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4.迎撃戦 / ヴァリュアブレット

今日の更新の2回目です

「……ここ、は?」


「……! 良かった、気が付いたか!」


「シュウ……? そうか、私は……あれ?」


 ベッドから身体を起こそうとして、グレイスは右腕が動かないことを不審に思ったようだ。そして、予想されていたことが起こる。


「そうだ……私は……あ、ああ……あぁああぁぁああぁああ!」


「っ! 大丈夫! 魔物は逃げた! ここは村の中だ!」


 なんとか彼女を落ち着かせ、その後はアテナに任せて『研究所』へと戻った。あの魔物がこのまま大人しくしてるとは思えない。今の内に対抗する為の準備もしないといけない。


「まず防御力の確保、それに遠近両用のマルチウェポン。と来れば……ま、アレしかないよな」


 浮かぶイメージのままに、研究室のシステムへ指令を下す。今回の物は機能も構造も複雑なせいか、形になるまで時間が掛かっているな。先にアテナの新ユニットを設計して、グレイスの様子を見に行くか。


◇◇◇


「体調はどうだ……って、最悪以外の何物でもないよな」


 我ながらセンスのない切り出し方だと思った。でも他になんて話し掛ければ良かったのか……。


「ああ、済まない。本当に、無様なところを見せてしまったな……」


「そんなこと……。あれはどうしようもなかった」


 会話が途切れる……。気まずい空気の中、沈黙を破ったのはグレイスの方だった。


「……なあ、頼みがあると言ったら、手を貸してもらえるか?」


「え? そりゃまあ、俺に出来ることなら幾らでも貸すけど……?」


 そうか、と呟いた後、彼女が言い出したのは、とんでもない内容だった。


「私を殺してくれ、と言ったら、ヤってくれるか?」


「……はぁ?」


 思わず語気が強くなったのは仕方ないだろう。何を言い出すかと思ったら、ホントに何を言ってるんだ。


「その反応……当然だろうな。しかしまあ、私も冗談で言っているわけじゃないんだ」


 当たり前だ。幾らなんでも冗談にして良いことと悪いことがある。ただ、グレイスの沈んだ表情を見る限り、本気そうなのが尚更性質(たち)が悪いとも言えるが。


「私には戦うことぐらいしか出来ないしな。それに、この身体じゃ、一人で生きていくのもままならない……。せっかく救われた命だが……皆に迷惑を掛けるばかりなら、いっそのこと……もう…………」


「……なんだよ、それ」


 そう絞り出すのが精一杯。アテナがコップを並べる音が妙に響いた気がした。


「ふざけんな……、ふざけんなよ……」


 彼女の顔を見ていられず、研究室へと逃げるように戻った。俺に出来ることは――――


◇◇◇


「……欠損の治療方法,或いはそれだけの回復魔法。ファンタジーならあっても良いだろ」


 研究室のデータを片っ端から調べていく。方法はあった。あったけど……。


「今すぐ用意は出来ないか。代わりになるもの……こんなのしか思い付かないけど、これもある意味必然かもな」


 自分の為に作っていた技術が応用できる。この嚙み合わせの良さは偶然か。


「どっちでもいいか。現状の作業は一時中止、これの製作を優先しろ」


 研究室への指令を変更。途中まで出来ていたものの流用の為、システム中枢と外装の構築さえ終われば殆ど時間もおかずに完成した。


「本当ならテストしてから渡すべきなんだけど、俺じゃこれは使えないしな」


 運用テストに協力してほしい、とでも言えば短絡的な行動も阻止できるかもしれないし。


◇◇◇


「あ、シュウ……。えっと、その……」


 気まずい空気。仕方ないとは思うけど……。どう言えばいいのか分からなくて、無言で()()を渡すことになってしまった。


「これは……手甲? 私にか? しかし、今更こんなものを貰っても……」


 弱々しく苦笑し、突き返してこようとする。


「いや、これはグレイスの為に作ったものだ。まずは着けてみてくれよ。表面に触れて『セット』と言えば良い」


「そういうなら。『セット』、で良いのか?」


 キーワードに反応し、グレイスの左腕にガントレットが固定される。


「まあ、着け心地は悪くないな。だが……」


 その先は要らない。話を遮り、説明を続けた。


「違和感は無いんだな? じゃあ次が本番で、『システムウェイクアップ』」


「何を? ……うわぁっ!?」


 コマンドを受けて、ガントレットから微小な金属体が放出される。細かく、それでいて大量だから、まるで液体が身体を伝っていくような光景だ。不快感はあるようだから、そこは要改良ポイントだ。ともかく――――


「成功……みたいだな」


 金属体は到達した先で結集し、グレイスが失った四肢を補う義手と義足になっていた。ガントレットそのものとも合わせ、鎧のパーツだけ身に着けているようにも見える。


「これは……。右手が……! それに、足も……!」


「生身と感覚は違うだろうけど、日常生活に不自由することは無いはずだ」


 説明が聞こえていないのか、グレイスは呆然とした表情で腕の動きを確かめていた。


「足の方も見てみたらいいんじゃないか?」


「あ、ああ。そうだな」


 恐る恐るとベッドから下り、義足の出来も確認する。


「動く……、こんな自由に……!」


「これで、もう馬鹿なことは言わないよな?」


「その為に、わざわざ……? そんな……そんな、こと……、は、ははっ、ははははははっ!」


 笑われるとは心外だな。こっちは必死だったっていうのに。


「ははは……はあっ、ははっ。いや、すまない。本当に……笑われるべきは私の方だよ」


 彼女の顔は、とても晴れやかなものに変わっていた。これでもう大丈夫だろう。良かった。


「後は例の魔物だな。アテナ、しばらく俺の手伝いはしなくていい。アウルシュッツェで村の周囲を警戒し続けてくれ」


「承知しました。それでは……、アウルシュッツェ、オンライン。警戒、始める……」

次は12時予定です。

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