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4.迎撃戦 / 蹂躙

今日中に後3回更新予定です。

「……E型の反応を発見。こっち」


「見付かったか。グレイスも近くにいれば良いけど……」


 アウルシュッツェの探知能力を頼りに森の中を2人で駆け抜けていった。


◇◇◇


 少し時間は戻り、グレイスが魔物の姿を捉えたところまでさかのぼる。


「待て! これ以上は進ません!」


 最初から戦闘態勢で魔物を見据えるグレイス。既に短剣も抜いて構えていた。


――――キィッ? ……キキッ!


 言葉を解しているような反応に、グレイスは違和感を覚える。


(魔物のクセに言葉を理解している……? まさかとは思うが……)


 警戒を更に強める。先に動いたのは魔物の方だった。


「くっ、速い……!?」


 一瞬の内に距離を詰められ、グレイスが慌てて前に出した短剣が、魔物の腕とぶつかって火花を散らす。

 組み合った状態から抜け出そうと、魔物の腹を狙って蹴りを入れ――――結局その足は空を切った。蹴りが当たる直前に、魔物が後ろに跳んだからだ。


(やはり知能が高い……! 見た目も近いし、まるで人を相手にしている気分だな)


 次はグレイスが距離を詰める番だった。魔物が下がった分だけ前に踏み込み、連続して短剣を振るう。高速の剣戟は、幾つかは魔物の身体に命中するも、大半が魔物に受け止められてしまう。命中したものも、表面に僅かな傷を付けるだけに終わってしまっていた。


「ちっ、この前のグランティスより硬いんじゃないか……?」


――――キィッキッキ!


(挑発してるつもりか。本当に人間みたいなヤツだ。だが……!)


 切り札にもなり得る魔法を使う。グランティスのときにも使用した、足元を氷の地面へと変える術だ。


「何!?」


 しかしグレイスのその目論見は大いに外れることになる。氷が広がるほんの一瞬、魔物はその場で飛び上がり、拘束されないように空中へと逃れていたのだった。


「ええい、すばしっこい……! くっ!?」


 魔物が何かを吐き出してきた。濁った色の粘液が辺りに撒き散らされていく。グレイスは横に跳んで回避する。――――が、着地した瞬間、左脚に違和感を覚えた。


「な、なんだこれは……。脚が……石、に……」


 太股から先が完全に固められている。表面の質感は石像のそれと寸分違たがわないようなものになっていた。


――――キィーキキィッ!!


 あまりのことにグレイスが硬直していると、その隙を突いて魔物が追撃を狙う。動かない左脚を庇いつつ対応するも、感覚の変化が文字通り足を引っ張り、遂に直撃を受けてしまった。


「ガハッ……! ぅあ……? あ、足が……!」


 その受けた衝撃と、地面に叩き付けられた勢いにより、石化した脚が砕け散る。石化のせいか痛みは無く、感覚が伴わないままに身体の一部を失った衝撃は確実に彼女の精神を蝕んでいた。


「くっ! だが、これしきのっ、ことでぇ……!」


 残る右脚と両腕を使い、無理矢理に身体を進ませて魔物へ短剣を向ける。しかし、そんな不安定な体勢の一撃は、簡単に魔物に受け止められてしまう。


――――キキッ!


「このっ、離せっ……え? っ!うあああああ!!?」


 魔物に掴まれた右腕を、太い樹の根が貫いていた。


――――キッ、キヒヒヒィ!!!


「……ひっ!?」


 目前で嗤う魔物に、グレイスの口から思わず悲鳴が零れる。


「あっ、がっ……」


 そんなグレイスを蹴り飛ばし大木に叩き付ける。骨すらも砕かれ、僅かな筋繊維のみで繋がっていた腕は呆気なく引き千切られてしまう。そんな彼女を見て、魔物は更なる恐怖を煽るようにゆっくりと近付いていった。


「あ……やっ、止め…………っあああああああああああああああ!」


 魔物の身体から滲み出る液体。それがグレイスの右脚に滴り落ち、灼けるような激痛が彼女に与えていた。


「こ、これ……っ。 また……脚ぃ…………」


 その液体は強力な腐食液とも言うべき性質を持ち、それが掛けられたグレイスの脚はグズグズに腐り、骨まで溶け落ちてしまう。浸食が膝までで止まったのが、せめてもの救いと言えるか。


「や……やぁっ、来る、なぁ……」


――――キィィィ、キッ!?


 魔物が突然、後ろからの攻撃を受けて仰け反った。


「ぅあ……シュ、ウ…………」


 薄れていく意識の中、グレイスの視界に映ったのは、つい最近知り合った男が焦った表情で近付いてくる姿だった。


◇◇◇


「グレイス! おいグレイス!?」


 魔物の相手はアテナに任せ、倒れているグレイスに声を掛ける。表現のしようがないレベルの重傷だ。辛うじて息はあるものの、すぐに治療しないと危険な状態なのは間違いない。一刻も早く村に戻りたいけど、アテナすら苦戦しているこの状況では、迂闊に逃げることも出来ないじゃないか。


「なんとか撤退の道だけは作るぞ!」


「了、解……!」


 アウルシュッツェの弓とマニスタル弾ライフルで撃ち続ける。結構な弾幕にしてるつもりではあるけど、魔物の身軽な動きの前では上手く当たらない。


「埒が明かない……。ルプスリッター……オンライン! やあぁっ!」


 アテナが魔物に斬りかかる。ルプスリッターの機動力なら、あの動きにも付いていけるようだ。


「これなら……ってマジか!?」


「え……? うひゃあぁぁ?!」


 魔物の爪と鍔迫り合いになり、そのままアテナが押し切られた。アイツ、スピードだけじゃなくてパワーも相当なもんだぞ。


「どうやって逃げ切る……? いや、このまま野放しにするわけにも……」


 しかしその魔物は、こちらの葛藤を嘲笑うかのように、あっさりと森の中に姿を消してしまった。


「逃げた……? 何でこのタイミングで、ってどうでもいい! 早くグレイスを運ばないと!」

次は8時予定です。

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