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仲忠(その5)
帝は、俊蔭の朝臣の音を思い起こし、俊蔭の娘でわたしの母である人の琴の音を、どうにかして聞きたい、嵯峨院は俊蔭の音をよく覚えておられるので、わたしを連れて行き、祖父俊蔭の琴の音と比べたいものだ、とお思いになったそうです。また、昔ほのかに聞いた俊蔭の琴の音をもう一度聞きたいと、似た音でもないものかと探していらっしゃったが、全くなかったとも。帝は、
「三条邸に隠れ住んでいるという俊蔭の娘を、しばらく参内させて、職の曹司(中宮職の役所で大臣や納言の宿所にもなる)の方に住まわせてはどうか。そうすれば、そこにいって琴が聞けるであろう。」とおっしゃる。父兼雅は、かしこまって控えていらっしゃる。
こうして、わたしは、優れた人として認められ、たくさんの上達部や親王から婿にしたいと思われ、中には、直接打診して来られる方もありましたが、承諾せずに、屋敷に籠っておりました。人知れず、左大将である源の正頼殿の所には、学芸に優れた人が集まっているし、美しい姫君たちがいらっしゃると聞いていましたので、心もやすまるであろう、そのほかの所にはいくまいと思っておりました。
(わたくし、あて宮は、源の正頼の美しい姫君たちの一人、九の君です。)




