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俊蔭の娘(その27)うつほでの暮らし
この洞窟の前に、一間ほど距離を置いたところに泉が涌いていて、その傍に松の生えた風流な形の岩が立っていました。椎や栗がその水に落ち、洞窟のところまで流れてくるので、召し使いを使っているように食べ物が手に入りました。朝出かけて夕べに帰ってくる忙しさもなく、ただゆっくりと過ごすことができるようになりました。わたくしは、ここで一生を送ろうと思って、
「いまは、暇がありますから、わが親(俊蔭)が恐れ多くも大切なことと思って教えてくださった琴を、お教えいたしましょう。弾いてみてください。」と言って、りゅうかく風をこの子の琴にし、わたくしは、ほそお風を弾いて、習わせました。聡くかしこく弾くことといったら限りがありませんでした。
人の姿はなく、熊や狼などの獣以外はおらぬ山で、このような立派な演奏をしていると、たまたま聞きつけた獣がこのあたりに集い、あわれを知り、草木までが琴の音のすばらしさになびいていました。大きな雌猿が峰を一つ越えて、子猿をたくさん連れて聞きに来ました。この洞窟を領地にして山で取れるものを食していた猿で、琴の音が好きで、季節の木の実を、子猿も、雌ざるも持ってやってきていたのです。




