俊蔭の娘(その24)
よい空洞があると思って寄ってみると、強そうな雌熊と雄熊と子熊を連れて住む洞穴でありました。雄熊が走り出て子を食い殺そうとしたとき、
「しばし待ってください。わたしの命を絶たないで下さい。わたしは、親孝行な子です。親も、兄弟もなく、使う人もなくて、荒れた家に一人住んでいて、わたしが持って参る物だけを食べる母がいるのです。里では、わたしのできることがないので、この山の木の実や葛の根を取って母親に上げているのです。
高い山、深い谷を上り、下り、歩いてくるには、朝早く出て、暗くなってから帰ることになります。母が心配で悲しく思うので、ここがあなたのような山の王のすみかとも知らず、ここならば、芋を一つ掘れば、すぐに食べさせてあげることができます。また、遠くまで食を求め歩くのは苦しくはないのですが、母が所在なく私を待っていると思うと悲しいので、この近くに住みたいと、ここを見ていたのです。
しかし、このように住んでいらっしゃるのであれば、わたしはここから立ち去ります。わたしが死んでしまえば、母も死んでしまうでしょう。私の体で、親を養うのにいらないところがあれば、献上いたしましょう。足がなければ、歩けません。手がなければ、木の実を取り、葛の根を掘ることができません。口がなければ、心を伝えられません。腹と胸がなければ、心がなくなります。なくてもよいのは、耳たぶと、鼻の頭です。これを山の王に献上します。」と言ったそうです。




