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仲忠(その11)
なかなかわたしが琴を弾かぬので、正頼殿は、
「わたしがかわいがっている娘がいます。今宵の禄には、その娘を差し上げましょう。」とおっしゃった。
(正順殿の娘と言えば、美しい姫ばかりと聞いています。特に九の君は格段に美しく、気立てもよいと。)
それを聞き、仕方なく、『万歳楽』という曲をほのかに鳴らして弾きました。それを聞き、春宮の師である仲頼殿、行政殿も、今日のために用意された楽器で調べを合わせてこの上なく素晴らしく、演奏しました。仲頼殿は、感動のあまり、庭に走り下って、万歳楽を舞い踊りました。行政殿は琵琶を弾き、正頼殿は大和琴を弾かれました。みなで調べを合わせ、そこに居る上達部はみな声を限りに歌っていらっしゃいました。
(源の正頼 左大将 有名な風流人、男子、女子大勢持つ。あて宮の父。
源の仲頼 少将 左大臣祐成の子 春宮の笛の師。
良岑の行政 兵衛佐 春宮の琵琶の師 若宮の筝の師。)
わたしは、くだんの秘曲は弾かず、心に浮かぶ曲を弾いていましたが、正頼殿が、
「これでは禄はどういたしましょうか。もっと細やかに念を入れて弾いていただけないと、かわいい娘を差し上げるわけにはいきません。」とおっしゃいました。




