6.竜炎 / 相対
本日3回目の更新です。
「……! なんだ!?」
建物が揺れる程の激しい音で、俺達は目を覚ました。
「外からだ! 様子を見て来る!」
「待った、俺も行く! アテナ!」
「承知致しました」
3人で宿を飛び出した。音の現場と思われる通りには地面が抉られたような跡があり、それを挟むように対峙した4つの人影もあった。
「フレイ、と……やっぱりいたか」
勇者一行だった。予想通りこの街に戻っていたな。事の経緯は分からないけど、彼らがフレイに攻撃したということは察せられる。彼女は亀裂の縁ギリギリで座り込んでいた。
「あ? ……さっきの変身(笑)のヤツじゃん。今忙しいから邪魔すんなよ」
「断る。ここまで深入りした以上、もう彼女は放っておけないし、そもそも街中でこんな騒ぎ起こすヤツも危険過ぎて放置できないだろ。あと……個人的にお前ら気に入らないんで、全力で妨害したい」
結局そこに行き着くんだよな。色々と建前もあるけれどその一点が一番大きいかも。
「へぇ……。じゃあ、オマエも斬っていい……ってことだな?」
「なら……反撃されるのも覚悟しろよ勇者モドキ」
一触即発の空気。しかしそれは長く続かなかった。ジスランさんが兵士らしき人達を率いてこっちに向かってきていたからだ。
「シュウさん! 大丈夫ですか!?」
「こっちは問題ないです。それより彼らを何とかしないと……」
兵士らは既に勇者一行と向き合って各々の武器に手を掛けている。
「もちろん。相手が誰であれ、罪人を捕らえるのが私達の義務ですから」
兵士達も同意するように、勇者一行を鋭い目付きで見詰めていた。
「その程度のヤツらでオレらに勝てると思ってんの?」
「どうでしょうね。でも、ここで抵抗されてあなた方を取り逃がした場合、王国全域に手配書が出回ってどの街へ行っても追い回されることになると思いますが。きっと毎日面倒でしょうね。……どうします?」
「……チッ」
勇者は舌打ちすると背を向けて去ろうとする。仲間2人もそれに続こうとして――――
「待て……!」
それにフレイが声を掛ける。予想された流れではあるけど、現状で話を拗らすのは得策じゃない。
「……申し訳ありませんが、騒ぎを続けると言うならあなたにも縄を掛けなければいけなくなります」
ジスランさんもそう告げる。彼の立場上、どちらか一方に肩入れするわけにはいかないだろう。
「そんなにコイツが欲しいのか? 残念だったな~!」
勇者も、フレイをバカにするようにわざわざ剣を見せつけてきた。彼女は今にも勇者に飛び掛かりそうな形相となるが、実行に移すのはグレイスに止められる。
「返せ……! それを……、父さんを、返してよぉ!」
勇者の背中を撃つことも出来ず、フレイの叫びは虚しく響いた。
◇◇◇
「……あれで良かったのだろうか」
何とかフレイを宿まで連れ戻し、俺達は自分の部屋へ。そこでグレイスが呟いたのがその一言だった。
「まあ良い訳ないよな」
「だったら……!」
「だけどあの場はああするしかなかった。万が一、フレイや俺達が捕まるようなことになれば立場の面倒さは勇者達の比じゃないだろ」
ジスランさんにもかなりの迷惑が掛かるのは間違いない。『侵食スル者』への対策にも影響は出るだろうし。
「とにかく今日はもう寝よう。何か起こるとしても夜が明けての話になると思うから」
「だが……いや、そうだな。どのみち寝不足では頭も働かないか」
そうしてその日は終わりを迎えたが、事態が動いたのは予想より少し早かった。日が見えるかどうかという時間、俺達はアテナの声で再び目を覚ました。
「マスター、シャトルピジョンから合図がありました。彼女が動いたようです」
「結構早いな。目が覚めたか、あるいは寝付けなかったか……まあどうでもいいな。それより、頼んでいたものは?」
「『エリアル』及び『ミリタリー』、術式編纂は終わっております。更に指示通り各種装備類も生産し、全て収納しました」
淡々と確認作業が進んで行く中、グレイスは話に追い付けないでいるようだった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。何がどうなっているんだ?」
「あぁ、フレイが暴発することは分かりきってたからな。監視役にシャトルピジョンを付けてたんだ。で、今フレイが宿を出て行ったって連絡受けたわけ」
目的も明らかだし、流れに乗った方が楽な顛末になりそうだから敢えて止めなかった。ジスランさんは良い顔をしなかったけど、見逃してもらえた以上そういうことだろう。
「準備は終わってるし、後は実際行くかどうかってとこだけど、グレイスは――――」
「行くに決まっているだろう」
「――――だよな」
即答だった。聞くまでも無かったか。
「フレイの行き先は分かるよな?」
「はい、シャトルピジョンに尾行けさせています」
「じゃあ見失わないで済むな。さっさと出発しようか」
とはいえフレイとの距離があまり離れない内に宿を出ることにした。街を囲む城壁を抜け、更にその先の平原に向かう。




