お宅の娘さんをスパッゲティにさせてくださいーその1ー
タクシーを運転手ごと圧縮して、
パチンコ玉のようにしたあと、適当にその辺に放り投げた。
冨田の家は草木が生え散らかし、全く手入れがされたいないようだった。
インターホンを何度も鳴らしたが反応がなかったため、
雑草を踏みしめながら家の周囲を伺った。
居間の電気はついているので、居留守を使っているなと思い、
鍵のかかったドアを能力で開けて入った。
玄関先には、包丁をもった冨田の母親が立っていた。
目の下には扇状のクマが色濃く広がり、頬は瘦せこけ、
疲弊しきった日々の陰影を、顔面にこれでもかと落とし込んでいた。
ただ、死に追いやられた野犬のように、目は血走り、息遣いは荒かった。
お願いがあってきました。
早くでていきなさいよ!
そんな不躾なこと言わないでください。
あんた自分が何したかわかってるの!?
まぁ落ち着いてください。
出てけぇ!
包丁を振り、牽制してくる彼女を金縛りのように拘束した。
win-winなお話を持ってきました。
彼女を渡してください。彼女をいただければ、
それ相応の額を支払います。あなたは彼女の世話から解放されるし、
あなたが大好きなお金も手に入る……
ふざけるな!
口に溜まったつばきをまき散らしながら叫んだ。
あの娘をあんな風にして!いますぐ元に戻しなさいよ!
どういう風の吹きまわしですか?あなたは男に入れ込んで冨田さん……
じゃなくて、莉夏さんと碌に向き合ってこなかったと聞いていますが。
だからって、娘があんな風にされて、なにも思わないわけないでしょ!
ちょっとわからないです。
私は能力を使い、彼女に触れずに、咽喉を徐々に締め上げていった。
手荒な真似をしてごめんさい。でもまずは話を一通りきいてください。
彼女は苦しそうに息を漏らすだけで言葉を発することができなかった。
スパッゲティ現象って知ってますか?
ブラックホールって引力がものすごくて……
私は先ほどの本屋で買った本を取り出すと、予め端を折っていたページを開いた。
人が突入すると……ほら!こんな感じになるんですよ!
例の可笑しな挿絵を指さして、彼女に見せた。
これ、莉夏さんでさせてほしくて……
彼女の目が見開いた。
ダメですか?
動けず、声も出せあい彼女の体はひどく強張っていた。
察するに、それほど憤怒にかられているのだろう。
私は咽喉のロックのテンションを若干緩めた。
どうでしょう?
どうでしょうって……どうせ私が嫌と言ってもやるんでしょ……
まぁ……かもしれないですね。
ならどうしてこんな話をもちかけたの……?
金を払わなくたって、無理矢理連れて行けばいいじゃない……
私が……実の母親が……娘を差し出すわけないでしょ……
体裁ですね。まぁぶっちゃけ、あなたのことはどうでもよくって。
ほら、一応世間体とか気にしておいたほうがいいじゃないですか。
それに言い訳のひとつでも作って置かないと、
私を管理している団体の連中がうるさいんですよ。
私は小言を言われるのを恐れずに、好奇心を満たすことができる。
あなたは、あなたにしては不相応なお金を手に入れる……
よかったですね、莉夏さんを産んで。
私がそう言うと、彼女は血涙を流した。
最初はギョッとしたが、恐らく拘束された状態で、
身体にかなりの力を入れたからか、瞼かどっかの血管が切れたのだろう。
マジ?漫画みたい!と過った歓喜が一瞬で霧散した。




