59/63
俊蔭の娘(その36)
兼雅殿は、
「まことに、そう言われるのはもっともですが、なぜ、人がこのような住まいで暮らせましょうか。頭を剃って出家するにも、師について僧となるのが尊いことなのです。師について山籠もりもするのです。
今日見た獣たちは、堪えられるとは思えません。一部の獣は、あなたに味方しても、全部がそうではありません。やはり、京においでなさい。獣に食われては、悟りを開き極楽に往生することができません。」と言われたそうです。子は、
「京に出ても、わたしたちのお世話をする人がいないでしょうから、ますます堪え難い状況になるでしょう。」と答えました。兼雅殿は、重ねて、
「このように、京に出られるよう勧めておいて、お世話を姉妹ことなどあるわけがございません。」と言われたので、
「母に聞いてまいります」と答えました。
そう言って、奥に入り、
「このようにおっしゃる方がいらっしゃいます。どうお返事しましょうか。」というので、
「このようなひどい有様を見られたお方が、どうお思いになるでしょうか。取るぬ足らぬ身分の者と思って見下されても、当然です。逃れようがありません。あなたのお考え次第です。」と答えました。




