お宅の娘さんをスパッゲティにさせてくださいーその3
この女は私の鼻を捩じ切ったあと、娘を2階から手を引いて連れてきた。
すいません。気が利かなくて。
よく考えたら、せっかくの娘さんの晴れ姿なんですから、
お母さんに見てもらわないわけにはいきませんよね。
この場でやらせていただきます。
そう言うと、莉夏は宙に浮き、空中で一文字に寝そべった。
まずは固定してっと。あの女がそう漏らすと、
娘の顔や足に、双方から強い力が加わったのか、
万力で挟んだかの如く、顔も足も縦に間延していた。
変型するほどの咬合力を加えられているにも関わらず、
破裂に至らないのは、あの女の能力によるものなのだろうか。
その間、娘はずっと、地鳴りのようなくぐもった悲鳴を上げていた。
準備は整いました。
じゃ、今から娘さんをスパッゲティにさせていただきますね。
幸いなことに、この家、無駄にだだっ広いので、
莉夏さんを心置きなく引き伸ばすことができますよ!
この女の口調は、私からなにか感情を反応を引きだそうとしているかのようだったが、
目の前の凄惨な光景や、痛みのせいで私にはすでにこれっぽちもの余力も残っていなかった。
えいっと発すると、真横に引き伸ばされていった。
徐々に、本当にスパッゲティの麺ように、細長くなっていった。
その光景が異質すぎて、それがどのような痛みを伴うかも
想像することすらできないが、莉夏は獣の咆哮のような悲鳴をあげていた。
そんな悲鳴にユニゾンするように、あの女は高らかに笑っていた。
莉夏さん!安心してください!
意識は保てるようにすでに改造しています!
原子レベルに至るまで、いっしょにがんばりましょう!
娘は私の目の前でどんどん搾り上げられていき、みるみる細くなっていった。
こんな状態でも意識はあるのか、どのような機構で発しているのか分からないが、
いつもの不明瞭な母音を無理やり繋ぎ合わせたかのような発音で、お母さんと叫び続けている。
さて、あと一押しで、原子レベルまで分解されちゃいますが。
さすがにそこまでいくと、いくら私でも意識を保たせることはできないんで。
なにか最後に一言あれば、言っちゃってください、お母さん。
鼻の出血が喉元で溜まっていたせいでろくに声を出すことができなかった。
ただひたすら、ごめんね、ごめんね、と胸の内で反芻することしかできなかった。
だんまりですか。冷たい人ですねぇ。まぁいいです。
あいつは引き伸ばされて宙を漂う莉夏に向かって、
両手を掲げ、胸を広げて声を張り上げた。
じゃあ莉夏さん!フィナーレといきましょう!
莉夏はますます伸びていき、ついには髪の毛ほどの
細さになってしまった。肉眼で捉えるのが困難になっていく。
そのうち、絶え間なく続いていた莉夏の叫びが止んだ。




