鹿川
嵐子が1階へと降りていった後、残された面々。
「言っちゃったわね…」
「すごい剣幕だったは…」
「うん…」
嵐子の凄みに皆が皆が気圧されていた。
それから、改めてカエデ達は、見張りのメンバーに挨拶した。
軽く会話を交わし、そして、
「あのさ、あんたらに頼みがあるんだが…」
メンバーの1人が改まって、頼み事をしてきた。
「頼み?」
「いやなに、姐さんをなだめに行ってほしいんだ。」
「なだめる!あの人を!?」
「あぁ、このままじゃ鹿川さん、どやされるだけじゃ済まないかもしんないからな…」
「確かに、あの人かなり怒ってたわね…」
「だろ!?姐さんも流石にそこまではしないと思うけど、コレから脱出するってのに、負傷してたら響くから…」
「私からも頼むは!私達は見張りしてるから、ここを離れるわけにはいかないのよ…」
他の女性メンバーからも、頼まれた。
「分かったわ。行ってくる。」
「スマナイな!頼んだぞ!」
「ええ!」
カエデ達は、急な頼まれ事を引き受けたのだった。
監視所を後にし、下りの階段を駆け下りるカエデ達。
「嵐子さん、手荒なことしてなければいいけど…」
「まぁ嵐子さんも、脱出作戦の事を忘れて無いでしょうし、大丈夫だと思いますが…」
「でもあの剣幕だったしね…」
「不吉なこと言わないでよ登紀子…」
そんな事を話しているうちに、1階に着いた。
すると直後に、悲痛な声がしてきた。
「あっ…遅かったかも…」
「声のする方向は…?」
「アッチね、釘戦車のある方よ!」
3人は、声のする方向に向った。
そして、そこでは、
「イデデデデ‼」
「こ~の、ミリタリーマニアが!見張りサボって‼」
「悪かったって嵐子!」
嵐子が青年の耳を激しく引っ張っていた。
「らっ、嵐子さん!」
「ん⁉なんだいアンタ達も付いて来たのかい?」
嵐子はカエデ達の方を振り向いた。男の耳を引っ張っぱる手は、少しも緩まず、尚も引っ張っり続けている。
「監視所の人達に頼まれたんです。鹿川さんでしたね?鹿川さんに、余り手荒な事はしないであげてほしいって…」
有希子が手短に説明した。
「あぁ、そういう事かい…安心しな!殴ったりはしてないよ。ただ、軽るーく耳を引っ張るだけだ!」
「あの…軽くにやっているようには、全然見えないんですけど…」
有希子が引き気味にツッコんだ。
それだけ話すと、ようやく嵐子は、男の耳から手を離した。
「あ~痛かった……!」
「大丈夫ですか⁉」
有希子が心配げな顔で話しかけた。
「ああ、何ともないよ…でも、鼓膜が破れるかと思ったよ…」
「サボったりするからだ!」
「だから悪かったって…戦車と聞いて、居ても立っても居られなかったんだよ…」
「たく…」
「ところで、君等は?」
「あぁ、彼女達は…」
嵐子は鹿川にカエデ達を紹介した。
「なろほどな。それじゃあ改めて…俺は鹿川広信。ヨロシクな!」
と、意外と爽やかな感じの男。上半身はどこにでもありそうなジャンパーを羽織ってはいるが、下半身は迷彩柄のカーゴパンツを履いており、ミリタリーマニアらしさを出していた。身体も、細身だが引き締まっていて、結構鍛え抜かれていた。
これで全身、迷彩柄の戦闘服姿だったら、自衛官にでも見えそうだった。
挨拶もそこそこに鹿川は、
「それは兎も角、この戦車、なかなかのクオリティーだな!」
と、先程の反省の弁を忘れたかのように、釘戦車をまずまずと見出した。
「さっき嵐子さんにあんだけ耳を引っ張っられてたのに…」
「……」
呆れ顔のカエデ達。嵐子ももう、怒る気にもならないようだ。同じく呆れ顔をしている。
「だろう!調べて正確に作ったからな!」
と、釘戦車の製作者、三船が自慢する様に、話に加わった。
「この形態からして、九七式だろ⁉よくここまで完璧に再現したな!」
「御名答!やるのう!」
「伊達にサバゲーやってねーよ!」
と、鼻高々な鹿川。
その場にいる女性陣は、誰一人として、付いて行けないでいた。
と、そこへ。
「盛り上がっとるの!」
「あっ、村雲さん!」
地下のメンバー最年長、村雲が御子柴の押す車椅子に乗って現れた。車椅子は、彼用にと、大石等が何処からか調達して来たものだ。
挨拶もそこそこに、村雲は三船の釘戦車を見て、
「その戦車、よくは出来ているが、完璧ではないな!」
「なっ、何だと!」
三船が反論しようとしたが、その前に、
「装甲の溶接が違うぞ。本物はもっと繋ぎ目が丁寧だ。砲塔も少し短すぎるな!太さは良いが。」
「なにを仰る。正確に…」
「いや違うの!わし、戦時中に、実物を見たことがあるからの!」
「じ、実物を…」
「ああ、戦車だけじゃない。零戦や戦艦の実物もだ。今でもよーく覚えとるぞ!」
「うっ…」
言葉を詰まらせる三船。
「これを完璧とはな…青いの若いの!」
「……おっ、おみそれしました!」
頭を下げる鹿川。
実体験者の言うことは違った。物凄い説得力だ。
自分はまだまだアマチュアだと、思い知らされた鹿川だった。




