↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
101/104

25-2 好景気の光と影②

 翌日、神太郎は街を軽くぶらついた後、カフェに入った。テラス席にてミルクたっぷりのコーヒーを飲みながら、昼下がりの街並みを眺めている。


「はぁ~。昼間っからカフェでお茶とは優雅だな~、俺」


 初夏の爽やかな空気を味わいながら、コーヒーを一啜ひとすすり。ただの下級衛士じゃ中々出来なかったリラクレーションも、マフィアを乗っ取ったお陰でやれる余裕が生まれた。異世界であろうとスローライフを味わうには金が必要なのだ。


 すると、そこに本日の連れが現れる。


「おう。来たか、ケードル」


「よう、神太郎」


 それはケードル・マーベッツ侯爵公子。嘗てクレハに言い寄り、神太郎と殴り合い? をした太っちょ貴族である。(EP10・『姉の妹』より)


 実は神太郎は彼のその男気に感心し、あれ以来(よしみ)を結んでいたのだ。


 ケードルが対面に着いてストレートティーを注文すると、早速話に花を咲かせる。


「久しぶりだな。クレハのことは諦めたのか?」


「俺も男だ。完全に芽がないと分かればキッパリと諦めるさ」


「その割には固執していたようだけど?」


「そりゃ、一度失敗したぐらいで諦めていたら男じゃないだろう?」


「成る程、確かに……。で、新しい恋を探し中か。でも、侯爵公子ならいくらでも紹介や縁談があるだろう?」


「妻に迎えるとなれば相応しい女性を選びたい。自分の目でな」


「うん、立派なもんだ」


 そしてストレートティーが届くと、話題は近況のことに。


「ケードル、そういえばお前って仕事は何をしてるんだ?」


「王国軍・第一軍団・第一騎兵連隊所属・第四騎兵中隊、中隊長」


「軍人さんか。そっちも忙しそうだな」


「ああ、この間も運輸局の護衛の任があって一昨日帰ってきたばかりだ」


「運輸局って謂わば国営の運送屋だよな。毎日大量の大型牛車を回している……」


「国営だからその護衛も王国軍に任せられるわけだ。お陰で安心安全と荷主たちからの注文が殺到しているらしい」


「民間の運送業者も冒険者とかを護衛をつけているらしいが、正規の軍隊と比べれば信頼性は段違いだよなー」


「国を護る軍隊を運送の護衛に回すのは反対者も多かったが、宰相が推し進めたらしい。今のところ大正解ってところか。今の宰相になってからキダイの景気は良くなっていく一方だ」


「仙兄か……。もしかして国の護りを俺一人に押し付けるつもりか?」


 お陰で門番の仕事は多忙である。彼が望むのんびりとしたスローライフからは遠のくばかりだ。


「さて、神太郎、そろそろ行くか」


「お? 待ってました」


 そして、二人は揃ってカップを飲み干すと席を立った。




 街中を行く神太郎とケードル。


 今回はケードルが食事をご馳走してくれるそうだ。美味いステーキを食わせてくれるらしく、神太郎も昨日からウキウキである。


「こうやってステーキをご馳走してもらえるのも好景気のお陰か」


「馬鹿にするな。景気に関係なく馳走するときはするさ。俺は男だからな」


「で、どんなステーキなんだ?」


「スナウサギのステーキだ」


「スナウサギ?」



「西方の砂漠地帯に棲むウサギで、肉が柔らかくて美味い。レアがお勧めだ」


「ほう、太っちょのお勧めなら期待出来るな」


「うるせえ」


 やがて二人が通りの角を曲がろうとした時だった。


「いて」


 突然尻餅をつくケードル。先から歩いてきた男とぶつかってしまったのだ。


 「おい、大丈夫か?」と手を貸して立たせてやる神太郎。一方で、相手の男は無視してそのまま行ってしまった。


「何だ、アイツは」


「尻餅をついただけだ。やれやれ、移民が増えたせいでああいう躾のなっていない輩が増えてきた」


 ケードルも何もなさそうなので何より。


 二人は改めて歩き出した。


 ……。


 ……が、すぐに立ち止まった。ケードルが。


「どうした? 持病の痔が破裂したか?」


「俺は痔じゃない」


「じゃあ、何だ?」


「……財布がない」


「なにっ! もっと大変じゃねーか!」


 身体中に手を当て財布を探すケードル。しかし、見つからず。何度探っても見つからず。


「カフェの支払いの時は確かにあった。……あっ! アイツだ! あの時のぶつかってきたヤツ!」


「スリか!」


 スラれたのである。


「くそ、追うぞ!」


「俺から盗むなんて許さん!」


 神太郎としても友人の危機を放っておけないし、治安を護る衛士としても犯罪を見逃すわけにはいかない。何よりこのままではステーキを奢ってもらえない。


 あの男を追うべく、二人は駆け出すのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。