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俊蔭の娘(その40)
言うだに恐ろしい山を越え、洞窟の木のもとにいらっしゃり、兼雅殿は、咳ばらいをされました。子は、出てきて、兼雅殿を見て、
「前にいらっしゃった方が来られました。」と、わたくしに告げました。
「まあ、恥ずかしいこと。どういう方なのでしょう。こんな劣った姿でまたお会いするとは。」と言いながらも、
「このようにわざわざ来てくださったのに、隠れていては申し訳ないことです。」と言って、出ていきました。お供の人はそのままにして、兼雅殿だけ、洞窟の中に入って来られました。
「あなたは知らないことです。あなたの母君にお話ししましょう。」と言われたので、子は、そのままわたくしに伝えました。それを聞き、『まさか、あのときの一度だけお会いし、そのままいなくなってしまった人ではないのかしら。何をいまさら話すことがあろうか。』と思うのですが、どうしようもありません。
兼雅殿は、奥に入って来られ、
「前に来た時も、お話ししようかと思ったのですが、すぐにお話ししたのでは、誤解されて拒まれると思いまして。わたしが、賀茂詣でのお供をしてあなたにあった者なのです。」とおっしゃいました。




