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柴犬パンの熱帯生活  作者: 外村パン
10/11

トカゲハンティング

てくてく、私のパトロールは続く。

てくてく。

あの木、あやしい。クンクン。もちろん裏側も見るよ。ぐるっと回ってクンクン。

あーあ、異常なし。

次の木に移ろう。あの木、今度こそあやしい。クンクン。ぐるっと回ってクンクン。…異常なし。

次の木に…。

「!」

今、あの木の根元で、何かが「サッ」と動いたよ。

私は見逃さない。ダッシュ!

「パンちゃんー、どうした?何かいた?」

おかあさんが、私に引っ張られて転びそう。ごめん、おかあさん。でも今はそんなことにかまってはいられない。

ブンブン!

私の尻尾、ふれてます!

いっきに木の根元までやってきたよ。確かに、ここで何かが動いたはずなんだ。

クンクン。何もいない…。裏に回って、クンク…。「!」

いた!こいつ、トカゲ!

15センチほどのトカゲが1匹木の根元にひっそりと張り付いている。木の表から裏に回って、じっとしてる。それで隠れてるつもりなんだ。でも細い針金のような尻尾が木の陰からピンと出てるよ。私の目と鼻はごまかせない。

ブンブン、ブンブン。

私の尻尾、マックスふってます。

トカゲは隠れられたと思ってる。頭も動かさない。目さえ動かさない。石のようにじっとしてる。

…、だからかな?私だんだん自信がなくなってきた。この目の前の木の根元にいるやつ、トカゲですよね?

全然動かないけど、葉っぱや石じゃないですよね?

ちょい。

私、右前足を出してトカゲらしきものにちょっかい出してみました。

ピク。

その途端に、そいつ一瞬動いたんだ!

スルスル〜。そして私が両足出す前に、あっという間に木の上に登っていっちゃった。

くうー、悲しいかな、私は木に登れない。立ち上がって、精一杯前足伸ばしてカリカリしたけど、

そいつには届かない。

フルフル、フルフル。私の尻尾はふりつづける。

降りてこーい、降りてこーい。私まだ、あなたと遊ぶの諦めてませんから。

私は、その木の周りをグルグル回る。

止まって見上げて、尻尾をフルフル。

グルグル周って、尻尾をフルフル。

トカゲは、おかあさんの目線の高さまで上がっていって、ジーとしている。

おかあさーん、眺めてないで、そいつ下ろしてくださいよ?私はおかあさんを見上げる。

「やだよ、こんなの触れんわ」

おかあさんにけんもほろろに断られる。私はグルグル。だって諦められないじゃん。

おかあさんは、トカゲに話しかけたよ。

「パンちゃんに捕まるほどのノロマだったら、野生で生きていけんよねえ、あんた」

ムカー!

おかあさん、あなたどっちの味方なのさ。

私だって、とれるもん。こうなったら、あいつが降りてくるまで、絶対ここから離れないんだからね!

「さあ、パンちゃん、行くよ?」

おかあさんがリードを引っ張る。

いやだー!絶対ここを動かん、私は!

「ほれ、ピーピーしないと知らないよー?」

いやだったら、引っ張らないで!おかあさんはため息をつくと、遠くを眺めた。

「お、あっちの木にトカゲいるかもな?」

「!」

それまでリードをグワシと咥えていた口がゆるんでしまった。

「トカゲ、トカゲ。あっち、あっち」

おかあさんがグイーと引っ張る。私は仕方なく、立ち上がる。そうだね。次の木もしっかりチェックしなければ。木の上のあいつの目線に、後ろ髪を引かれながらも、私は次の木の根元に行くことにした。そう、私のパトロールは終わっちゃいない。

次の木にもいそうな予感。トカゲのやつが私と遊ぶのを待ってる予感。

おかあさんは思ってる。私に捕まえられるわけないって。

だけど、次のやつこそは!絶対捕まえてみせるよ。そしておかあさんをギャフンと言わせてみせるんだから。

私のハンティング能力、今開花する時なんです。

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