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柴犬パンの熱帯生活  作者: 外村パン
9/11

家の周りをパトロール

私は、柴犬。だから私はめったに尻尾なんかふらない。

私たちは嬉しいとき、興奮したとき尻尾を振る。だけど私は柴犬。自分の感情をさらけ出すなんて、そんな無防備なことしないのだ。

そう、おやつをくれたって、おもちゃをくれたって。

私はめったに尻尾をふらない。目を「きらん」と輝かせる、そんな程度。


今日も、私は日課のパトロールに出かける。

別名、散歩。 別名、青空トイレ。

でも外に出ると、真っ先にするのはパトロールだ。自分の健康より、おかあさんの肥満対策より、それは優先されなければならない。

エレベーターを降りると、私のパトロールは始まる。

まずは左手の生垣。オーケー、今日も異常なし。

そして右手に折れる。石畳の隣に生えている数本の木々。ぐるっと回って木の裏側もしっかりチェック。異常なし。

次はスロープを下りて、建物裏のスペースへ。左にテニスコート。右にちょっとした林。

油断してはいけない。左右に目を光らせて。

クンクン。異常な…。いいえー!

私のアンテナがピンと来た。そして私の尻尾がブン!と振れるよ。

私はすかさず生垣の中に頭を突っ込む。

「あらー、どしたの、パンちゃん?」

おかあさんが、私に蹴つまずきそうになって、あわてて止まる。

ガサゴソ、ガサゴソ。

「ほらー、もう行くよ。パンちゃん」

おかあさんがリードをぐっと引っ張るのでなかなか先に進めない。

おかあさん!私いま、非常に大切な仕事をしてるのです。邪魔しないで、そこで待ってなさい!

尻尾がふるふる。

パク!はい、とれたー!

ほれ、これ見てごらんよ、おかあさん!

おかあさんが目を丸くする。

「あらー、また見つけたんかい、ボール。いい子、いい子」

そう、それは人間が拾い忘れたテニスボール。黄色くて、丸くて、ケバケバしてて、私の口にぴったり。めっちゃ咥えやすいんだ。

パッて口から離すと、コローって転がって、私は思わずムズムズ。

ダッシュで追いかけるよ。そしてまた咥える。そしてまたパッて離して、ダッシュで追いついてまたパク!

あー、おもろい!

私はおかあさんを見上げた。

どうよ、この獲物!人間にも見つけられなかった草むらから、私が見つけたんだよ。私のパトロールの成果だよ。

おかあさんが二ヤーと見下ろす。

そして、私の口からポロって落ちたボールを掴むと、ヒョイって投げたんだ。

すかさずダッシュ!

やだー!楽しい〜!

リードのことも忘れて、思わず追いかけるよ。ボール、ボール。

パクっ。はい、つかまえたよ、おかあさん。

「パンちゃん、すごーい」

ヒョイ!

あ、また私の獲物を勝手に投げた。待て〜、ボール!

パクっ。あー、楽しい〜!

「それっ!」ヒョイ!ダッシュ!パク!

「ほれっ!」ヒョイ!ダッシュ!パク!

はあ、はあ。

ちょっと疲れた。おかあさんのところに戻ると、すぐ投げられちゃう。ちょっとここで、休憩しよ。

「パン〜、ボール持ってきてよー」

遠くでおかあさんが呼ぶけど、うるさいよ、私はここで休んでいるんです!

はあ、はあ、ふう。

ぐうたらおかあさんが近づいてきた。私のボールを取ろうったって、そうはいきませんからね。

前足でギュってボールを押さえる。

ヒョイ!あ、とられた。

おかあさんは、私のボールを取り上げて、テニスコートの入り口のところにそっと置いた。

ちょっと、それ私の獲物。私のボール!

なんの断りもなく、何してんですか?

「さあ、行こうか。パンちゃん」

「…」

「今度は、あっちの木を見ないとね」

「!」

そうだね。あっちの木、一本一本見回りしなくちゃ。それが、私の仕事だもん。

行きましょ、おかあさん。

テニスボールより、もっとすごい獲物があの木々の後ろで、私を待ってるもん。

そいつらを見つけるために、パトロールするのが私の大事な仕事だから。

さあ、パトロールの続きを始めるよ。

このうちの平和を守る、そのために。



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