トカゲハンティング
てくてく、私のパトロールは続く。
てくてく。
あの木、あやしい。クンクン。もちろん裏側も見るよ。ぐるっと回ってクンクン。
あーあ、異常なし。
次の木に移ろう。あの木、今度こそあやしい。クンクン。ぐるっと回ってクンクン。…異常なし。
次の木に…。
「!」
今、あの木の根元で、何かが「サッ」と動いたよ。
私は見逃さない。ダッシュ!
「パンちゃんー、どうした?何かいた?」
おかあさんが、私に引っ張られて転びそう。ごめん、おかあさん。でも今はそんなことにかまってはいられない。
ブンブン!
私の尻尾、ふれてます!
いっきに木の根元までやってきたよ。確かに、ここで何かが動いたはずなんだ。
クンクン。何もいない…。裏に回って、クンク…。「!」
いた!こいつ、トカゲ!
15センチほどのトカゲが1匹木の根元にひっそりと張り付いている。木の表から裏に回って、じっとしてる。それで隠れてるつもりなんだ。でも細い針金のような尻尾が木の陰からピンと出てるよ。私の目と鼻はごまかせない。
ブンブン、ブンブン。
私の尻尾、マックスふってます。
トカゲは隠れられたと思ってる。頭も動かさない。目さえ動かさない。石のようにじっとしてる。
…、だからかな?私だんだん自信がなくなってきた。この目の前の木の根元にいるやつ、トカゲですよね?
全然動かないけど、葉っぱや石じゃないですよね?
ちょい。
私、右前足を出してトカゲらしきものにちょっかい出してみました。
ピク。
その途端に、そいつ一瞬動いたんだ!
スルスル〜。そして私が両足出す前に、あっという間に木の上に登っていっちゃった。
くうー、悲しいかな、私は木に登れない。立ち上がって、精一杯前足伸ばしてカリカリしたけど、
そいつには届かない。
フルフル、フルフル。私の尻尾はふりつづける。
降りてこーい、降りてこーい。私まだ、あなたと遊ぶの諦めてませんから。
私は、その木の周りをグルグル回る。
止まって見上げて、尻尾をフルフル。
グルグル周って、尻尾をフルフル。
トカゲは、おかあさんの目線の高さまで上がっていって、ジーとしている。
おかあさーん、眺めてないで、そいつ下ろしてくださいよ?私はおかあさんを見上げる。
「やだよ、こんなの触れんわ」
おかあさんにけんもほろろに断られる。私はグルグル。だって諦められないじゃん。
おかあさんは、トカゲに話しかけたよ。
「パンちゃんに捕まるほどのノロマだったら、野生で生きていけんよねえ、あんた」
ムカー!
おかあさん、あなたどっちの味方なのさ。
私だって、とれるもん。こうなったら、あいつが降りてくるまで、絶対ここから離れないんだからね!
「さあ、パンちゃん、行くよ?」
おかあさんがリードを引っ張る。
いやだー!絶対ここを動かん、私は!
「ほれ、ピーピーしないと知らないよー?」
いやだったら、引っ張らないで!おかあさんはため息をつくと、遠くを眺めた。
「お、あっちの木にトカゲいるかもな?」
「!」
それまでリードをグワシと咥えていた口がゆるんでしまった。
「トカゲ、トカゲ。あっち、あっち」
おかあさんがグイーと引っ張る。私は仕方なく、立ち上がる。そうだね。次の木もしっかりチェックしなければ。木の上のあいつの目線に、後ろ髪を引かれながらも、私は次の木の根元に行くことにした。そう、私のパトロールは終わっちゃいない。
次の木にもいそうな予感。トカゲのやつが私と遊ぶのを待ってる予感。
おかあさんは思ってる。私に捕まえられるわけないって。
だけど、次のやつこそは!絶対捕まえてみせるよ。そしておかあさんをギャフンと言わせてみせるんだから。
私のハンティング能力、今開花する時なんです。




