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俊蔭の娘(その38)
兼雅殿が帰ってみると、尾根を一つ越えたところで、馬添いも、忠雅殿も、獣の中に入って行った兼雅殿が心配で、探していらっしゃったそうです。
「さあ、いったいどうだったのだ。」と忠雅殿が問われるので、
「尋ねあてることができませんでした。谷から聞こえ、山から聞こえ、高く上れば地の底に、谷に下れば雲の上に聞こえます。獣は貝を伏せたようにひしめき、道もなく、分け入りずらい様子でした。もっと尋ね入りたく思いましたが、帝のお供としてあまりの事だと思い、ひきかえしました。」と答えると、
「だから言ってではないか。天狗の仕業であろう。」と言われて、一緒に戻られたそうです。帝は、
「不思議なことに、急にいなくなってしまう朝臣たちであることよ。よき女がいると聞いて、好きものたちは、行ってしまったのだろう。」といって帰朝されたそうです。




