44/65
俊蔭の娘(その21)
冬になり、寒くなると、この子は、釣りをすることができなくなったので、
「魚を取りに行きたいのですが、氷は固く、魚がいません。母上は、どうなさいますか。」と言って泣きました。
「何も悲しくありませんよ。氷が解けたら取ればいいのです。わたくしは、たくさん食べましたから。」といいました。それでも、この子は、朝になると河原に行ってきました。牛車が通っているときはそれらが通り過ぎてから出て見ると、氷の鏡のように川は凍っていたそうです。
それを見て、この子は言ったそうです。
「まことに我れが孝行の子なら、氷よ、溶けよ。魚よ、いでよ。孝行の子でないのならば、出てくるな。」すると、大きな魚が出てきたと言ったのです。そして、わたくしに、
「我れは、本当に孝行の子でしたよ。」と言ったのです。幼い子が、足をえびのように真っ赤にして、深い雪の中を走ってきたのです。とても悲しく、泣きながら、
「なぜ、こんなに寒い中、外に出るのですか。寒くなくなってから出なさいな。」と言うと、
「苦しくはありません。母上を思えば。」と言って、屋敷の中にとどまってはいませんでした。
この魚は、魚に見えますが、百味を備えた飲食物(極楽浄土の食べ物)になっていました。このように、不思議な出来事が多かったのです。




