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偽勇者の俺が、うっかり魔王を倒してしまった件 ~ちがう!ちがう!本当は勇者じゃねぇんだ!!  作者: nayaminotake


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第5話 LEVEL5

「村長!!」




「おおぉ早かったな、キンニック」




(ふん!やはり、偽物だったか…おおかた魔性で強化された魔物に恐れをなして逃げた…といった所か)




「大変だ、勇者様が!」




「なんじゃ騒々しい、モリキーン少しは落ち着かんか」




(大変?もしかしたら森から出て来た魔物にでも殺されたか?クククク、ざまぁみろ)




「森が!!森が!!」




「なっなんじゃ引っ張るでない、リュウリュよ!」




(偽勇者の死体とか…鑑定の為にいちいち本国の聖教国に報告して死体を届けないといけないから面倒なんだよな…一晩放置して魔物に綺麗さっぱり食わせりゃいいだろうに…)




アフレド大陸北側に位置する小さな農村の村長、ソンチョは、村に寄生する偽勇者アザルの正体を暴くため、あえて魔性が強くなる満月の日を狙い、村で筋肉だけは自慢出来る筋肉馬鹿の3人を勇者の共につけ、北に広がる魔の森へと送り出した




しかし満月となる夜を待たずに、その筋肉馬鹿3人だけが村に戻って来た。




馬鹿ゆえか説明に要領を得ない3人に引きずられ、魔性が強く影響している北の魔の森の入口付近へ…




魔性が強く影響している北の魔の森――




魔性が強く影響している…?




魔性が強く―――?




「おい、お前ら今夜は満月なのに何故、魔性が感じられない?」




「そ、それが勇者アザル様が森の奥に現れた魔獣――動物の頭を3つ持つ大きな熊…いや、猪?、それとも狸?」




「えぇ―――い、そんなのどっちでも良いわ!その頭が3つある魔物が出て来てどうした!」




筋肉馬鹿Aことキンニックは、視力20.0を誇る超視力の持ち主だが、残念ながら猪と狸の区別もつかない馬鹿だった…まぁそれは置いておこう




「そ、そのデカい魔物が俺たちの方へ向かわない様に、そして森から村に出て行かないようにと、デカい魔物を誘導して森のさらに奥へ走ってたんだ!」




「なんと!?勇者アザルがお前たちと村を守ったとな!?俄かに信じられんな」




「そして、勇者様が森の奥へ向かってすぐ、こうして魔性が…」




「確かに…魔性が綺麗に消えておる―――という事はアザル様が魔性の元凶たる魔物のボスを…」




「う―――ん、でも魔性が消えるすこしまえに、心臓が握りつぶされるかと思う程の悲鳴が聞こえたような…聞こえてないような…どうだったか…忘れてた!」




「そこは大事な所!わすれちゃダメだろ!」




筋肉馬鹿Bこと、モリキーンは魔性の感知力は普通の人の10倍はあるが、いかんせん筋肉を育む事以外は基本なにも覚える気がないので、数分前のこともすぐ忘れる…




「だ、だけど、勇者様は俺たちの筋肉が栄養不足になってはいけないってほら―――」




筋肉馬鹿Cことリュウリュは、ロキから預かった袋の口を開ける




「なっ!?これは、干し肉にチーズ…それに村人が勇者様の旅の足しになればと差し上げた貴重品の数々……」




「まさかアザル様は最初からそのつもりで……」




「ん?アレ?これって勇者様から貰ったんだっけ?―――まぁ良いか!」




筋肉馬鹿Cことリュウリュは基本なんでも自分の都合が良いように解釈するポジティバーだ、そのため預かった物は、いつの間にか自分の物としてしまう、天然で手癖の悪い馬鹿だった




「あぁ―――儂は何と愚かなことを……きっと勇者様は儂がアザル様を”偽物”だと疑っていると知って、村の為、魔物のボスを討伐したら黙って村を去ろうと―――うっうううう…儂が浅はかでした…申し訳ございませぬ勇者アザル様」




村長であるソンチョは涙を浮かべ満月が煌々と輝く夜空を見上げると、両手を握り祈りを捧げる




「どうか、我らが英雄、勇者アザル様の旅路に女神イシスの加護を……」




「籠を」「篭を」「箱を」




村長の真似をして筋肉馬鹿3人も祈る




……なんか違うけど





そんな謂れのない祈りを受けているロキは、アフレド大陸北方に広がる森(元魔の森)東部付近を彷徨っていた。




「はぁ―――くしょいっ!!!」




「だぁ―――クソッ、こりゃ誰か噂してんな…あんだけやりたい放題したんだ、村じゃ相当憎まれてんだろな……」




ロキの脳裏には寝込みを鬼の形相の村人たちに襲われるビジョンが思い浮かぶ




ガクガクブルブル




「縁起でもねぇ…現実にならない内に逃げだして正解だったぜ」




「―――しかし」




周囲を見渡しても木、樹、草、木、樹、草……




「だぁぁぁぁ!出口わい!」




いまだに回復しきらない右足を庇いつつ、ブロードソードを杖代わりにして前に進むロキ




「しかし…急に魔物が大人しくなった気がするな…」




昼前に森に足を踏み入れた時は、あきらかヤバそうな魔物の咆哮や雄叫びが森中にこだましていたが、今はなんとも静かなものだ…




たまに遭遇するのは、最弱に分類される魔物アルミラージくらい




それもロキの気配を察知すると、すぐに逃げ出してしまう




―――まさに今も4匹が一斉に散り散りに逃げて行った




「あぁ―――また逃がしたぁ―――腹減った―喉乾いた―身体が痒い―!」




非常食にと村人から貰った干し肉とチーズは、他の荷物と一緒に筋肉馬鹿の一人に預けたままだ




なんなら全財産がその袋には入ってる…




いつでも逃げ出せるようにと、用意周到に準備していたのが仇となった




「クソッ、3ヶ月の苦労が水の泡だぜ…たくっ」




文句を言いながらも前に進むしかないロキ




『主、もうじきだ』




「ちっ…またオッサンの声の幻聴か、若い童貞が好物のエロい熟女への音声変更を要求する!!」




うっそうと生い茂る樹の枝に向かってそう毒付くロキ




ドスッ




鈍い音と共に、足元に何かが刺さった




「はぁ?何だこれ」




ドスッドスッドスッ




「どわ―――!」




足元へ次々撃ち込まれる弓矢




ロキは無様にも尻もちをつくと、ドスッと股間付近の地面に矢が刺さる




「まてまてまて!降参、降参だ!」




情けなくも両手を上げ降参を宣言したロキ




奥へ視線を向けると、矢を構える無数の神官兵がロキの方へ照準を絞っていた




その中で銀色に輝く鎧を身に纏った銀髪の長い髪をハーフアップにした騎士風の女性が近寄って来る




「貴様、ここを北の魔の森で何をしておる!」




スッと腰から抜いたレイピアをロキの喉元へとつきつけ鋭い視線で睨みつける




「な、何って…魔物を討しようと中に入って…迷ったんだ」




「討伐!?他に仲間は!?」




「みんな森には入ってないから、今は俺一人だ(元々筋肉3馬鹿は仲間じゃねぇし)」




相変わらず俺のことを野党か何かと思ってるのか騎士女のレイピアはジワジワ俺の喉元へと食い込んでくる




「ん?貴様その手の甲…すこし見せろ」




俺れは左手の甲を女騎士へと見せた




「!?これは勇者紋!…金髪に青い瞳…勇者様…なのか?」




(俺にはわかる…この女騎士は村の連中とは違う、今まで何人も偽勇者を見破ってきた…都会の擦れた官僚女の貫禄がにじみ出てる)




「お、俺は……」




(どうする?どうする!偽勇者を名乗るか、ただの旅人だと惚けるか?どっちが正解だ…)




「何故答えない…貴様は勇者様かと聞いている」




「お、俺は――ゆ、勇者アザル……だ」




あちゃー勇者を名乗っちまった……




「そうか、貴様は勇者様か―――」




「捕らえろ!」




女騎士が右手を上に掲げると、木陰に隠れていた十数名の騎士が一斉に俺を取り囲み身体を縄で縛られた




(これはいよいよヤバいかも……)



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