地下通路へ
厳重に管理され人間の俺達は近づく事も出来なかった場所、俺は初めてここに来る。サイクロプスのジェット達が出入りしている地下街からの下層行のゲートだ。
基本的にLV40以上でないとゲートを通してもらえないのだが、リーザさんの同行者として今回は特例で許可が下りる。
長い通路を抜け地下街から1階層下がるだけで純粋な人間族は居ない。ハーフ種族や完全に獣人?のような一般的にモンスターと呼ばれるような容姿の種族が中心となって生活しているようだ。
だからと言って殺伐としている訳ではなく平和な空間が広がっている、人間の街がそのまま異種族に置き換わっているような感じ。地下街に行き来している種族もいる為、他の種族の人達も人間族の俺達に対して気さくに挨拶等をしてくれるのだ。
まぁ見慣れない種族が多いから何となく怖い感じがするけど、敵対していないから素の表情なので、まぁパッと見は怖いよ。ジェットも凄く怖い顔しているし。
俺達はリーザさんに付いて行くと、また特殊なゲートを通る事になる
「リーザか!久しぶりだな。大分強くなったようだな!」
「お久しぶりです、今日は国に一度帰ってこいと連絡がありまして」
リーザさんは冒険者組合発行の書類をゲートキーパの人に見せる
「そっちの奴等はなんだ?」
「私の同行者です。素性は問題ありません」
「おいお前ら!ここの秘密は絶対だ。リーザの信用問題にもなる!口外するんじゃねぇぞ!」
俺は何の事だが解らず、一応了解しておく。
重厚なゲートがオープンされると、通路が続いていた。
「長い廊下ですね、鑑定結果からすると軌道エレベーターにも似ているのですが、こちらの物はそれよりも新しい時代の物のようですよ」
見た感じ、未来的とは違いこの時代の設計に近いけど、この時代では作れないようなテクノロジーが投入されているような場所だ。
「調べると魔素を利用して稼働しているようですね・・どうやって動いているのかしら」
俺とアリシアさんは頭を悩ませながら、この施設が何なのかを予想していたが、何のために有るのか見当もつかない。
水平だと思って歩いていた場所も、後ろを見るとかなり下って歩いていたようだ
キャノは周囲を眺めているだけ、ミリアも特には気にしてない感じ。
「ねぇね!リザ姉!あっちに変な物があるよ!」
直径10メートル程の円盤上の物が空中に浮いている
リーザさんは何事も無かったかのようにその円盤に飛び乗る
「みんなもこっちだ!」
俺達もリーザさんに続き円盤に飛び乗る
「リザ姉!これなに?浮いてるよ!」
周囲を見ると、他にも円盤が浮いているのが確認でき、もう故障して動かなくなった円盤も転がっていた。
「中央の方にみんな集まってくれ」
リーザさんがボタンを押すと円盤の周囲に光の膜が展開される
「リザ姉!魔法壁が展開されているよ!どうするの!?」
続けてリーザさんは操作台のレバーを倒すとゆっくりと円盤が動き出す
「リーザ、これ動いてますわ!どうなっているの!」
キャノは某馬車レースの時から少しだけ乗り物恐怖症になっている。
あの時はごめんなさい
「リーザさん、これなに?」
「私は父さんに教えられてこれで、地下街まで来たんだ」
リーザさんの身の上話が始まる。
戦士の父と魔法士の母に英才教育をされ早々に親元を放された過去を話されると、すこし悲しくなるような話をされ、地下街で結果としてはリーザさんは冒険者として成功し、彼女にとっては良い方向で生活が始まっていた。
実家からの連絡も年に数回有ったが、帰国を促す様な連絡は今まで一度も無くそのまま時間が過ぎて行ったのだが、今回突然の呼び出しとなった。
そんな話をしながら円盤の速度はどんどん高速化していく。
最初は照明の形を認識出来る速度だったが、今ではただの直線の明かりでしか認識出来ない。
風切り音も無い空間で俺達はその場で座って仲間たちと会話中だ。それしかやる事が無い。
「リック!すごい速度だね!でも何が何だかわかんないや!」
「俺も速度を比べる対象物が何も無いからわからんよ」
流れる照明の速度が異常な事位、そんな状態だった。
時々高速ですれ違う物体があるのでリーザさんに聞いてみると、俺達が乗っている物と同じ物がすれ違っていると説明される。
「リック、地下街にコショウや変な食材や物が売っている事は知っているよな?」
リーゼント周辺の地上世界ではコショウは高級品、基本南地方の特産物のようなのでリーゼント国では生産できない。
以前俺の家に行った時にカレーを出したらミリアがコショウの入手が難しくてカレーはこの辺では珍しい食べ物だと言っていた。
「定期的に特別な許可を受けた商人がこの通路を利用したり、私のような冒険者も利用する事がある」
地下街自体が秘密なので利用は高レベル冒険者や許可を受けた商人に限られ、高レベル冒険者達は地下街目当てではなくて、地下街の更に下層を目指すそうだ。
俺に新たな疑問が浮かぶ。
「この世界の上限レベルって50じゃないんですか?」
「それは人間族の一般的な常識だな。私のような獣人族の世界だとLV50では太刀打ちできない魔獣も存在しているしな」
「オーガ国もそうですわ」
オーガ国にあるピクシスという都市はLV40以上でないと行かない方が良いとイオスさんに警告された記憶がある。どんだけ過酷な地なのか。
「人間族ってレベル的に結構厳しい世界なんですね」
「勇者がおるぞ」
出た!勇者!
「ミリア、勇者も居るのか!」
「詳しくは言えんが、突破者と言われるLV50以上の奴等じゃの。若くして才能や身体的に恵まれた奴等がいるのじゃ」
「リーゼントでは聞いた事がありませんね」
「遺跡街、ミリアの所も勇者が来てたらヤバかったのか?」
「リーゼント周辺は勇者が誕生したという話は聞かんの。まぁ妾の所に来ても相手にならんがの」
俺はミリアに勝ってるんだけど・・俺って一体何なんだ?
「ねぇリザ姉!、どこかで休憩できない?」
「どうしたエリア?」
「ごにょごにょごにょ・・・」
「悪かった、次の停留ポイントで休憩にしよう」
円盤が減速を始めると通路脇の停留ポイントと呼ばれる場所に停止する。
既に何台かの円盤が停止している状態で、先客が数グループ居るようだ。
昔は何かの商店だったのだろうと思われる建物があるが、今は機能していないようだが設備自体は綺麗に清掃されている。
「この通路の利用者は完全に身元や経歴のはっきりしている人達だから警戒しなくても大丈夫だぞ」
リーザさんは先客達に挨拶に行っている。遠くから見た感じだと獣人と蜥蜴人のようだが、ここでは人間族の俺達の方が珍しいので一応警戒されないように挨拶に行くのはここでの利用ルールの一つなのだそうだ。
「昔は結構栄えていたみたいですね」
アリシアさんが店の構造や規模を見ながらそんな事を言っていた。
「私も知らないが、大昔の話だろう、そのころは利用者も沢山居たかもしれないな」
この施設もかつては多くの利用者で賑っていたのだろう。
休憩を終えた俺達は再び円盤に乗り移動を開始する。
その後移動と休憩を繰り返し円盤での移動が1日ほど続くと終点とされる目的地に到着するのだった。




