4.迎撃戦 / マギアライドシステム
今日の更新4回目です。
――――Magic Particle Dispersion.
……これしか残っていない。バックルの右ハンドル。そこに設けられたトリガーを引く。ドライバー中心部から放出された魔素が俺を囲むように集まって障壁となった。勢いよく突っ込んできた樹の根は、それにぶつかって跳ね返される。
想定通りの強度だけど、やっぱり副次的な効果の割には中々の防御性能だ。これなら安心して操作に集中できるな。
――――Mana Solid Armor……creation.
今度は左ハンドルのトリガー。ベルトから放たれるレーザーが魔素の壁を切削し、装甲のパーツへと仕立て上げる。
削り取るのは内側だけだから障壁に穴が開くことはないけど、薄くはなるから多少は不安になるな。でも工程は次でラストだ。ちょっと覚悟は必要だけど、一番アガる部分でもある。我ながら烏滸がましいと思うが、偉大な先人達に敬意を込めて叫びつつ、両ハンドルを外向きに引く。
「変身!」――――Setup! Trial Armor!
「うぐっ……! ぐっ、つぅ……!」
痛みが生じるほどの衝撃で装甲が身体に貼り付けられていく。装甲同士を繋ぐように微小金属体が這い回る不快感のオマケ付きだ。同じ技術だから、グレイスが受けた感覚もこんな感じか。間違いなく改良必須だなぁ……。
だが、それはまた今度だ。最後にフルフェイスマスクが形成され、シークエンスは完了する。
「マギアライドシステム……どこまでやれるか、試してやる」
マニスタルソード以上に長期戦が不可能なシステムだ。試作品は伊達じゃない。
――――キィッ!
「いい加減に終わっとけ!」
カウンター気味に、突進してくる魔物の顔面を殴り付けた。
「もう出し惜しみしてられないしな。俺が抑えに回る。2人は樹の根に注意しつつ、本体にある核を狙ってくれ!」
「了解だよ!」「承知した!」
思ったよりも限界が近い。今も立っているだけで体が痛むし、さっきの一撃を入れたときも反動で腕が折れそうだった。
「待て逃げんな!」
徒手空拳のまま樹の根を払い除け、少しずつ魔物との距離を詰めていった。魔物と視線が合ったような気がして……ヤツは怯んだ様子で背を向ける。だが……そっちには――――
「ウルスファウスト、オンライン……!」
クマをモチーフとした新型の近接戦闘用ユニット。機動性重視のルプスリッターと比べて、パワーに特化した性能に調整した。アテナは魔物の逃げた方向に先回りし、背負っていた大型ハンマーを振りかざす。
「……ふっ」
冷静な声音でそれをスイングさせると、魔物には避ける余裕も無かったか、その胴体に直撃した。
「また凄まじい力だな。頼もしい」
「そいつはどーも。で? 喋ってる暇があるなら追撃すれば?」
「あ、ああ……。またクセの強い……。シュウはそういう性格が好みなのか?」
予想外過ぎる濡れ衣が!
「いやいや! そんなことしてないって! そもそも調整しようと思って出来るもんじゃないし……」
考えようによっては、あれはアテナの“素”とも言えるわけか。
「マスターもサボるのかい?」
「ちゃんとやります」
ウルスファウスト、全方面に高火力だな。
「俺もそろそろ限界だし? 遊びはここまでだ!」
ハンマーの衝撃から立ち直り掛けている魔物に連続の打撃を更に加えた。ただ素早いだけのパンチだけど、十分に通用している。コンビネーションのラストに回し蹴りを出し、必然的に魔物との距離が開く。
「昨日の礼はもういい。この一撃は、村を守る為に――――」
グレイスは微小金属体を追加で構築。その右手に短剣が出現する。更に刀身に魔術による氷を纏わせていた。
「――――そしてシュウの期待に応える為に!」
逆手に構え、右下から斜めに斬り上げる。魔物の身体を深く傷付け、勢い余って腕まで斬り飛ばしていた、
「シュウ、トドメを!」
「美味しいところだぞ? 貰っちゃって良いのか?」
確認を取ったけど、二人とも異論は無いようだ。それじゃあ、きっちりケリを付けるとしますかね!
左右のトリガーを引きつつバックルのハンドルを元の位置に戻す。――――Finisher Program Activate.
高まっていく力を、再度ハンドルを引いて解放する! ――――TrialSmash!
システムボイスのコールを受け、右腕にエネルギーが集中していく。その状態で打った強烈なボディブローは、魔物の肉体を爆散させるのに十分な威力を持っていた。それだけでなく、核にまで衝撃が届いていって粉々に粉砕する。
「ってぇ……。ここまで反動来るのかよ」
右腕だけでなく、全身が悲鳴を上げていた。ドライバーもバチバチと悲鳴を上げて……、バチバチ?
「危ねぇぇぇ!」
急いでベルトを外して放り投げた。全身の装甲もそこで解除される。そしてバックルは地面に落ちると、ボンっ!と音を立てて煙を吹いた。
「セェェェフ……。流石にフィニッシャーまで使うのはドライバーの負担が大きかったか……」
外装が割れたバックルを恐る恐る拾い上げ、研究室に回収する。
「シュウ、大丈夫か!?」
「まあ、なんとかね……」
課題は色々増えた気もするけど、一番厄介なのは撃破できたんだ。まずは村に報告して、安全になったことを伝えないと。
◇◇◇
「……やられてしまいましたか。まあ不完全な解読での実験としては十分な成果でしょう。次は……ふむ、あれででも試してみますかねぇ」
◇◇◇
魔物を討伐した報告は、村の人たちを安心させた。実力者であるグレイスが深手を負った事実は、かなりの不安を与えていたようだ。
そして村に取り敢えずの平穏が戻って数日後、1組の男女がやってきてこんなことを言った。
「人を探しているのですが、『侵触スル者』と言う言葉に聞き覚えのある方はいらっしゃいませんか?」
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