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真夜中の密談 〜兄たちの嘆き〜

「そんな・・・リュエマがそのような事で悩み、自分の想いを諦めようとしていたとは・・・気が付かなかった・・・」

 長兄リダルートはラスティアルからの報告を受けると、絶句した。


 深夜のシャルア家の食堂は、重苦しい空気に包まれていた。

 ラスティアルは泣き疲れたリュエマを眠らせるため、鎮静効果が強い薬湯を飲ませ、眠りに落ちるまで側に付いていた。

 そして、深夜だったが、兄たちに食堂へ招集をかけ、事の真相を伝えたのだった。


「ん・・・不規則なんだなとは気が付いてはいたけどね・・・深刻なことだとは思ってなかったな・・・」

 と、四男のファルアルドが呟くように言う。

「でも、全く可能性が無いという話ではないのだろう?」

 次兄トリステラが確認するようにラスティアルに目を向ける。

「ええ。でも・・・確率は・・・少し低めということになります。今のところはですが」 ラスティアルがそう告げると、三男のジルビリアンが呟く。

「確率か・・・。でも、世継ぎの王子が相手となると、ただでさえ重圧になるはずの事だからね・・・」 

 すると、怒りを孕んだ声で長兄リダルートが兄弟達を睨んで言う。

「私ならっ!リュエマであれば、子を成さなくてもっ・・・」

 その言葉を遮るようにトリステラが止める。

「兄上、貴方も嫡男なんですから無責任な事は言わないように。家督を実質上継いだ頃から妻帯するようにと父上や母上から催促されているでしょう?また、山のように見合いの話も来ているはずだ。それくらい跡継ぎ問題は重要ということですよ」

「っ・・・わかっている!!」

 リュエマ以上の女性が現れたなら、妻帯しても良い!などと表だっては公言していないが、兄弟達の前では公言して憚らない重度の妹バカであるリダルートは、2年前に父と母が離れた領地にある離宮に居を移してからはシャルア男爵家を実質切り盛りしているが、まだ独身の29歳なのだった。

「私はだな、愛する妻との間に子をなせなくても、お前達の中で跡継ぎを残してもらえたらそれでいいと思っている。妻の他に女を作るつもりは毛頭無い!」

 そう言って「妄想の中のリュエマに似た妻」に誓いを立て、トリステラを睨むリダルート。トリステラはため息を付きながら、リダルートを見つめる。

「兄上、兄上ならばそれは可能でしょう。しかし・・・ノルディアス様はそうもいかない」

 食堂の中に沈黙が満ちる。

 ノルディアスは現王のただ一人の直系の男子だった。彼に跡取りが居ないことはこの国の最も憂慮すべき問題だった。早く正妃を娶り、出来れば何人か側妃を抱えて、なるべく複数の男児をもうけてもらいたいというのが本当のところだった。

「では・・・リュエマのことは諦めてもらうしかありませんね・・・」

 そうジルビリアンがため息を付く。

「ジール兄上、それはまだ・・・私は今のところは確率が低いと申し上げました」

 ラスティアルはジルビリアンを見つめて、落ち着いた口調でそう告げる。

「打つ手はあるということか?」

 リダルートがジロリとラスティアルを睨む。

「まだ、今すぐこれといっては・・・。だが、過去の事例を研究し、リュエマの身体に合った薬湯を作り上げてみせますよ。必ず。」

 そう決意を語るラスティアルに、一同は重いため息をついた。

「いっそのこと、リュエマに別の縁談を進めてみるか?」

「そうですね。嫡男でなければそれほど負担にはならないでしょう」

「リュエマのことを一番に大切にして、守って、幸せにしてくれる男がいれば良いのだが・・・」

 ダンと、テーブルを叩く音に、一同は音のした方に目を向ける。

「それじゃ、だめですよ」

 そう呟いたのはラスティアルだった。

「ラスティ?」

 ジルビリアンが声をかける。

「だって・・・リュエマが好きなのはノルディアス様なんですから・・・」

 ラスティアルの言葉に、兄たちの間を重い沈黙が流れる。

「ならば・・・必ず、リュエマの悩みを取り除いてやってくれ」

 トリステラがそう言って、ラスティアルの頭にポンと手を乗せる。

「頼んだぞ!ラスティアル!」

 歩み寄ってきたリダルートに肩を叩かれる。

「はい。必ず!」

 ラスティアルは拳を強く握りしめて、決意を新たにするのだった。



 同じ頃、王城のある一室では・・・。

「まだよ。まだ足りないわ・・・」

 灯りの無い真っ暗な部屋。三日月の頼りないほのかな光が差し込む開け放たれた窓辺。その窓辺に佇む女がそう呟いた。

「次はどうする?」

 窓の下にうずくまる影が答えた。

「そうね・・・次は・・・」

 女は屈み込むように、窓の下の影に身を寄せて、何事かをささやいた。

「わかった」

 そう短く答えると、影はすっと窓辺を離れた。

「姫様・・・必ず、私がお守りいたしますわ。最良の結果に導いて差し上げますから・・・」

 そう呟いて、女はうっとりと三日月を見上げながら微笑むのだった。

 


随分とご無沙汰してしまいました。

読んで下さってありがとうございます。

まだ覚えていて頂けたらうれしいです。


今週日曜日まで、超、超、超多忙でして、寝てる暇も無くて(泣)

でもってストレス溜まりまくりなので、「息抜きも必要!」と、久々に執筆です。


6月後半、頑張ってもう少し進めて、7月中には完結させたいと思います。

もうしばらく、お付き合い下さいませ。


雨生あもう


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