6.竜炎 / エリアル
本日4回目の更新です。
勇者に飛び掛かるフレイを見つけたときには、すっかり日が昇っていた。
「1vs3じゃ勝ち目ないだろうに。……まずは取り巻き引き剝がすのが先だな。2人に頼んでも良いか?」
「ああ、もちろんだ」「お任せを、マスター」
グレイスはナイフ使いに、アテナは魔術師に向かっていく。俺は勇者とフレイの方だ。ブレイバーアーマーを展開し、強化された身体能力で2人の間に割り込む。ギリギリのところで、フレイ目掛けて振り下ろされた剣をマギアブレイガンで受け止めた。
「……またオマエかよ、しつこいヤツだな」
「しつこいのはここにいる全員がそうだろ。このやり取り何回目だと思ってんだ」
互いの武器を交えたまま、言葉もぶつけ合う。
――――Turn to Gun!
「おりゃ!」
鍔迫り合ったまま、マギアブレイガンをガンモードに切り替えて接射する。勇者が反射的に飛び退いて、フレイと話す程度の余裕を作ることに成功した。
「……なんで来たの?」
「そうだなぁ……。なんかもう放っておけなかったから、ってことで納得してもらえるか?」
うん、まあ合理的な理由ではないわな。聞いたフレイも複雑そうな表情。
「ま、細かいことは気にするな。俺達を利用するぐらいの気持ちでいればいいよ。はいこれ」
勢いで流し、ドライバーから抜いたGモバイル・ブレイバーをフレイに渡す。
「申し訳程度だけど、持ってるだけでも身体能力強化と魔術制御補助の効果がある。あと何が役に立つか分かんないから、中に色々と武器入れておいた。好きに使ってくれ」
「……うん。力を……貸して!」
フレイと意思を合わせたところで勇者から声が掛かる。
「ったく、話は終わったか? こっちは何回も横槍入れられてイライラしてるんだ。謝るならすぐにぶっ殺して素材にしてやるよ」
「それは悪かったな。安心しろ、秒で返り討ちにしてやるから」
「お前を倒して、父さんは返してもらう……!」
最初に動いたのは勇者だった。数の差を気にすることもなく、直線的に斬りかかってくる。
「そっちの手の内はもう分かってんだよ! 勇者様に逆らったこと後悔しな!」
長剣の大振りは一撃の範囲が広い。それでも軌道が読み易い以上、回避するのは簡単だ。
「前とは違ってこっちも万全なんでね。それに、やり合うのが分かってて何も準備してない訳ないだろ?」
戦域全体に注意を払いつつ、ベルト左部のホルダーから新たなアイテムを手に取った。
「変身の次はフォームチェンジ。そう決まってるよな」
――――Ariel! Magic Particle Dispersion.
ドライバーのスロットに新たなGモバイルを装填、ハンドルを押し込んでトリガーを引く。
――――Mana Solid Armor creation.
ブレイバーとは異なる形状の装甲が構築される。パーツ一つ一つのサイズは小振りだが、要所を押さえた配置により十分な防御力は備えている。
――――Setup! Type-Ariel!
改めてハンドルを引く。装甲がベーススーツに固定されていき、最後にGモバイル内部から転送された大型バックパックユニットが背中に装着された。
「さて、わざわざ用意した新装備……付き合ってもらおうか!」
バックパックの翼を展開すると共にスラスターを目一杯に吹かす。魔素が噴出する激しい音が響き、身体が前に押し出された。圧倒的な速度から繰り出される跳び蹴りが、防御させる間もなく勇者に直撃して吹き飛ばし――――
「おお~。良い出力……っておっとぉ!?」
――――勢い余って、着地するまでに戦場から遠く離れてしまった。
「……これ慣れで解決できる問題かな?」
デチューンは必要か。
「今はいいか。それよりも……」
常に最大出力にする必要は無い。目的を間違えないように、勇者から剣を奪取することを考えろ。
バックパックに懸架された2本の大型サーベルを抜刀、感触を確かめる。
「行けるな。さて、もう一回……!」
過剰推力にならないよう、徐々にアクセルを踏むイメージでスラスターを吹かす。今度は結構上手い感じに出来たと思う。
◇◇◇
元の場所に戻ると、勇者は既に復帰してフレイと戦い始めていた。フレイも善戦しているが勇者の方が僅かに優勢な様子。
「どう見ても技術はフレイが上。原因は装備の差か」
フレイは軽快な動きで勇者の攻撃を避けているが、たまのカス当たりでも大きく体勢を崩される。反対に勇者は、何度フレイの攻撃を受けても平然とした様子で戦闘を継続していた。
「用意した身としてはフレイに申し訳ないな」
愚痴ってもしょうがないけど。ともかくそういうことなら性能差は手数で補うしかない。急速接近して、二振り揃えたサーベルを勇者に振り下ろした。フレイを狙った斬撃の軌道を強引に変えて、勇者は剣で防御する。
「良いところで……!」
「注意しないのが悪い。元々2vs1じゃないか」
こんな隙だらけなのに強いって理不尽だな。俺の斬撃を防御したところを狙い、得物を槍に持ち替えたフレイが刺突を放つが、それも鎧に阻まれる。
「マジで厄介だ。……それにしても、武器の扱い上手いな」
「え? ……ああ、父さんから教えてもらった。集めるの好きだったみたいでね」
素人目にもフレイの技術が高いことは分かる。剣も槍も、あと遠くから見ただけだけどハンマーや鉄拳といったものまで、綺麗な動きで扱っていた。
「でもあいつに通じてない……!」
「武器の性能は用意したこっちの不手際だ。ゴメン。その代わり……じゃないけど、全力でサポートする。フレイはまず剣の奪取に集中してくれ」
「……分かった。頼りにしてる」
「……おう」
一拍おいてフレイが飛び出す。勇者も迎撃する構えを見せるけど、そうはさせない。スラスターで滞空し、Gモバイルから転送した2丁のハンドガンで勇者の頭上から魔素結晶弾の雨を浴びせる。
「鬱陶しい、なはっ!?」
それに気を取られた勇者の、ガラ空きの胴を狙ってフレイが剣を横薙ぎにする。今度は防御される気配も無く、完全な直撃となった。
「……おいおい、幾らなんでも隙だらけ過ぎるだろ」
呆れの思いもあるが、こちらを優位にする要因は大歓迎。サーベルに持ち替えて追撃する。
どうやっても大きく痛手を与えることは難しいと分かった。なら徹底的に攻め続けて勇者の行動を阻むだけだ。
一撃を与え、勇者が体勢を整える前に更にフレイが攻撃を加える。攻撃後に生まれる隙を狙われないように、今度は俺が勇者の動きを妨害する。即席のコンビだけど、凄く自然に連携が取れていた。
「雑魚の癖に……!」
「雑魚だからこそ、工夫くらいするさ。こんなふうに……なっ!」
掬い上げるような斬撃を勇者の剣に当てる。手放させるには至らなかったが、その衝撃は勇者の腕ごとカチ上げ、ちょうど高く剣を掲げるような格好にさせた。
「フレイ!」
「分かってる!」
間髪入れず、剣を握る勇者の手にフレイが蹴りを放った。いつの間にか着けていたレガース状の装甲がその威力を高め、遂に勇者の手から剣が弾き飛ばされる。
「父さん……!」
「取らせるか!」
「こっちのセリフだ!」
フレイが剣に向かって手を伸ばし、勇者がそれを妨害しようと動く。もちろん黙って見ているなんてことはしない。走り出そうとする勇者をハンドガンで牽制する。それをよそにフレイが落ちてくる剣に手を伸ばし――――
「やった……」
――――しっかりと剣の柄を握りしめた。




