俊蔭の娘(その28)
こうして琴を弾いたり聞いたりしているうちに、この子は七つになりました。(数え年ですから、現在の小学一年生と同じ年です。)
祖父俊蔭が山の七人(天女の子供で仙人)から習った曲を、そのまま演奏できるので、夜に昼に、二人で合奏し、春には趣のある花々を見て、夏には清く涼しい木陰を見て、秋には紅葉の木の下で心を澄ましながら、わたくしは、自分の命がある限り、運命に従おうと思っていました。
この子は、仙人の生まれ変わりで、変化の者でさえあるので、琴の腕前は、わたくしよりも優っていました。わたくしは、父俊蔭に優っていると父がおっしゃっていましたから、一般には代を経ると技は劣って行くものですが、わたくしの一族は伝わるごとに優っていくようでございます。
こうしているうちに、この子は十二歳になりました。容貌の麗しく可愛らしいことといったら、この世の者とも思えませんでした。綾や錦のような着物を着て、宝玉の台に座りかしづかれている帝や女御や后よりも、または天女や天人よりも、このような草木の根を食し、木の皮を着、獣を友とし、木の洞穴をすみかとして成長したのですが、目にもあざやかに
光が添うようでありました。わたくしも、父がいて大切にされていた時よりも顔かたちが優ってきているように思われます。
この数年は、ただただ琴を弾きならし、猿たちに養われて安心しているというのも、あわれに思われますが、水は大きな蓮の葉に、芋や果物は色々な木の葉に包んで持ってきてくれていました。




