仲忠(その8)
相撲の還饗の日、父兼雅は、
「みな、御簾の内側に居ても、心して振舞うように。私のつとめる役所の中将、少将もこちらが恥ずかしくなるほど立派な人たちです。左大将正頼殿や左大臣祐成殿の御子たちです。どちらも、身分のある方々です。」とおっしゃいました。
母は、琴の準備を整え、琵琶や筝なども、同じ調べに合わせて置いておかれました。正頼様は、
「兼雅殿が、三条の家で相撲の還饗をされる。我が家で何か行う時は、必ず訪れて下さるのだから、あちらで還饗をされるなら必ず行こう。それに、この度は、いつもは奥に居られる方が、珍しく差配されるということだから、差配ぶりを見せてもらおう。」とおっしゃったそうです。お供に君達を引き連れて来られました。左大将正頼様は、世の人に尊敬され、人柄がいかにも尊く、立派である方なので、正客として来られました。父の兄、右大臣忠雅様も、来られました。父は、たいそう喜んで、恐縮しながらお迎えしておりました。
こうして皆、席に着かれました。上達部や親王方の御前には、紫檀の机に綾織物の机覆いを被せ、中将、少将の御前には蘇芳の机、官人には身分に応じて机が並べられました。
いよいよ宴会が始まりました。かわらけに酒が注がれ、力士が出て相撲を取り、大関が出て布を引き合い力比べをします。父が用意してあった琴や筝を客人に配ると、それぞれにかき鳴らしてみられ、
「よく調律されている琴だ。普通の人には、こうはできません、いやはや。」とおっしゃって、演奏されました。笛を吹きならして合わせる者もいました。
全く他に類がないほど趣深い様子でした。




