トカゲハンティング 2
お母さんと次の木に移動していたその時。
そう、私の散歩兼、パトロール兼、トイレタイムの時のことです。
私の足元で、何かがサササッと動いた!
「!」
何よりもまず、私の前足が反応する。グワシ!
私の右足、確かに何かを掴んだ。足の先を見ると、ほら、トカゲが一匹私に尻尾を挟まれて「ジタバタ」してるよ!
やったー!
お母さん、ほら、私トカゲ捕まえたよ?すごいでしょ?このケモノのような反射神経。
「ヒエー!」お母さんが上空で叫んでいる。
次は、左足でトカゲの体をさらにがっちりホールドするよ。
そして、私のこの鋭い牙をトカゲの喉元にがぶり!とやるよ。
私の野生の血統、目覚めそうです。
ブンブン!ブンブン!
尻尾が振りきれそう。
「うわわわ」お母さんが、慌てふためいている。さっきは「私に捕まえられるわけない」って言っていたのに、ほらね?私だってできるんだよ?褒めて、褒めて。
「離せ、離せ、パンちゃん」
いや、お母さん?その反応も私ちょっと引きますけど。
こんなに面白い遊び相手そうそう出会えないんだから、放っておいて!
プチッ。
その時だった。トカゲが自分の尻尾を切って、ササーって逃げて行ったんだ。
「?」
なんて技を。トカゲはすぐ近くの茂みに逃げていったよ。逃がさん、私の遊び相手!
私はすかさず追いかけた、けど、お母さんたらリードをガッシリ短く持って追いかけさせてくれないんだ。
お母さーん。あの茂み、あの茂みに逃げたんだよ?早く追いかけないと!
「パンちゃんはよくやった。偉いよイイコイイコ。さ、あっち行こ」
グイグイ、リードを引っ張る。
お母さん、そっちじゃないよ、あの茂みだよ?私はかまわず、ぐんぐん進んだ。
「はあ〜」
お母さんのため息が聞こえる。「まあ、もう見つからんだろ。木に登っちゃえば捕まえられないし…」
お母さんがブツブツ言いながら、すごすご付いてくる。
茂みに到着。
ブンブン。クンクン。ブンブン。クンクン。
「私と十日ぶりに会った時でも、そんな尻尾振らんかったのに…」
そんなん、知らん。確か、この辺りに逃げたけど。
がさごそ、がさごそ。私は茂みに頭を突っ込んでクンクンする。茂みから出ているのは私のお尻と、ブンブンしている尻尾のみ。あいつ、じっと気配を消してるよ。クンクン。
「…カサ」
その時私のちょっと上で、小さな小さな音がした。
バッ!
すかさず私は飛びかかる。いたー!さっきのトカゲちゃん!ほんの20センチぐらい上の葉っぱにしがみついているよ。
あと少し、あと少し。私は必死で手を伸ばした。トカゲは体を硬くしてじっと動かない。目だけがギョロッと半回転。
「この馬鹿。なんでもっと高い木に逃げないんだよ?」
後ろでお母さんが、変な悪態をついている。
背伸びしても手が届かない私は、その茂みの根元をゆさゆさ揺らしたよ。頭いいでしょ?
そうしたら、トカゲがとまってる上の葉っぱはユラーリユラーリ、大きく揺れた。「ササ」トカゲが動く。そしてひしっとしがみつく。なかなかしぶとい。ゆさゆさ。私の尻尾はブンブン振れ続けるよ。
ユラ〜。
葉っぱが大きく傾いた。来る!あのトカゲちゃん、落ちてくる!スタンバイ!ブンブン、ブン!
その瞬間、トカゲちゃんは必死のダイブ。ダイブしたその先は…。
「ぎゃー!」
お母さんの足の上だったんだ。
「ぎゃー!ぎゃー!イヤー!」
お母さんが踊り出したよ。ちょっと、お母さん!静かにして!じっとしてくれないと、私のトカゲちゃんが。
お母さんは、足を上げてバタバタ。そんなにピョンピョン跳ねたら、トカゲも私も踏みつけられちゃう。あぶなーい。
そしてトカゲは、スルスルーっとその先の木に登って行っちゃったんだ…。
「…」
「…、あの、パンちゃん?なんか、ごめん」
その木の下に、二人で歩いて行ってから、お母さんが私につぶやいた。お母さんの目線の高さには、さっきのトカゲちゃんがじっとたたずんでいた。
「ほ、ほんとによく捕まえたね?パンちゃん、えらいえらい」
お母さんが褒めてくれたけど…。
「まさか、パンちゃんがあんなにすばやいとは思わなかったよね。かっこいいわ」
「…」
「トカゲもお家に帰ったんかなー?」
「…」
「じゃあ、パンちゃんも帰ろうかな?」
「…」
帰ろうか?うん、そうだね。帰ろうか。帰ってあの涼しい部屋で、ゴロンと横になりましょう。
私の尻尾、また静かになりました。静かにお尻の上でクルリンと丸まって収まりました。
トカゲには、また出会えるよ。次は絶対捕まえる。
私の尻尾も、明日のパトロールまで一休みしましょう…。




