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5.勇者 / 形勢、不利

今日5回目の更新です。今日の分はラストです。

――――Setup(セットアップ)! Type(タイプ)-Braver(ブレイバー)


 ブレイバーアーマーを装着。マギアブレイガンとラージシールドも最初から展開しておいた。


「……ぶっ! ぶはははははっ! へ、変身って……! ガキかよ!」


「勇者とかはやされて調子乗ってる奴に言われたくないな!」


 この件に関しては五十歩百歩かもしれない。かんさわる笑い声は無視して、リーダー格にマギアブレイガンを振り下ろす。……が、それは軽く受け止められて、間髪入れずにナイフ使いが迫ってくる。わざわざシールドでカバー出来ない右側から来る辺り、考えなしってわけじゃなさそうだ。

 

「いっただきぃ……うわっと?!」


 左手にマニスタルソードのグリップを持ち、ナイフ使いに先端を向けて起動させた。ノーモーションで魔素結晶マニスタルの刀身が伸びていく。

 流石に当たりはしなかったけど、驚かせて牽制とするぐらいの効果はあったようだ。


「ウッゼぇなぁ……! オイ、向こうの2匹から先にやっちまえ!」


「オーケー。そっちの方が簡単そうだ」


「このっ……! 待ちやがれ……っ!?」


「オイオイ、余所見すんなよ?」


 ナイフ使いがグレイスとドラゴン娘の方へ向かった。止めようとしても、リーダー格が圧を強めてきて迂闊に離れることが出来ない。


「ちぃっ! ごめんグレイス……頼む!」


「ああ! 任された! ターントゥアクティブ!」


 瞬時にグレイスの全身を鎧が包む。更に長剣を形成して、近付いてくるナイフ使いを拒絶するように横薙ぎの一閃を振るった。


「本調子じゃないが……頼まれた以上はな!」


 グレイスはドラゴン娘から離れ過ぎないような位置取りをしながら、なるべくリーチの長い攻撃でナイフ使いを牽制しようとしている様子。回復していないからか、純粋な剣技のみで応戦していた。


(このままじゃジリ貧だな……。アテナが魔術師を押さえてくれてるからその分は楽なんだろうけど)


 魔術師の弾幕のせいで攻撃の届く範囲には踏み込み切れていないが、こっちに魔術が飛んでこないよう上手く立ち回ってくれている。


「どうにか崩して仕切り直さないと……」


 どう動くべきか判断していると、少し離れたリーダー格が左下に剣を下げたまま突っ込んでくるのが目に映った。このまま斬り上げてくる姿勢か。


「一か八か……試してみるか」

――――Finisher(フィニッシャー) Program(プログラム) Activate(アクティベィト)


 マギアブレイガンの後部スロットにGモバイルを装填する。リーダー格の斬撃に合わせるように振り下ろし、ぶつかる直前でトリガーを引いた。

――――Braver(ブレイバー)Vanishing(バニシング) Slash(スラッシュ)


「何いっ!?」


 マギアブレイガンの刀身にエネルギーが集中し、切断力が劇的に向上する。リーダー格の剣とかち合って、僅かな手応えも感じずにその刃を斬り飛ばすことに成功した。勢い余って彼の鎧にも傷跡を残している。本人の身体までは届かなかったようだな。……残念、とか思ってないから。


「ということで大人しくしとけ」

――――Turn(ターン) to(トゥ) Gun(ガン)


 生まれた隙を突いて銃撃する。威力より打撃力を重視した高硬度弱装弾を選択した。まず狙うのはアテナが相手してる魔術師の方。


「ちょっ、何!?」


「ふふ……やっと近付けた。覚悟しなよ」


 その好機を逃すアテナではない。ハンマーを振りかざして思いっ切り魔術師の身体に叩き込む。直撃の瞬間、2人の間に障壁のようなものが見えたが、それでも魔術師は大きく吹き飛ばされていった。


「よし、今のうち」


 ナイフ使いの方にも銃撃を加えながら、グレイスの元まで後退する。


「グレイス無事か!?」


「あ、ああ。大丈夫だ。だが……っと、すまない……流石に、限界……だ。……彼女、を」


 緊張が切れたか、脱力して前のめりに倒れ込むグレイスを抱き留める。これ以上は彼女に頼ることは出来ないな。


「ん……ここ、は?」


 そのタイミングでドラゴン娘が目を覚ました。状況を飲み込めていないようだけど、周りで戦いが行われていることは分かったようだ。あと近付いてくる存在がどういうものなのかも理解してしまったようで――――


「……? …………っ! お前は、お前たちはっ……!」


「お? なんだ。こないだの狩り残しも起きてんじゃん。そのウザいヤツのついでに仕留めちまおうぜ」


 ナイフ使いと合流したリーダー格が、折れた剣に変わる新たな得物を抜く。それを見たドラゴン娘が、急に血相を変えて悲鳴じみた叫び声を上げた。


「そ、その剣……父さんの……父さんの力!」


「良く分かったな。こないだのドラゴンの素材で造った逸品よ。オマエらに使うには勿体無いぐらいに良い剣だろ? こいつで……っとぉ」


 ドラゴン娘は脇目も振らずにリーダー格へと掴み掛かろうとする。その動きは、無我夢中といった感じに乱雑なもの。リーダー格も涼しい顔で対応していた。ナイフ使いも当然黙っているわけはなく、こっちを――――より正確には動けないグレイスを狙ってくる。彼女を庇いながら応戦するも、ドラゴン娘の方に少なくない注意を引かれ、自覚できるほどに動きが鈍くなっていた。

 一度はこちらに傾いたはずの天秤が向こうに大きく戻っていき、いよいよ焦りが強くなる。


「マスター、大丈夫!?」


 ルプスリッターに換装したアテナが、いつの間にか戻ってきていた。ナイフ使いとの間に割り込んでくれたお陰で、ほんの少しだけ考える余裕が生まれる。


「気が乗らないけど、ここは退くっきゃないな……」


 状況はかなり悪い。来てくれたことは助かるけど、アテナが相手していた魔術師の女もフリーになっている。ま、さっき吹っ飛ばされてたし、戦線復帰できるかは分からないけども。


「アテナ、あれを使う。ドラゴンの彼女をあの勇者野郎から引き離せるか?」


「任せて! いざってときはウルスファウストでも……!」


 ナイフ使いを相手に時間を稼いで、ドラゴン娘を抱えたアテナが戻ってくるのを待った。2人が近くまで来たことを確認し、とある物を手に取る。


「悪いけど仕切り直しだ。本調子のときに改めて相手になるよ」


「まさか逃げるつもりか? そんな足手まとい抱えて? バカ言ってんじゃねぇよ!」


 適当に聞き流し、手にした拳銃のような装着のトリガーを引く。銃口に当たる部分から吹き出した濃い煙が周囲一帯を覆い尽くした。


「手はあるんだよ。それじゃあグッバ~イ」


 煙が晴れたときには、既にその場から俺達の姿は消えている。こうして俺達は勇者一行の前から撤退することに成功するのだった。

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