監視所
「で、ここが監視所!」
嵐子に案内されたカエデ達が次に来た場所がここだ。
「走達から聞いていたけど、それがここね!」
「確か署長室でしたっけ?」
「ああ、そうよ!」
「へぇ、署長室に何て入る機会なんて、そうそうないわよね有希子!」
「そうね、現職の人でもそうないでしょうね登紀子。最も、今は元だけど…」
先程の登紀子の態度に、堪忍袋の緒が切れたとばかりに、軽くキレた有希子。その後登紀子が、有希子(彼女)が本気だと肌で感じ、必死に謝り、何とか許しを得たのだった。
かく言う有希子も、怒りすぎた反省した。
そんなこんなで互いに謝り、何とか元の鞘に収まった。
最も、登紀子は姉の意外な姿を見てか、態度が控えめになってはいるのだが…
それはさて置き、嵐子に案内され監視所に入る一行。そこでは複数人の男女が、外の様子に目を光らせていた。
そんな彼らも嵐子が入って来ると、
「あっ、姐さん!」
「アタイの事はいいから、気にせず見張りを続けて!今は、彼女達を案内してるだけだから!」
「その人等が、例の人達の仲間ですか?」
「そうだよ!」
「そうっすか。そんじゃまあ、取り敢えずよろしく!」
と、そんな感じで見張りをしていたメンバーとカエデ達は簡単に挨拶を交わした。
それが終わると、
「んっ、ちょっと鹿川の奴はどうしたんだい?今アイツも見張りの番だろ!」
嵐子が見張りのメンバーを見ながら聞いた。どうやら、見張り番のメンバーが1人足りないらしい。
「あぁ、鹿川さんなら席を外してますよ!」
「外してるって、トイレにでも行ったのかい⁉」
「いやそういう訳じゃないんです…」
と、メンバーの1人の女性が歯切れが悪そうに答えた。
「トイレじゃなきゃどこ行ったんだい⁉」
「それが…」
その女性は少しためてから
「戦車見に行くと言って、行っちゃいました…」
と、発した。
それを聞き嵐子は、
「はぁ〜、戦車⁉」
と、少し気が抜けた感じに答えたのだった。
「戦車って…それってもしかして三船さんの…」
「ああ、釘戦車!!」
と、新堂姉妹が続けた。
「えぇ、多分それのことだと…」
「どういうことだい⁉」
嵐子には訳が分からなかった。
状況を説明すると、走達地下のメンバーがここに来た。道中、三船が自分の店から引っ張ってきた釘戦車で、蚊を撃退した。
それをこの監視所から、カメラで見ていた鹿川という男が、居ても立っても居られず、見に行くと言って、仕事そっちのけで飛び出したのだという…
その鹿川という男が居たであろう場所には、小型のモニターが幾つかあり、警察署のアチコチの様子がリアルタイムで映し出されていた。先程、自分達もいた1階のホールもしっかりと映っている。
それを聞き嵐子は、
「戦車ね…確かに、アイツがじっとしてるわけないか…」
「嵐子さん、その鹿川さんって人は?」
「あぁ、鹿川広信っていって、アタイ達の仲間の1人だ。小さい頃はシューティングゲームが好きな大人しい奴だったんだけど、次第にミリタリー的な物に趣味の幅を広げ、サバゲーにハマっちまったんだよ!」
「サバゲーって、戦争ごっこの…」
「そっ、因みに、アタイ等の使ってるトランシーバーや無線機の類は、奴が用意してくれたのだ!サバゲーやっているうちに、無線機とかにも詳しくなったとかでさ…そのモニターもヤツの品さ!」
「そういえば、詳しい人がいるって聞いてましたけど、それって…」
「そっ、アイツの事さ…」
「でも、そのおかげで助かってるわけじゃないですか、結果的には良かったじゃないですか!」
と、有希子が顔も知らない人物を庇うように言った。
「まぁね…まさかこんな感じで役立つとは、アタイも辰馬も予想打にしなかったよ…とわいえ!」
嵐子は急に語気を強めた。
「見張りそっちのけにしていい理由にはならないよ!例の戦車あるのって1階だっけ?」
「えぇ…ホールの端の方に停めてあった筈です…」
「チョイと行ってくる!悪いけど、案内はここまでだ!アンタ達、引き続き見張り頼んだよ!!」
嵐子はその場にいる人間全員に、檄を飛ばすかの様に言った。
「「「はっ、ハイ!」」」
皆が練習したかのごとく、声を揃えて返事した。
次の瞬間、嵐子は1階へと降りていった。
あまりの迫力に一同は暫く、その様子を黙って見届けていた。
鹿川は、元々は単に無線機類好きな人物という設定でしたが、書いてる途中で、本編通りのキャラに広げました。