺跡に接近する。
次の瞬間、俺達の警戒度はMAXになる。壁の周辺ではスケルトンが徘徊しているではないか!
「リーダー!ここはヤバイです。至急撤退を提案します!」
見えるだけでも20体以上のスケルトンを確認できる。スケルトン自体はLV20前後なので単体であれば対応も簡単であるが20体は絶望的な数である。
すると場違いな声が聞こえる。
『すみませーん、冒険者の方ですか!?』
ゲートの方から女性が走って来るのが見えた。
「こんなところに人間がいるのか?」
『迷われた冒険者の方でしょうか?』
見慣れない服装の女性である。貴族の服とは違うが一般人とも違う服装で見たことも無いデザインの服装をしていた。見た目は美しい方に入るのではないだろうか?好感が持てると言った感じの女性で、完全にこんな場所にいるべき人間ではない。
「迷われたとはどんな意味なのか?」
俺はあまりに場違いの女性に質問してしまう。
『この町は外からの冒険者の方を迎える準備が出来ていないものでして、いくつものカムフラージュ処理をしてあったのですが』
『あ、あとその辺で作業しているスケルトンは気にしないで下さい。害はありません』
「おまえ!エルダーリッチの配下か!」
『すみません、そのような関係の者では無いのですが、ここでトラブルを起こすと後々大変ですので出来れば冷静に対応して頂ければと思います』
「お前は何なんだ!」
『はい。この町の入場管理をやっている者です』
「ここには人が居るという事なのか?」
『はい。多種族が集まって街を構成しています。そのような事情で人間族との交流を現在検討している段階です』
「ここはエルダーリッチの支配地ではなかったのか?」
『いいえ、現在は魔導士とその配下の方が街の防衛を担当しておりますが、争いごとが起きなければ平和な状態になっています』
「あのスケルトンどもは何もしてこないのか?」
『はい、特に問題を起こさなければ何もしません。ところで街を見学されますか?時間も遅いので本日滞在する事をお勧めしますが』
「リーダー、こんなにアンデットが徘徊する街が安全なのか?この女も場違いすぎるぜ」
「調査依頼の件もあるし、ここまで来るまでに全く危険が無かった事を考えると、街の様子も見てみたい気もする」
「確かにそうなんですが、スケルトンですよ」
パーティ間で色々話し合った結果、今日は街の中の宿を借りる事にした。
『では入場ということですね。入街税は今の所頂きません』
俺達は名簿に記入し、冒険者カードを提示し入場が認められた。
街に入ると一番に目が付くのはアンデット系モンスターが徘徊していること。徘徊というか働いているようにも見える、荷台を引き荷物を運送していたり、建物の修理をしているのが確認できる。
受付係も言っていたが、他種族の街というのは本当のようだ。
人間族、人間族に近い種族から、獣人種、中にはモンスター?とも思える種族も見えた。それらが普通に暮らしている感じだ。
「多種族というのは本当のようだ」
そして美しい街並み。元々の森の木々を綺麗に使い自然と調和しつつ建物がそれらの景観を壊さないように配置、建築されている。
ただ、街の規模に対して暮らしている人の数が少ない、夕暮れだからなのか?若干寂しい感じもする。
俺達は宿屋を目指すことにした。場所はさっきの受付嬢に聞いている。
真新しい建物が立ち並ぶ中に、完成して間もないと思われる、宿屋を見つける。
「いらっしゃいニャー」
出迎えたのは猫人族のようだ。人間族の街ではそのかわいらしい容姿と人なっつこい性格の為かペットとして飼われている事もあるが、性格が悪い者は奴隷なので普通に働いている所を見るのは初めてである。
受付で注意事項を説明される。多種族が暮らしているのでトラブルを起こさないようにというのが最優先事項となっていた。あとは部屋の使い方等?普段説明されない事も説明された。
部屋に入ると驚いたのが、部屋に明かりがついている事だ。普通はランプや魔核を利用した薄暗い明かりがあるだけなのだが、この部屋は部屋が全体的に明るいランプ?のようなものが壁に設置されていた。受付の説明では出入口のボタンで消したり、つけたりする事が出来るらしい。どんな魔法道具なのか気になる。
続いて驚かされたのが、水場と思われる場所とかまどのような炊事場スペースがあり自炊も出来るようになっている。水場には水瓶等は無く、蛇口?が設置されていた。
蛇口を操作すると蛇口から水が流れ出てくる仕組みだ。しかも流れ出てくる水は透明であり清潔な感じがする。
そして、トイレと呼ばれる便所。貴族の家でもこんな設備は見たことがない。貴族の便所は便器の中に桶が用意されており、用が済んだら使用人が片付ける仕組みであるが、ここのトイレは用を済ませたらボタンを押すと水が流れ排泄物を綺麗に流してくれる仕組みだ。
「なんて贅沢な水の使い方をするのだ。これが普通の宿なのか?」
「リーダー!こっちに来てください!!!」
驚くことに、風呂が設置されているのだ。
【赤い蛇口からはお湯が出ます。やけど注意】
風呂なんて貴族の屋敷くらいにかない。しかもお湯が蛇口から出るのか!?
レッドゾーンの仲間たちは争うように風呂に入っている。
しかも水が使い放題なのである。
「リーダ!俺初めて風呂という物に入ったかもしれない。家じゃ水桶位ですからねぇ」
明らかにこの宿屋は文明レベルが違う。
確かに一部貴族の家には蛇口を通し水の出る仕組みもあると言う。しかし、それは大量の使用人を使い水を上層のタンクの中に入れ、主人の使わない時間に配管を洗浄するというとても手間のかかる設備なのである。
風呂場で豪快に水を使うなんて事は貴族の家でも難しい事なのだ。
パーティメンバー全員が風呂に入ったら、酒場に飯を食いに行く事にした。
酒場はその街の情報を得る為には有効な場所だからだ。
木造風の建物に入るとそこは熱気にあふれていた。本当に他種族の街を実感できる。
沢山の冒険者が居るのだが、俺はここで疑問に思う。この冒険者は何処から来て何処に行っているのか?という事なのだ。
街の外では見かける事は無かった冒険者達、入町の時の受付嬢も外からの冒険者は入れないような事も言っていた。
しかし、ここの酒場には沢山の冒険者達が居るのである。
丁度、ドワーフと思われる人物が気分よさそうに酔っぱらっているのを見つけた。
「すまんが聞きたい事がある」
「おっ、兄さん達見ない顔だね」
「ああ、今日ここに来たのでな、良い狩場があったら教えてほしい」
「街の東の方は獣が多く出るようになったそうだぞ。相変わらず北はダメだな。オーガまで出るようになっちまって俺みたいな低レベルでは危なくて行けないよ」
「ほぉ、オーガが出るのか。討伐部隊は編成されないのか?」
「無理無理、あいつらLV35越えだせ、危なくて近づけねぇよ」
「大丈夫なのか?」
「今の所危険は無いみたいだから、近づかなければ大丈夫だ」
信じられない。オーガという驚異がいるのに近づかなければ大丈夫だとは。オーガは凶悪であり、しかも知能も高い。遠方にはオーガ族の国があると言われている。ほとんどが群れで生活しているが、生活圏が違う為、人間と争う事はほとんど無い種族でもある。今までこの遺跡はエルダーリッチが支配していたのでオーガに動きが無かったが、支配力が低下した為にオーガの動きが活発化しているのか?、人間族の生活圏に侵入してくるかもしれないのだ。
俺はこの男に酒を驕り、情報を引き出すことにした。こういうヤツが居るととても助かる。男は気分を良くして色々喋り出したが、
「出身はどこなんだ?」と質問した瞬間に男は喋るのをやめてしまう
「にいさん達、ここの人間じゃないのか?」
俺はしまった?と思った。どこの地域でも時々聞いてはいけないワードがあるのだ。
「出身地を詮索するのはここじゃナシだせ」
これだけ他種族がうまくやっている街だ、出身であれこれ言われてトラブルになるのを避けているのかもしれない。
「すまん。知り合いにお前の同族が居たのでな、つい聞いてしまったよ」
「そうか、ならいいんだ」
男は再び酒を飲み始める。俺は男に挨拶してその場を去る事にした。
店を出る途中、人間族のグループを目撃する。
「リーダー、あの人間、もしかしたらですが、あの時の奴隷じゃないですかね?」
「たしかあいつはマッドブラッドの奴らとダンジョンに潜って消息不明になったと聞いているが・・・こんな所に居るとは思えん」
オルワール領のダンジョンからここまでかなりの距離があるし、ヤツは7層で行方不明になったと一時期有名になっていた。有名になった理由はマッドブラッドの神官が死んだ事だ。
あのパーティは他人を犠牲にして仲間の安全を確保する奴らだったのでメンバーが死ぬ事はほとんど無かったからだ。
「今確認を取るのはやめよう、ここはヤバい雰囲気がする。早朝に撤収し、冒険者組合に報告する事が優先だ」
「了解、リーダ」
翌朝、俺はこの他種族とアンデットの徘徊する街の事を報告するため、早々に街を出発したのだった。




