表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セトウチに灯る光  作者: Leon Black Angel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/52

第十七話『裂かれたヴェール』

夜は、ただの休息の時間ではない。

心が静まるその時、

見えないものが語りかけてくる。

それが夢なのか、

それとも――警告なのか。

石段を上った先にある寺は、静寂に包まれていた。

尾道の丘に佇むその場所は、どこか現実から切り離されたような空気を持っている。

レオンたちはゆっくりと中へ入った。

木の床が軋む音だけが響く。

奥から、一人の僧が現れる。

年老いたその姿は穏やかだったが、その目には深い疲れがあった。

僧は静かに頭を下げる。

「……待っておりました」

ララが少し驚く。

「私たちを……知っているんですか?」

僧はゆっくり頷いた。

「最近、この地は乱れております。あなた方のような方が来るのではないかと……感じておりました」

沈黙。

レオンが前に出る。

「この場所で、何が起きている?」

僧の表情が曇る。

しばらくの沈黙の後、彼は口を開いた。

「夜になると……来るのです」

空気が少し冷たくなる。

「影が」

ナンドが眉をひそめる。

「やっぱりか……」

僧は続ける。

「最初は一人、二人でした。ですが今は、ほとんどの者が見ています」

その声は震えていた。

「彼らは語ります」

ゆっくりと、言葉を紡ぐ。

「“ヴェールは裂かれた”と」

全員が息を呑む。

「“もはや救いは存在しない”と」

レニの拳が強く握られる。

「ふざけたこと言いやがって……」

僧は首を横に振る。

「それだけではありません」

その目が、恐怖に染まる。

「争っていた者たちが……手を取り始めています」

沈黙。

ジラの目が鋭くなる。

「……統合されてる」

僧は頷く。

「まるで、何か一つの意思に従うように」

そして、静かに告げる。

「やがて……すべては闇に沈むと」

風が吹き抜ける。

誰も言葉を発せなかった。

ララが一歩前に出る。

「……大丈夫です」

その声は優しかった。

「私たちは、そのために来ました」

僧は静かに目を閉じる。

「どうか……この地をお救いください」

そして、ゆっくりと顔を上げた。

「今夜は……ここにお泊まりください」

ナンドが周囲を見回す。

「……ちょうどいい。外も危なそうだしな」

レオンは頷いた。

「世話になります」

――夜。

寺は完全な静寂に包まれていた。

風の音すらない。

全員がそれぞれ横になっている。

だが――

誰一人、深く眠れていなかった。

やがて。

夢が始まる。

――海。

荒れ狂う水。

巨大な影が浮かび上がる。

島々が飲み込まれていく。

橋が崩れ、街が沈む。

尾道の坂道が割れ、寺が崩壊する。

人々の声。

叫び。

絶望。

そして――

深海から、目が開く。

巨大な存在。

すべてを見下ろすように。

声が響く。

『すべては沈む』

『すべては一つになる』

『救いなど――存在しない』

闇が広がる。

光が消える。

――その瞬間。

全員が同時に目を覚ます。

「――っ!!」

荒い呼吸。

汗が流れる。

ナンドが起き上がる。

「今の……見たか?」

レニが舌打ちする。

「同じだ……全部」

ララの手が震えている。

「島が……全部……」

ジラは何も言わない。

ただ、確信していた。

「……これは夢じゃない」

レオンが静かに言う。

「警告だ」

外を見る。

夜はまだ終わっていない。

だが――

確実に、何かが近づいている。

第十七話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は戦闘を抑え、「恐怖」と「予兆」に焦点を当てました。

影の言葉、僧の証言、そして夢によるビジョン。

すべてが一つの方向を示しています。

物語は今、地域の異変から“世界規模の危機”へと変わり始めました。

次回は、この予兆が現実へと変わる瞬間が描かれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ