俊蔭の娘(その18)
嫗の話を聞き、わたくしは、
「まあ、そんなに嘆いているかしら。まあ、大変。」と言いました。嫗は、
「心配なさいますな。お子を頼みになさいませ。姫君は、将来、不幸にはなられません。このお子は、財の王ですよ。」と言って、大切に育てました。
このようにして、わたくしは歎きながら暮らしておりました。収入は何もありませんから、少しばかりあった身の回りの品は、嫗が物と交換しながら、だんだんなくなり、やはり、悲しみながら暮らしていました。
そうこうするうちに、この子は、三つになりました。
(数え年ですから、生まれた年は、一つ。
お正月で二つ、6月までは、今で言うと0歳児。
次のお正月で三つ、6月までは、今で言うと1歳児。
6月からは、今で言うと2歳児。)
三つになった夏ごろ(2歳児になったころ)から、わたくしの乳を飲まなくなりました。わたくしが不思議に思って、
「なぜ、あなたは、このごろ乳を飲まないのですか。」と聞くと、
「母様が苦しいからです。」と言う。
「そんなことはありませんよ。わたくしは苦しくありません。他の物は食べないのですから、乳を飲まなければどうなさるのです。」と言うと、
「いいえ、今はもう、飲ませないで下さい。」と言って、飲まなくなったのです。




