4.迎撃戦 / 再戦
今日の更新3回目です。
動きがあったのは翌日のこと。思った通り、すぐさま仕掛けてきたわけだ。
「マスター、E型の反応。やっぱりここに向かってる」
「向こうも勤勉だな。まだ完成はしてないけど仕方ない。迎え撃つぞ!」
向かおうとしたところ、後ろから声が掛けられる。
「待ってくれ。私も行く」
「グレイス……大丈夫なのか? それ着けてたって、本調子ってわけじゃないだろ?」
微小金属体制御式汎用手甲『ヴァリュアブレット』。あくまで欠損を補っただけで、傷や体力が回復したわけではない。
「身体は問題ないよ。むしろ昨日までより動きやすいくらいだ。だから……今は、君達の力になりたい」
「……分かった。手、貸してくれ。無茶はするなよ」
ま、俺だって逆の立場だったら、そうしただろうしなぁ。
「そもそもこれのもう一つの機能は、私が戦えるようになる為のものじゃないか」
「趣味の範疇だよ。……脳内インプット式のマニュアルなんて付けるんじゃなかった」
明らかに補助具としては不要なシステムだもんなぁ。なんで付けたかと聞かれたら“ロマンの為”としか答えようがなかったり。
「……E型、近付いてきてるよ?」
アテナに急かされました。ゴメン。
◇◇◇
魔物の姿を見付けたのは、昨日のところより村に近い地点だった。
「まだこっちには気付いていないようだな」
「油断するな。昨日の感じでは、かなり知能が高いようだった」
なるほど。しかしなんにせよ、グレイスをあそこまで追い詰めた相手。十分な警戒が必要だ。
「可能な限り射撃戦で落とす。接近戦の用意はあるけど、なるべく近寄られないように。アテナ、“ウルスファウスト”は使えそうか?」
「ん……。テストでは問題なかった」
「よし。グレイス、戦闘モードは?」
「少し不安はあるが……なに、使いこなしてみせるさ」
俺の装備も性能自体は十分なはずだ。問題点はそこじゃないんだけど……、はぁ、覚悟、決めるか。
全員で配置に付き、後は合図を出すだけ。ハンドサインで3,2、1――――
「食らえっ!」
発射のサインと共に、3人同時に射撃戦を開始する。2/3が弓だから字面ほどの音はしないけど、放たれた弾(矢)数は相当なもの。しかし、あまり効果を出しているとは言えないみたいだ。当たったものも、大半がそのまま弾かれている。辛うじて、魔素結晶弾が若干効いているか?という有様。
「やっぱり接近戦になるか。……来るぞ!」
「ルプスリッター、オンライン! スピードなら私が!」
突っ込んで来る魔物に、装備を換装したアテナが真っ先に対応する。
「私達も続こう。シュウがくれたこれの力、頼りにしてるぞ。……『ターントゥアクティブ』!」
起動コードを受けて微小金属体が追加で放出される。それはグレイスの四肢だけでなく、全身に広がり鎧として形成された。兜やフェイスガードも備えた重装だ。
「使わずに済めば楽だったんだけどな」――――Magia Driver Type-Trial Standby.
機械仕掛けのバックルを腰に当てる。ベルトが展開して体に固定され、起動を告げる音声が鳴った。ブレスレットの機能を発展させた魔導具だ。より高度な魔法陣を刻む為に道具自体がかなりの大型となってしまっている。形状やシステムボイスは9割方が趣味だけども。
今までの効果に加えて、装着しているだけで身体能力の強化がされるようになった。これでヤツとなんとか張り合えるようになるはず。
「まずは一撃……! 昨日のお返しだぁっ!」
――――キキィ!?
グレイスが魔物を殴り付ける。ヴァリュアブレットの単なる補助具を超えた性能は、脚力も打撃力も生身とは段違いになっていた。
「あっちは成功したみたいだな。よし、俺も!」
マニスタルソードも起動し、魔物に向けて振り抜いた。身体能力は上がっている。接近するのも、コイツにダメージを与えるのも、以前より容易になっていた。
「こっちも問題はなさそうだ。だけど、あくまで対等になった程度だな」
翻弄されることはなくなった。ただしこっちが圧倒出来るようになったわけでもない。このままなら数の差で押し切れるかもしれないけど、何かあったら直ぐに崩れる均衡だ。
――――キィ、キキィィィィ!!!
「本気モードってか? ったくいきなり!」
魔物の動きが更に速くなった。目で追うのもギリギリだ。
「マスター危ない!」
「え? うおっ!?」
アテナの注意。魔物にばかり注意を奪われている内に、周りから狙われていた。魔物が操作してるらしい例の樹の根だ。
「うっ、あれか……」
グレイスが複雑な顔で右腕を擦っていた。
「これはちょっとマズイな。ったく……このっ!」
相手の数が増えたのとほぼ同義。厄介なことになったとしか言いようがない。
「これだけ速いとっ……捌ききれないよ!」
「打ち合えるだけ、昨日よりはマシなんだがな!」
2人共苦戦している。それに俺の方も呑気に眺めている場合じゃない。襲い来る樹の根を避け、あるいは受け流し……としてる間に魔物本体の攻撃があった。 ええい、こっちが本命か!
「あぁもう! 敵ながら良いコンボしやがって!」
なんとか剣での防御が間に合った。代償として魔素結晶の刀身が砕かれる。魔素を供給すれば幾らでも再構築できるけど、それだけじゃ同じ結果を繰り返すだけだろう。
「これはもう、使うしかないか……!」
標的を絞ってくる方針に切り替えてきたようだ。杭のような先端を、鎌首をもたげる蛇のように向けてくる樹の根を見て、いよいよ全部を使う覚悟を決める。今更遅いかもしれないけどさ。
「シュウ、逃げろぉ!」
グレイスの声。迫る樹の根。回避は無理そうだ。もう出来ることは……。
――――Magic Particle Dispersion.
次は17時予定です。




